医療・介護政策と地域の資源・連携・受療行動が平均在院日数と費用に影響を及ぼす要因の分析

文献情報

文献番号
201201012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護政策と地域の資源・連携・受療行動が平均在院日数と費用に影響を及ぼす要因の分析
課題番号
H22-政策-一般-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林田 賢史(産業医科大学 産業保健学部)
  • 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター)
  • 猪飼 宏(京都大学 医学研究科 )
  • 村上 玄樹(広島大学 医歯薬保健学研究院)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 大坪 徹也(京都大学 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当研究は、医療費とそれに係る在院日数等医療資源消費の増減の要因を明らかにし、医療費・資源消費と医療の質や公正性との関係を明らかにすることを目的とする。(3年間 の研究補助金の最終年度に当たり3年間の総括的な年度となる。)
研究方法
 様々な地域や施設のレベルで、DPCデータやレセプト等も活用し、医療の資源と活動・機能等に係る経年的な多元的データベースを構築し、病床含む医療資源とその利用、医療費の要因及び医療の質・公正性との関わりを解析した。
 当研究の特色として、二次医療圏と市町村ごとに諸々の社会経済因子、人口や医療需要関連因子、医療と介護のサービス供給資源、受療行動に関連する因子などを取り込んだデータベースの構築・発展を既に進めているところにあり、重要な強みとして、在院日数や医療費と切り離せない介護資源を含む網羅的な変数群を用いて経年的に全国レベルで多角的な分析を可能とした。さらには、医療の質を指標化し、医療費・資源・政策等とともに関係の解析を可能とした。
結果と考察
【A.計画的資源配備について】
○計画的医療資源配備に資するシミュレーションの方法を開発して具体例を示し、拠点化・集中化のアクセス等への影響を予測しながら施策を講じることが円滑となる。
○地域の必要医療介護資源と受療行動に関わるシミュレーションをもって、療養病床数の需要推計と医療機関の拠点化がアクセス不平等に及ぼす影響の分析手法を開発し、拠点化の影響を評価した。これらの知見や解析モデルは、拠点病院の配備計画、計画的資源配置の向上に、活用できる。
【B. 医療資源に係る経済評価と政策の影響評価について】
○医療資源に係る経済評価について、高額薬剤の経済評価を行い、反応性に応じた使用の導入で大幅に経済効率が改善することを示した。これらの知見や解析モデルは、薬剤の効率的な適用政策に活用できる。
○医療資源に係る経済評価について、重複検査の経済的影響度を定量化し、その予防策の政策的重要性を明確にした。これらの知見や解析モデルは、予防策への投資の規模等の計画に活用できる。
○DPC/PDPS導入の医療費・質への影響を綿密な解析設計で定量化した。これは、医療の資源や費用の管理の関連施策に参考となる。
【C.医療の費用・質と人的資源との関係について】
○医療費の低い地域では、急性心筋梗塞のアウトカム指標たるリスク調整死亡率が、他の地域に比して高いことが示された。カテーテル治療などの処置の頻度や集中治療室も少なく、病床数あたりの医師数や看護師数など医療者の数も小さく、物的資源不足を伴う人的資源不足により、十分なパフォーマンが発揮されていないことが示唆された。これらの知見は今後の医療費の適正化や資源配備に活用しうる。
○医療費には地域間に格差があり、医療資源や社会経済因子が大きな影響を及ぼす。医療資源の密度が低く医療費も低い地域・施設では、効率性以前の問題として、医療の質に悪影響が出ている可能性が示唆された。一方で、妥当なアウトカム指標を開発した。これらは資源配備計画や医療費関連政策での質評価の必要性・実現可能性を示すものである。
結論
1.医療費には地域間に格差があり、その影響要因にも地域特性により差があり、病床数(在院日数を反映)以外に社会経済因子がかなり大きな影響を及ぼす。医療費適正化計画等での目標設定、施策立案等では、医療資源や社会経済因子の関連など地域特性への考慮が必要である。
2.計画的医療資源配備に資するシミュレーションの方法を開発して具体例を示した。これにより、拠点化・集中化のアクセス等への影響を予測しながら施策を講じることが円滑となる。
3.DPC/PDPS導入の費用・質への影響や高額検査・薬剤使用の効率改善の余地、療養病床の将来の不足を地域別に定量化した。これらは、医療の資源や費用の管理の関連施策に参考となる。保健・医療・介護の連携を可視化したり、データを連携させ地域診断する方法を提示した。
4.医療資源密度が低く費用も低い地域・施設では、効率性以前の問題として、医療の質が低い可能性が示唆された。一方、医療管理データで妥当な質指標が得られることを示してきた。これらは資源配備や医療費関連政策における質評価の必要性・実現性を示すものである。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201201012B
