食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化と国際化対応に関する研究

文献情報

文献番号
201131014A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化と国際化対応に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所化学部)
  • 永山 敏廣(東京都健康安全研究センター食品化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品摂取に伴う残留農薬の健康影響リスクのより適切な管理のため、(1)農産物の国内基準と国際基準による残留基準適用部位・検査部位の相違を整理し、国際基準に対応するための情報(換算係数等)を得る。また、インポートトレランスに対応した暴露量評価を精密化するEPAの情報を収集する。(2)農産物中の最大残留濃度を統計学的に推定して基準値とする手法が国際機関で検討されている。我国への導入に先立ち、国内農業慣行に基づく残留データを用いて、既存の残留基準設定手法を比較検討する。また、食品分類の改定が国際機関で進行中であり、整合化に向けて情報を収集する。(3)調理加工に伴って生じる農薬分解物の情報を収集、解析する他、生成物検索のためのモデル実験系を考案し、調理加工に係るリスク管理試験法案を提案する。
研究方法
(1)洋なしと未成熟とうもろこしで5種農薬の作物残留試験を実施し、果実及び穂中での農薬の分布を調べた。(2)7農薬の2農産物における作物残留試験を毎年8県の試験圃場で2年間行って得た各16例の残留データを検討に用いた。(3)加工調理による農薬の加水分解に関するOECD指針を参考に試験条件を設定した。(1)と(2)の農薬処理農産物の調製は日本植物防疫協会に委託した。
結果と考察
(1)洋なし果実内の残留農薬の分布は、日本なし及びりんごと同等であり、仁果類における国際基準による残留濃度測定値は、国内基準による値と同等(0.8-2倍)であった。未成熟とうもろこしでは、花柱に高濃度が分布する例及び国内では検査に含めない穂軸の方が種子より高濃度の例があった。検査における花柱の扱いを定義する必要があった。(2)農薬残留値の分布を特定の分布パターンに分類するには、更に多くの試験例数が必要であり、分布パターンに依存しないOECD法はEUやNAFTAの手法より我国に適当とされた。16例で得た最高残留濃度未満の不適切な基準値をOECD法が与える確率は、3例の試験では無視できないレベルであった。(3)加熱分解装置を試作し、OECD指針を参考にした湿式加熱条件で4種農薬の分解パターンをLC-MSで調べた。放射性物質を用いない標準試験法に纏めた。
結論
農産物の残留基準設定部位及び検査部位に関する国際基準と国内基準の相違に対応するための換算係数等の情報を核果と仁果等で得た。OECDの残留基準値設定手法が国内残留データで検証され、我国への導入に際しての留意点が纏められた。調理加工に伴う加熱分解のモデル実験系の基礎ができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201131014B
報告書区分
総合
研究課題名
食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化と国際化対応に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 保博(財団法人残留農薬研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 和昭(財団法人残留農薬研究所化学部)
  • 永山 敏廣(東京都健康安全研究センター食品化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品摂取に伴う残留農薬の健康影響リスクのより適切な管理のため、(1)農産物の国内基準と国際基準による残留基準適用部位・検査部位の相違を整理し、国際基準に対応するための情報を得る。(2)国際機関で検討されている農産物中の最大残留濃度を統計学的に推定して基準値とする手法の我国への導入に関し、国内農業慣行に基づく残留データを用いて、既存残留基準設定手法を比較する。(3)調理加工で生じる農薬分解物の情報を収集、解析する他、生成物検索のためのモデル実験系を考案し、調理加工に係るリスク管理試験法指針案を提案する。(4)インポートトレランスに対応した暴露量評価の精密化のためEPAの情報を収集するほか、国際機関で進行中の食品分類の改定の情報を収集する。
研究方法
(1)国内慣行法で農薬を処理した農産物を日本植物防疫協会に委託して調製し、農薬の分布調査に供した。(2)7農薬の2農産物における作物残留試験を毎年8県の試験圃場で2年間行って得た各16例の残留データを検討に用いた。作物試料の調製は日本植物防疫協会に委託した。(3)加工調理による農薬の加水分解に関するOECD指針を参考に試験条件を設定した。
結果と考察
(1)仁果類(りんご、日本なし及び洋なし)と核果類(もも等)、未成熟とうもろこしについて、作物残留試験で果実又は穂中の農薬の分布を調べる等して、国際基準による残留値と国内基準による値を比較した。核果類(もも及びびわ以外)では既存国内残留データをそのまま、又は果皮と果肉別の既存データからの計算値(もも)を、又は2倍して(西洋なしを含むなし及びりんご)、それぞれ、国際基準による値に対応させることができる。(2)農薬残留値の分布を特定の分布パターンに適切に分類するには、多数の試験が必要であり、分布パターンに依存しないOECD法はEUやNAFTAの手法よりも我国に適当とされた。16例で得た最高残留濃度及び同法による基準値との比較結果等に基づき、小数例の試験データに同法を適用する際に留意すべき点が纏められた。(3)加熱分解装置を試作し、OECD指針を参考にした湿式加熱条件でマラチオン等4種農薬の分解を検討し、食品中残留農薬の熱分解のモデル実験系を構築し、放射性物質を用いない標準試験法案に纏められた。(4)EPAとCodexの情報が収取された。
結論
食品中残留農薬のリスク管理手法の精密化と国際標準への整合化を進める上で解決すべき問題である小課題1、2及び3といった課題の解決に向けた有益な情報が得られた

