神経系発生-発達期の化学物質暴露による遅発中枢影響解析に基づく統合的な情動認知行動毒性評価系確立に資する研究

文献情報

文献番号
201133022A
報告書区分
総括
研究課題名
神経系発生-発達期の化学物質暴露による遅発中枢影響解析に基づく統合的な情動認知行動毒性評価系確立に資する研究
課題番号
H23-化学・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
種村 健太郎(東北大学大学院・大学院農学研究科・ 動物生殖科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 勝秀(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部)
  • 岩野 英知(酪農学園大学獣医学部獣医生化学ユニット)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター・毒性部)
  • 冨永 貴志(徳島文理大学香川薬学部・病態生理学講座)
  • 中島 欽一(奈良先端科学技術大学院大学・バイオサイエンス研究科・分子神経分化制御学講座)
  • 山田 一之(理化学研究所・脳科学総合研究センター・行動神経生理学研究チーム)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先行研究において、胎生期及び幼若期マウスへの神経作動性化学物質(NACs)の投与が、従来の神経毒性試験法からは想定困難な遅発性の情動認知行動異常を誘発することを明らかにし、加えて対応する神経科学的物証、及びその分子メカニズムの一端を捉えた。本研究では、上記の遅発性の情動認知行動異常を今後の行政施策へ反映させる必要性を考慮し、標準プロトコールの確立、及び客観的評価指標の提案を目指す。
研究方法
本研究では、特徴的な異常を示す遺伝子改変マウス等を普遍的な基準点と位置付け、情動認知行動及びこれに対応する神経科学的物証項目(微細形態、タンパク発現・遺伝子発現、神経回路機能等)の異常所見をスコア化し、NACsによる異常を基準点との「スコア差」として客観的に記述し評価する方法を提案する。具体的には、複数のエストロジェン受容体(ER)関連遺伝子改変マウスを基準点とし、NACsとしては、ER結合性化学物質として理解されているジエチルスチルベストロール(DES)、ビスフェノールA(BPA)、及びビスフェノールAF(BPAF)を取り上げる。
結果と考察
ER遺伝子改変マウスとしてERαKOマウスの行動解析の結果、不安関連行動の逸脱と記憶異常が認められた。BPAについては、周産期暴露による成熟後マウスの遅発中枢影響解析結果から不安関連行動の逸脱と記憶異常が認められ、周産期暴露による生後発達過程における行動検討から一部ストレス反応性の変化が示唆された。胎生期脳解析では、胎生6日?15日齢までのBPA暴露では、神経幹細胞マーカー、ニューロンマーカー、深層ニューロンマーカーの発現パターンに影響は認められなかった。なお、生後発生過程における肝臓のBPA代謝活性解析から生後7日くらいまでがリスクが高いと推察された。更に、化学物質胎生期暴露による成熟後の海馬における神経回路機能変化を捉える検討としてバルプロ酸の影響を評価した結果、GABAシグナル系への影響を捉えた。
結論
周産期BPA暴露による成熟後の遅発中枢影響として、不安関連行動の逸脱と記憶異常を捉えることに成功した。今後、これらに対応する神経科学的物証、及びその分子メカニズムの解明が期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133022Z