18歳女子の進学に対する意識の急激な変化と看護・介護職員の安定的な確保に関する研究

文献情報

文献番号
199800010A
報告書区分
総括
研究課題名
18歳女子の進学に対する意識の急激な変化と看護・介護職員の安定的な確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
小山 眞理子(聖路加看護大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的= 現行の「看護職員需給見通し」の達成状況と問題点について社会の変化との関連性で分析し、今後の保健医療の変化に対応できる看護職員の需給を予測するにあ たっての指標を抽出し、今後の看護職員需給見通しを作成するにあたっての基礎資料を提供することである。
研究方法
まず現行の「看護職員需給見通し」の問題点を多面的に分析した。次いでこれからの10年間の看護職員の需給を推計するにあたって、医療提供システムの変化、雇用形態の多様化、看護体制の影響、介護保険制度による影響、18歳人口の減少と女子の高学歴志向、その他を分析し、予測指標と推計のあり方を検討した。看護職員の需給は保健医療政策、その他多くの変動要因の影響を受けることから、推計は複数のシュミレーションパターンにより需要ならびに供給数を推計した。推計にあたっては今後の日本では医療費削減のために早期退院が促進され在宅医療へと移行することにより看護職員が働く場も病院以外に拡大していく可能性を考慮し、訪問看護ステーションや社会福祉施設、その他看護職員が就業する場ごとの推計も含めた。
病院に就業している看護婦が7割と多いことから病院での需要を、病床数からの推計、病床区分別推計、一般病床一括の場合の推計、受療率を用いた推計を中心に、過去5年間の伸び率を用いた推計と平成9年の伸び率固定での推計を行い、さらにそれらのパターンで看護婦の処遇が現状の場合と改善された場合の推計を、計24パターンで実施した。
結果と考察
結果= 結果は膨大であるためにここにはその一部を示す。
(1) 総病床数・100床当り看護職員数の動向による推計:総病床数(一般病床・精神病床・結核  病床・伝染病床の総計)の推移に着目し、最近の減少傾向が今後も継続すると仮定して   2010年時点の総病床数を推計した。2010年時点での総病床数は1,597千床と推計される。
① 2010年における100床あたり看護職員数は、97年同様44.27人、総病床数1,597に対す  る必要看護職員数は約707千人となる。
② 2010年における100床あたり看護職員数は65.62人、総病床数に対する必要看護職員数  は約1,048千人となる。
(2) 一般病床の今後の動向に着目した総病床数の推計
①一般病床を総体として病床数を推計する方法、および②一般病床をa)急性期病床b)慢性  期病床に区分し、それぞれについて病床数を推計した。
② 一般病床をa)急性期病床b)慢性期病床に区分し、それぞれについて推計した。
(以下、結果省略)
看護職員の需給数を各種の方法で推計した結果、各推計による2010年時点での予測必要看護職員数には60万人程度の幅があった。一方、予測される供給数は予測必要看護職員数の範囲内にあることが確かめられた。
考察: 病院における一般病床については、従来どおり「一般病床」として、総体としての病床数を予測する方法に加え、一般病床を「急性期病床」「慢性期病床」に区分しそれぞれについて病床数ならびに看護職員配置についての予測を行う方法を取った。後者は一般病床が直ちに「急性期病床」「慢性期病床」として機能が区分されるべきであるとの趣旨によるものではなく、98年以降老人病床および一部一般病床から療養型病床群への転換が急速に進行し、99年1月時点で約15万床を数えるに至った現在の医療供給体制再編の情勢を受けたものである。 この方法による推計は、従来の病床数あたりの看護職員の配置だけでなく、患者ケアのニーズ量に応じた看護職員の配置から人的資源の活用を検討する上での資料となりうる。ただし、「急性期病床」「慢性期病床」の推移に影響する要因等について、多面的な検討は加えていないことを前提に読むべき数値である。
また、患者数に対する必要看護職員数による推計について、「現状水準」と「高水準」で推計した。現状水準とは、看護サービスの質も、看護職の労働条件も変わらない場合である。患者に投入される看護サービス量の増加をかはかりつつ看護職員の処遇改善をも進める必要があるという立場に立てば、少なくとも処遇改善分として客観化できる増員を見込んだ必要看護職員数の推計が必要である。しかしながら、同時に考慮されるべき患者に投入されるべき看護サービス量の目標は現時点では客観的に定量化されておらず、必要看護職員数の推計指標とすることができない。
本研究における「高水準による推計」では、従来の患者対看護職員数の伸びにより推計される患者対看護職員数を必要看護職員数とみなし、かつ処遇改善分の増員を見込んだ。この推計においては患者対看護職員数の伸びに含まれているであろう処遇改善分とあわせ処遇改善分が二重にカウントされることになるが、これは処遇改善の確保を重視したためであり、「高水準による推計」における「従来の患者対看護職員数の伸びにもとづく増員」によって処遇改善が担保されるか否かについての検証を行っていないことにより、便宜的に選択された手法である。現在までの入院患者対看護職員数の増加に包含されている看護職員の労働条件・処遇の改善分については、過去の実績の分析により明らかにすることが可能であり、これにより明らかになるこの間の患者一人当りの看護サービス投入量の分析とともに今後の課題であるといえよう。
現行の「需給見通し」では駆け込み増床により病床予測は外れた形になっているが、今回の推計でも病床数の推計には不確定要因があることは否めない。特に、療養型病床群への転換が急速に進展しており、既に15万床を突破していること等から、病床数予測にはかなりの困難性がある。特に第4次医療法改正案が審議継続中であり、政策的な病床規制のあり方が不透明な現時点における予測には自ずと限界がある。
供給推計については、今回の推計では平成12年の見込み定員で一定とした。このことは今後10年間で18歳人口は約36万人減少する中で、看護婦養成学校への入学者数が減少しないことを前提としているために、過大見積もりの可能性もある。
また、40万人以上ともいわれる潜在看護婦の存在は、看護婦供給の大きな撹乱要因となる可能性がある。潜在看護婦の動向は、経済状況に依存する部分がかなりあり、予測が困難である。                    
看護婦の需要数は政策によりかなり影響をうける。現在、第4次医療法の改正案が審議中であること、また介護保険制度が進行中であることから平成8~9年までの実績値をもって推計した結果は流動的なものであり、政策案が明確になった時点で修正する必要がある。



結論

公開日・更新日

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