報告書区分
総合
研究課題名
医療・介護政策と地域の資源・連携・受療行動が平均在院日数と費用に影響を及ぼす要因の分析
課題番号
H22-政策-一般-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 林田 賢史(産業医科大学 産業保健学部)
  • 廣瀬 昌博(島根大学医学部附属病院 病院医学教育センター)
  • 猪飼 宏(京都大学 医学研究科 )
  • 村上 玄樹(広島大学 医歯薬保健学研究院)
  • 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
  • 大坪 徹也(京都大学 医学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当研究は、医療費とそれに係る在院日数等医療資源消費の増減の要因を明らかにし、医療費・資源消費と医療の質や公正性との関係を明らかにすることを目的とする。
研究方法
 様々な地域や施設のレベルで、DPCデータやレセプト等も活用し、医療の資源と活動・機能等に係る経年的な多元的データベースを構築し、病床含む医療資源とその利用、医療費の要因及び医療の質・公正性との関わりを解析した。
結果と考察
【A.計画的資源配備について】
○計画的医療資源配備に資するシミュレーションの方法を開発して具体例を示し、拠点化・集中化のアクセス等への影響を予測しながら施策を講じることが円滑となる。
○療養病床数の必要量の推計モデルを開発し、療養病床数が今後不足する地域を示した。これらの知見や解析モデルは、今後の病床数計画に活用できる。
○地域の必要医療介護資源と受療行動に関わるシミュレーションをもって、療養病床数の需要推計と医療機関の拠点化がアクセス不平等に及ぼす影響の分析手法を開発し、拠点化の影響を評価した。これらの知見や解析モデルは、拠点病院の配備計画、計画的資源配置の向上に、活用できる。
○地域の医療費及びその影響要因には地域差があり、しかも病床数以外の社会経済因子がかなり大きな影響を及ぼす。医療費適正化計画等での目標設定、施策立案などにて考慮が必要である。
【B. 医療資源に係る経済評価と政策の影響評価について】
○医療資源に係る経済評価について、高額薬剤の経済評価を行い、反応性に応じた使用の導入で大幅に経済効率が改善することを示した。これらの知見や解析モデルは、薬剤の効率的な適用政策に活用できる。
○医療資源に係る経済評価について、重複検査の経済的影響度を定量化し、その予防策の政策的重要性を明確にした。これらの知見や解析モデルは、予防策への投資の規模等の計画に活用できる。
○DPC/PDPS導入の医療費・質への影響を綿密な解析設計で定量化した。これは、医療の資源や費用の管理の関連施策に参考となる。
【C.医療の費用・質と人的資源との関係について】
○人的資源と医療の費用・質の関係については、喘息治療における診療指針への順守状態が、施設規模自体よりも重要な人的資源である専門医の存在により高まることを示した。これらの知見は人的資源の配備計画に活用できる。
○また、大腿骨頸部骨折や脳卒中のリハビリテーションでは、理学療法士等の早期の密な介入が、在院日数短縮とADL改善に結びつくことを示した。これらの知見は人的資源の配備計画に活用できる。
○医療費の低い地域では、急性心筋梗塞のアウトカム指標たるリスク調整死亡率が、他の地域に比して高いことが示された。カテーテル治療などの処置の頻度や集中治療室も少なく、病床数あたりの医師数や看護師数など医療者の数も小さく、物的資源不足を伴う人的資源不足により、十分なパフォーマンが発揮されていないことが示唆された。これらの知見は今後の医療費の適正化や資源配備に活用しうる。
○医療資源の密度が低く医療費も低い地域・施設では、効率性以前の問題として、医療の質に悪影響が出ている可能性が示唆された。一方で、妥当なアウトカム指標を開発した。これらは資源配備計画や医療費関連政策での質評価の必要性・実現可能性を示すものである。
結論
1.医療費には地域間に格差があり、その影響要因にも地域特性により差があり、病床数(在院日数を反映)以外に社会経済因子がかなり大きな影響を及ぼす。医療費適正化計画等での目標設定、施策立案等では、社会経済因子の関連など地域特性への考慮が必要である。
2.計画的医療資源配備に資するシミュレーションの方法を開発して具体例を示した。これにより、拠点化・集中化のアクセス等への影響を予測しながら施策を講じることが円滑となる。
3.DPC/PDPS導入の費用・質への影響や高額検査・薬剤使用の効率改善の余地、療養病床の将来の不足を地域別に定量化した。これらは、医療の資源や費用の管理の関連施策に参考となる。保健・医療・介護の連携を可視化したり、データを連携させ地域診断する方法を提示した。
4.医療資源密度が低く費用も低い地域・施設では、効率性以前の問題として、医療の質が低い可能性が示唆された。一方、医療管理データで妥当な質指標が得られることを示してきた。これらは資源配備や医療費関連政策における質評価の必要性・実現性を示すものである。

