食品中の毒素産生微生物及び試験法に関する研究

文献情報

文献番号
201131048A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中の毒素産生微生物及び試験法に関する研究
課題番号
H23-食品・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鎌田 洋一(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 禎一(大阪市立大学大学院 生活科学専攻)
  • 重茂 克彦(岩手大学 農学部)
  • 三宅 眞実(大阪府立大学 生命環境科学部)
  • 宇治家 武史(カイノス株式会社 開発研究所)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,889,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品の安全確保を推進するため、ブドウ球菌およびセレウス菌が産生する嘔吐毒素、ならびにウエルシュ菌下痢毒素とそれら毒素産生性細菌を、食品中から直接検出する試験法を開発し、また食品内毒素産生動態を解析する。さらに、各細菌のリスクプロファイルを作製し、食中毒発生予防に貢献することを目的とする。それぞれの食中毒の発生機構を分子レベルで解析し、学術的な貢献を行う。
研究方法
嘔吐毒素産生性セレウス菌の検出法開発に、リアルタイムPCR法を導入した。食品内におけるブドウ球菌の新型エンテロトキシン産生動態を解析した。水晶発振マイクロバランス(QCM)法で、牛乳中の同菌エンテロトキシンをリアルタイムで検出する方法の開発を検討した。ウエルシュ菌食中毒発生に必須と考えられている同菌の腸管内増殖を検討した。エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌を検出するため、ハイブリダイゼーションを原理とした核酸クロマト法を開発、感度向上を試みた。ウエルシュ菌の新型下痢毒素を単離するため、ゲノム解析と、部分精製毒素標品の網羅的タンパク質分析を行った。文献情報を収集し、ウエルシュ菌のリスクプロファイルを作製した。
結果と考察
米飯に増殖したセレウス菌からの核酸抽出に適した抽出バッファーを選抜でき、リアルタイムPCR法に適応可能の条件を得た。ブドウ球菌新型エンテロトキシンは、室温を想定した培養温度(20℃)で産生されること、かつ、37℃に比べ、毒素産生が持続することを明らかにした。牛乳中の同菌エンテロトキシンのQCM法による検出感度は、複数種の抗体を利用することにより改善され、10 ng/mlの毒素濃度を検出できるようになった。ウエルシュ菌の腸管内増殖と芽胞形成に、特定の糖と、腸管上皮細胞の存在が必須であることが示された。核酸クロマト法により、10^6 cfu/gのエンテロトキシン産生ウエルシュ菌を検出でき、キット試作品作製のレベルに到達した。ウエルシュ菌新型エンテロトキシンの候補遺伝子を2種類まで特定した。ウエルシュ菌は大規模食中毒を起こすが、症状は軽く、リスクはさほど大きくないことがわかった。
結論
毒素産生性セレウス菌、およびウエルシュ菌について、またブドウ球菌エンテロトキシンについて、新原理検出法が開発可能となり、一部は市場に出る可能性が示された。ブドウ球菌は室温で定常的に毒素を産生することがわかった。ウエルシュ菌の食中毒を理解するには、腸管内菌増殖から、新型エンテロトキシン産生までを考える必要があることが分かった。ウエルシュ菌食中毒制御には大量調理施設での対応が重要となることがリスク解析から明確になった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131048Z