生体試料バンクを有効活用した食の安全と安心の基盤形成

文献情報

文献番号
201131003A
報告書区分
総括
研究課題名
生体試料バンクを有効活用した食の安全と安心の基盤形成
課題番号
H21-食品・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 昭夫(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 浩二(京都大学 医学研究科)
  • 原口 浩一(第一薬科大学)
  • 高菅 卓三(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)
  • 渡辺 孝男(東北文教大学)
  • 中塚 晴夫(宮城大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
22,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々の研究目的は、生体試料バンクを有効活用し、現行のポジティブリスト制度を補完し、食の安全と安心の基盤を強化することである。本研究では、1)曝露評価と生物学的モニタリング手法の確立2)汚染が懸念される物質への対応3)データベースとモデリング4)国際協力とリスクコミュニケーション5)サンプルバンクの試料の系統的継続的な収集を目的とする。
研究方法
1.短鎖塩素化パラフィンが中国で急激な増加を示していることから、必要な測定法を開発し、広範に実施可能な技術を提供する。
2.食事・母乳のポジティブリスト登録化学物質・懸念化学物質の分析:農薬として使用されているジコホール、エンドスルファンが母乳中に検出されたことから、22年度までに収集された日本人の母乳について全国10箇所で評価を行い、地域差を含めて現状を把握する。
3.データベースとモデリング:環境中での分布を予測するためのシミュレーションモデルを構築する。4.国際協力とリスコミ:今後の課題について各国の専門家と意見聴取、意見交換を行い、これらの新たな食品中POPsについての対応を探る。5.本年度は、福島原発事故による放射能の影響を評価するため東日本および西日本で食事試料を採取し、後の評価に備える。
結果と考察
母乳試料中短鎖塩素化パラフィン、食事試料中有機フッ素化合物の同族体について適用可能な高感度分析法を開発した。これは本課題の目的にかなったものであった。短鎖塩素化パラフィンを母乳試料で検討し、中国で日本、韓国に比べて高い濃度で検出された。また難燃剤成分である臭素系物質について血液、食事、母乳試料で分析し、それぞれの出現パターン、地域差、経年的変化を評価した。短鎖塩素化パラフィンの環境モデリングを行った。今年度は国際協力とリスクコミュニケーションに関わるシンポジウムにて有識者と医療従事者が交流し意志の疎通を図った。また、国際フォーラムで日中韓の専門家と情報交換を行った。平成23年度を通じて、過去の992件の血液試料、現在の油脂、乳製品試料41検体、血液試料91検体、母乳38検体、食品食品204検体を採取した。
結論
ヒト生体試料バンクの拡充を行い、提供可能な試料を増加させた。バンク試料の運用は円滑に行われ、汚染物質への曝露モニタリングを国際的、経年的に実施できることが示された。試料バンクの試料測定で時に高濃度曝露が見出され、また新規物質も検出された。今後、実態解明、専門家による検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201131003B
報告書区分
総合
研究課題名
生体試料バンクを有効活用した食の安全と安心の基盤形成
課題番号
H21-食品・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小泉 昭夫(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 浩二(京都大学 医学研究科)
  • 原口 浩一(第一薬科大学)
  • 高菅 卓三(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)
  • 渡辺 孝男(東北文教大学)
  • 中塚 晴夫(宮城大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生体試料バンクを有効活用し、現行のポジティブリスト制度を補完し、食の安全と安心の基盤を強化することである。
研究方法
食事、生体試料中の汚染化学物質の分析手法の検討、汚染が懸念される物質への対応、継続的モニタリング、系統的持続的な試料の収集、汚染同定のための環境生態系モデリング手法の確立、日中韓3国の専門家による意見交換の諸活動を行った。
結果と考察
残留性有機汚染物質の候補としてあげられている、短鎖塩素化パラフィン、有機フッ素カルボン酸などの食事試料、母乳試料から分析法を開発し、日中韓でのパターンを明らかにした。特に中国での汚染の進行を認めた。さらに使用実態をもとにモデリングを行った。このほか臭素系難燃剤、農薬類についても広く高精度モニタリングを実施した。「食の安全」をテーマにしたシンポジウムや、我が国と中韓の専門家の情報交換を開催することにより、市民および専門家間の情報共有の促進をはかった。特に3カ国の食品産業の動向に関する専門家間の情報交換は、汚染防止には有効と考えられる。試料の系統的な収集を行った。研究資源として将来にわたり利用に備えた。
結論
ヒト生体試料バンクの拡充を行い、提供可能な試料を増加させた。バンク試料の運用は円滑に行われ、汚染物質への曝露モニタリングを国際的、経年的に実施できることが示された。試料バンクの試料測定で時に高濃度曝露が見出され、また新規物質も検出された。今後、実態解明、専門家による検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生体試料バンクは国際的に極めてユニークであり、長期曝露傾向を再構築することで、汚染動向のみならず汚染源の推定にも成功してきた。既存の残留性有機汚染物質のみならず、未規制の高蓄積性物質の実態を明らかにした。本研究で試料の系統的な収集を行い、研究終了後も有用な生物資源を提供可能となる。
臨床的観点からの成果
本研究課題は臨床研究ではない。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
以下の報道に取り上げられた。
2011/7/15 京都新聞「中国の食用油に発がん疑い物質」
2011/7/14 日本放送協会(京都)「中国の油から工業用成分検出」
2010/10/30 京都新聞(25面)「中韓の食事、汚染物質急増」