公開日・更新日

公開日
2013-10-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201201012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
二次医療圏や市町村や病院ごとに一人あたりの医療費を、急性心筋梗塞と脳梗塞において、算出し大きな格差を明らかにし、医療費・資源消費量が少ない群では、プロセスの質指標やリスク調整死亡率で成績(質指標)が悪いことを示した。
さらに、医療費・資源消費量が中程度から高い群において、質の指標の段階的な差が見られるが、その差は概して小さく、さらなる効率化の余地が示唆された。
一方で、病院間の競争が供給誘発需要を生じずに医療の質を上げ、病院内の資源集中が医療の質を向上させることが示唆された。
臨床的観点からの成果
人的資源と医療の質・効率について、喘息治療における診療指針への順守は、施設の規模自体よりも、人的資源である専門医の存在により高まることを示した。また集中治療室のリスク調整死亡率は専門医のいる認定施設で低いことを示した。
急性心筋梗塞と脳梗塞において、二次医療圏や市町村や病院ごとに一人あたりの医療費を算出し大きな格差を明らかにし、地域・施設の医療費は、低いことが必ずしも効率性を表さず、資源が使えず質が落ちている可能性があることを示した。
ガイドライン等の開発
高額画像診断の重複検査の経済評価を行い、府内の年間重複検査費用は約1億2千万円と推計された。情報共有のためのインフラ整備やインセンティブ設計が求められる。高額薬剤として遺伝子組換え技術に基づくオマリズマブを取り上げ、増分費用効果比は高いが、反応性が高い患者群では22%ICERが下がることを示した。
また、大腿骨頸部骨折や脳卒中のリハビリテーションでは、理学療法士等の早期の密な介入が、日々の医療費増にはなるが、在院日数短縮とADL改善に結びつくことが示唆された(中医協でも引用された)。
その他行政的観点からの成果
諸々の成果が地域保健医療計画や医療費適正化計画等(医療費の中期的見通し)にて行政で活用された。
○地域医療費には社会経済要因が大きな影響を及ぼし、その要因に地域差があることを示した。○拠点化・集中化の影響を予測し効果的な資源配備などの施策立案を促すシミュレーションを開発し実施した。○効率性以前の問題として、医療の資源密度も費用も低い地域・施設における医療の質の低下を示した。○ジェネリック薬剤の使用の把握・評価方法も具体値とともに示した。高額検査・薬剤においての効率性改善の余地が明確になった。
その他のインパクト
医療の質を評価するために脳梗塞、急性心筋梗塞、急性心不全、集中治療室医療等にてリスク調整死亡率の形でアウトカム指標を開発した。国際的にも優れた成果で国際誌のエディトリアルでも取り上げられた。23年度のQIフォーラムでも進捗を公開した。
急性心筋梗塞の診療の質と費用に及ぼすDPC/PDPSの導入の影響をマルチレベルの多変量解析により検討し、平均在院日数と一入院医療費の減少、死亡率はほぼ同じ、再入院率の有意な上昇が示された。
また、介護資源、介護サービスの供給量の著しい地域格差を可視化した。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
中医協へのデータ提供、京都府の医療費の中期的見通しの会議、地域保健医療計画の会議3件以上、解析アウトプットの提供
その他成果(普及・啓発活動)
2件
ホームページへの成果発表1回、フォーラム発表1回