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
残留基準値の適用部位と検査部位を国際基準に整合化するための換算係数等の情報を得たほか、統計手法を用いた基準値設定法について検討し、我が国に適用する場合の留意点をまとめた。また、食品の加熱加工に伴って生成されうる残留農薬の分解物を把握する試験法を提案した。研究で得た仁果類における茎葉散布農薬の果実内分布の情報、及び日本の作物残留試験における残留値の分布特性の情報は、レギュラトリーサイエンスの観点からは新しい知見である。
臨床的観点からの成果
特記事項なし
ガイドライン等の開発
食品の加熱加工に伴って生じ得る残留農薬の分解生成物を把握する試験法を提案した。
その他行政的観点からの成果
核果類(びわを除く)と仁果類について、残留基準値適用部位及び検査部位を国際基準に整合化する際に現行基準値に適用する換算係数などの情報を提案したほか、農薬登録時の試験例数増加に対応して適用する残留基準設定法として統計法を取り入れたOECDの手法を第1候補とし、その適用の留意点をまとめた。
その他のインパクト
残留基準の適用部位・検査部位の国際基準への整合化に関し、本研究で、既存登録データからの推定は困難で、新たに実際に作物残留試験をして国際基準対応データを得ることが必要と分類した農産物についての既登録剤の残留データ収集が、農水省の事業及び研究代表者の属す残留農薬研究所の公益目的支出計画の一課題として、H24年度から開始された。また、農水省の作物残留試験ガイドラインの改定(H23)で分析部位が当研究の提案に沿うものに変更された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
K.Iijima, et al., J. Pestic.Sci., 36,492 (2011) 投稿準備中2報(2013)
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
矢島智成他 農薬残留分析懇談会、農薬残留分析研究会(2011)、日本食品衛生学会(2012)、日本農薬学会(2013);田村康宏他、食品衛生学会学術講演会(2011)
学会発表(国際学会等)
2件
T. Yajima, et al., 12th ICPC (2010) K.Iijima et al., 47th Florida Pestic, Resid. Workshop, 2010
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
加藤保博;「農薬のリスク管理はどのようにして行われているのか」消費者庁食品安全セミナー基調講演、東京(2010年、12月)、仙台(2011年3月)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K.Iijima, T.Yajima, M.Nagata et al
Effect of seed weight on estimation of pesticide residue levels in stone fruits.
J. Pesticidee Sci. , 36 (4) , 492-494  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131014Z