以下のシンポジウムを開催した。
2010/10/31 日中韓の化学物質による食物と母乳の汚染の現況

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
53件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
61件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujii Y, Koizumi A, Haraguchi K, et al.
Dietary exposure to phenolic and methoxylated organohalogen contaminants in relation to their concentrations in breast milk and serum in Japan
Environ. Int. , 63 (1) , 19-25  (2014)
10.1016/j.envint.2013.10.016
原著論文2
Matsubara F, Koizumi A, Haraguchi K, et al.
Detection of Antibodies to Human T-Cell Leukemia Virus Types 1 and 2 in Breast Milk from East Asian Women
Biol. Pharm. Bull. , 37 (2) , 311-314  (2014)
10.1248/bpb.13-00558
原著論文3
Fujii Y, Harada KH, Haraguchi K, et al.
Temporal trend and age-dependent serum concentration of phenolic organohalogen contaminants in Japanese men during 1989-2010
Environ. Poll. , 185 , 228-233  (2014)
10.1016/j.envpol.2013.11.002
原著論文4
Fujii Y, Ito Y, Harada KH et al.
Regional variation and possible sources of brominated contaminants in breast milk from Japan
Environ Pollut , 162 , 269-274  (2012)
10.1016/j.envpol.2011.11.022
原著論文5
Fujii Y, Yan J, Harada KH et al.
Levels and profiles of long-chain perfluorinated carboxylic acids in human breast milk and infant formulas in East Asia
Chemosphere , 86 (3) , 315-321  (2012)
10.1016/j.chemosphere.2011.10.035
原著論文6
Koizumi A, Harada KH, Niisoe T, et al.
Preliminary assessment of ecological exposure of adult residents in Fukushima Prefecture to radioactive cesium through ingestion and inhalation
Environ Health Prev Med , 17 (4) , 292-298  (2012)
10.1007/s12199-011-0251-9
原著論文7
Desalegn B, Takasuga T, Harada KH et al.
Historical trends in human dietary intakes of endosulfan and toxaphene in China, Korea and Japan
Chemosphere , 83 (10) , 1398-1405  (2011)
10.1016/j.chemosphere.2011.02.063
原著論文8
Fujii Y, Haraguchi K, Harada KH, et al.
Detection of dicofol and related pesticides in human breast milk from China, Korea and Japan
Chemosphere , 82 (1) , 25-31  (2011)
10.1016/j.chemosphere.2010.10.036
原著論文9
Liu W, Chen S, Harada KH, et al.
Analysis of perfluoroalkyl carboxylates in vacuum cleaner dust samples in Japan
Chemosphere , 85 (11) , 1734-1741  (2011)
10.1016/j.chemosphere.2011.09.024
原著論文10
Niisoe T, Harada KH, Hitomi T, et al.
Environmental ecological modeling of human blood lead levels in East Asia
Environ Sci Technol , 45 (7) , 2856-2862  (2011)
10.1021/es103666e
原著論文11
Harada KH, Hitomi T, Niisoe T, et al.
Odd-numbered perfluorocarboxylates predominate over perfluorooctanoic acid in serum samples from Japan, Korea and Vietnam
Environ Int , 37 (7) , 1183-1189  (2011)
10.1016/j.envint.2011.04.011
原著論文12
Harada KH, Takasuga T, Hitomi T, et al.
Dietary exposure to short-chain chlorinated paraffins has increased in beijing, china
Environ Sci Technol , 45 (16) , 7019-7027  (2011)
10.1021/es200576d
原著論文13
Harada KH, Yang HR, Moon CS, etal.
Levels of perfluorooctane sulfonate and perfluorooctanoic acid in female serum samples from Japan in 2008, Korea in 1994-2008 and Vietnam in 2007-2008
Chemosphere , 79 (3) , 314-319  (2010)
10.1016/j.chemosphere.2010.01.027
原著論文14
Minata M, Harada KH, Karrman A, et al.
Role of peroxisome proliferator-activated receptor-α in hepatobiliary injury induced by ammonium perfluorooctanoate in mouse liver
Ind Health , 48 (1) , 96-107  (2010)
10.2486/indhealth.48.96
原著論文15
Niisoe T, Harada KH, Ishikawa H, et al.
Long-term simulation of human exposure to atmospheric perfluorooctanoic acid (PFOA) and perfluorooctanoate (PFO) in the Osaka urban area, Japan
Environ Sci Technol , 44 (20) , 7852-7857  (2010)
10.1021/es101948b
原著論文16
Niisoe T, Nakamura E, Harada K, et al.
A global transport model of lead in the atmosphere
Atmos Environ , 44 (14) , 1806-1814  (2010)
10.1016/j.atmosenv.2010.01.001
原著論文17
Haraguchi K, Koizumi A, Inoue K, et al.
Levels and regional trends of persistent organochlorines and polybrominated diphenyl ethers in Asian breast milk demonstrate POPs signatures unique to individual countries
Environ Int , 35 (7) , 1072-1079  (2009)
10.1016/j.envint.2009.06.003
原著論文18
Nakagawa H, Terada T, Harada KH, et al.
Human organic anion transporter hOAT4 is a transporter of perfluorooctanoic acid
Basic Clin Pharmacol Toxicol , 105 (2) , 136-138  (2009)
10.1111/j.1742-7843.2009.00409.x
原著論文19
Karrman A, Harada KH, Inoue K, et al.
Relationship between dietary exposure and serum perfluorochemical (PFC) levels--a case study
Environ Int , 35 (4) , 712-717  (2009)
10.1016/j.envint.2009.01.010
原著論文20
Koizumi A, Harada KH, Eslami B, et al.
Paradoxical increases in serum levels of highly chlorinated PCBs in aged women in clear contrast to robust decreases in dietary intakes from 1980 to 2003 in Japan
Environ Health Prev Med , 14 (4) , 235-246  (2009)
10.1007/s12199-009-0089-6

公開日・更新日

公開日
2016-10-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131003Z