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sasaki N, Lee J, Park S, et al.
Development and validation of an acute heart failure-specific mortality predictive model based on administrative data.
Canadian Journal of Cardiology  (2013)
原著論文2
Lee J, Morishima T, Kunisawa S, et al.
Derivation and validation of in-hospital mortality prediction models in ischaemic stroke patients using administrative data.
Cerebrovascular Diseases , 35 (1) , 73-80  (2013)
原著論文3
Yamashita K, Ikai H, Nishimura M, et al.
Effect of certified training facilities for intensive care specialists on mortality in Japan.
Critical Care and Resuscitation , 15 (1) , 28-32  (2013)
原著論文4
Morishima T, Ikai H, Imanaka Y.
Cost-effectiveness analysis of omalizumab for the treatment of severe asthma in Japan and the value of responder prediction methods based on a multinational trial.
Value in Health Regional Issues , 2 (1) , 29-36  (2013)
原著論文5
Umegaki T, Nishimura M, Tajimi K, et al.
An In-Hospital Mortality Equation for Mechanically Ventilated Patients in Intensive Care Units.
Journal of Anesthesia  (2013)
原著論文6
Kunisawa S, Otsubo T, Lee J, et al.
Improving the assessment of prescribing: use of a‘substitution index’.
Journal of Health Services Research & Policy  (2013)
原著論文7
Lee J, Morishima T, Park S, et al.
The association between health care spending and quality of care for stroke patients in Japan.
Journal of Health Services Research & Policy , 18 (2) , 77-82  (2013)
原著論文8
Morishima T, Lee J, Otsubo T, et al.
Impact of hospital case volume on quality of end-of-life care in terminal cancer patients.
Journal of Palliative Medicine , 16 (2) , 173-178  (2013)
原著論文9
Morishima T, Otsubo T, Goto E, et al.
Physician adherence to asthma treatment guidelines in Japan: focus on inhaled corticosteroids.
Journal of Evaluation in Clinical Practice , 19 (2) , 223-229  (2013)
原著論文10
Hamada H, Sekimoto M, Imanaka Y.
Effects of the per diem prospective payment system with DRG-like grouping system (DPC/PDPS) on resource usage and healthcare quality in Japan.
Health Policy , 107 (2) , 194-201  (2012)
原著論文11
Kunisawa S, Ikai H, Imanaka Y.
Incidence and prevention of postoperative venous thromboembolism - Are they meaningful quality indicators in Japanese healthcare settings?
World Journal of Surgery , 36 (2) , 280-286  (2012)
原著論文12
Ikai H, Morimoto T, Shimbo T, et al.
Impact of postgraduate education on physician practice for community-acquired pneumonia.
Journal of Evaluation in Clinical Practice , 18 (2) , 389-395  (2012)
原著論文13
Umegaki T, Ikai H, Imanaka Y.
The impact of acute organ dysfunction on patients’ mortality with severe sepsis.
Journal of Anaesthesiology Clinical Pharmacology , 27 (2) , 180-184  (2011)
原著論文14
Fukuda H, Lee J, Imanaka Y.
Costs of hospital-acquired infection and transferability of the estimates: A systematic review.
Infection , 39 (3) , 185-199  (2011)
原著論文15
Umegaki T, Sekimoto M, Imanaka Y.
Impact of intensive care unit physician on care processes of patients with severe sepsis in teaching hospitals.
Journal of Anesthesia & Clinical Research , 2 , 120-120  (2011)
原著論文16
Lee J, Imanaka Y, Sekimoto M, et al.
The validation of a novel method to identify healthcare-associated infections.
The Journal of Hospital Infection , 77 (4) , 316-320  (2011)
原著論文17
Nishikawa H, Imanaka Y, Sekimoto M, et al.
Verification bias in the assessment of the utility of MRI in the diagnosis of cruciate ligament tears.
American Journal of Roentgenol , 195 (5) , 357-364  (2010)

公開日・更新日

公開日
2018-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201201012Z