食品防御の具体的な対策の確立と実行可能性の検証に関する研究

文献情報

文献番号
201131002A
報告書区分
総括
研究課題名
食品防御の具体的な対策の確立と実行可能性の検証に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 三上 栄一(愛知県衛生研究所)
  • 高谷 幸(社団法人日本食品衛生協会 事業部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,104,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では過年度の研究成果である、意図的な食品汚染に対する脆弱性評価手法「CARVER+Shock法」と、「食品工場における人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」を、実際の食品工場に適用することで、その実行可能性を検証し、さらに食品企業向けの食品防御ガイドラインの作成を行うこと、また食品による健康被害を早期に把握するための食品の市販後調査(以下、PMM)を実現する手法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)との連携により以下の方法を採用した。(1)食品工場への現地調査を実施し、CARVER+Shock法・チェックリストを実際に適用した。(2)(1)の結果を用いて、食品防御の視点から現行の安全管理体制に追加すべき具体的対策を検討した。(3)「食品防御対策ガイドライン」を作成するため、過年度の研究成果を基に延べ8工場に対するヒアリングを行った。(4)食品PMMについては、過年度に開発した手法を基に、米国疾病予防管理センター(CDC)で実施されている早期異常探知システム(EARS)の手法などを組み合わせた手法の活用可能性を検証した。
結果と考察
(1)CARVER+Shock法、及びチェックリスト双方の適用可能性を確認した。(2)「食品防御対策ガイドライン」最終案を作成した。(3)パルシステム東京及び生活協同組合コープこうべの協力を得て、健康調査及び商品購入データによる食品PMMを試行し、実行可能性を確認した。(4)インターネットを活用した、登録モニターの毎日の健康調査情報を取得できるインターネットアンケートシステムを構築した。
結論
食品工場における食品防御に対する脆弱性評価手法(CARVER+Shock法およびチェックリスト)を確立し、モデル工場に対して現行の管理体制に追加すべき具体的対策を提案した。また食品工場現場の意見を多く取り入れた、実効性の高い食品防御対策ガイドライン最終案を作成した。さらに食品PMMについて、EARS(CDCで実施されている早期異常探知システム)等を組合せた段階的抽出プロセスの構築により、健康被害疑いがある食品を検出できる可能性が示唆された。ただし今回検出された食品と実際の健康被害疑いとの因果関係は正確には不明であるため、今後はこれらの因果関係の調査や、実用化に向けたリアルタイムアラートの出し方などを検討していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201131002B
報告書区分
総合
研究課題名
食品防御の具体的な対策の確立と実行可能性の検証に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 茂貴(国立医薬品食品衛生研究所 )
  • 三上 栄一(愛知県衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 高谷 幸(社団法人日本食品衛生協会 事業部)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 鬼武 一夫(日本生活協同組合連合会 品質保証本部 安全政策推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
9.11事件等を契機に世界各国でテロの危険性の認識が高まる中、テロの中でも実行が容易な「意図的な食品汚染行為(食品テロ)」の危険性に注目が集まっている。この背景から本研究では主に(1)意図的な食品汚染行為に対する具体的対策を検討すること、(2)大規模食中毒の早期検知に資する食品の市販後調査兼健康調査(以下、PMM)について検証すること、(3)食品PMMに必要なデータ収集方法を開発すること等を目的とする。
研究方法
以下に示す6項目について、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)との連携と、検討会における生物・化学・食品衛生等の専門家・実務家らとの討議を通じて実施した。(2)-(4)は食品工場への現地調査、(5)(6)は日本生協連より健康調査及び商品購入データの提供を受けた。
(1)米国等における食品防御対策の体系的把握
(2)食品工場における脆弱性評価・チェックリストの実行可能性の検証
(3)食品防御対策の検討
(4)食品防御のためのガイドラインの検討
(5)PMMの実行可能性の検証
(6)生協組合員に対する情報収集システムの構築
結果と考察
本研究により開発した脆弱性評価手法・チェックリストの適用により、HACCP管理のみでは対応困難な問題点を把握するとともに、「食品防御対策ガイドライン」を作成した。PMMについては、日本生協連の協力を得て収集したモニターの健康状況データ、及び商品購入データを用いて、食品による健康被害の早期発見分析手法を提案した。
結論
食品工場における食品防御に対する脆弱性評価手法(CARVER+Shock法およびチェックリスト)を確立し、モデル工場に対して現行の管理体制に追加すべき具体的対策を提案した。また過年度調査も含めば11箇所の工場訪問、及び22、23年度に延べ8箇所の工場ヒアリングを行い、食品工場現場の意見を多く取り入れた、実効性の高い食品防御対策ガイドライン最終案を作成した。PMMについては、健康被害疑いがある食品を検出できる可能性は示唆されたが、検出された食品と実際の健康被害疑いとの因果関係は正確には不明である。今後はこの因果関係の調査や、実用化に向けたリアルタイムアラートの出し方を検討する必要がある。生協組合員に対する健康情報の収集については、生協組合員へのインターネットアンケート調査の試行を通じて、広域的な食品PMMを実行する技術的環境を整えることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により開発した脆弱性評価手法・チェックリストの適用により、HACCP管理のみでは対応困難な問題点を把握するとともに、「食品防御対策ガイドライン」を作成した。PMMについては、関東、関西の会員生協の協力を得て収集したデータ、及び調査した世帯の商品購入データを用いて、食品による健康被害の早期発見・スクリーニング分析手法を提案した。また、インターネットを活用した、生協組合員に対するデータ収集システムを構築した。
臨床的観点からの成果
特になし。
ガイドライン等の開発
日本生協連が委託を行っている6工場を訪問し、米国で開発された意図的な食品汚染に対する脆弱性評価手法である「CARVER+Shock法」を基に「食品工場における人為的な食品汚染防止に関するチェックリスト」を開発した。さらにこのチェックリストを基に、食品工場での対策可能性に関するヒアリングを重ね、「食品防御対策ガイドライン(食品製造工場向け)」を作成した。
その他行政的観点からの成果
本研究の中ではHACCPの高度化による食品防御対策の充実の可能性についても検討した。具体的には「総合衛生管理製造過程承認制度実施要領」を例にHACCPの高度化基準への留意事項案を検討し、「製造又は加工の工程に関する文書について、盗難や部外者への漏出についても注意を払うこと」、「人為的に投入される原因物質については、加熱等によっても除去困難な場合もあることから、作業員の作業監視や相互監視等、投入行為の防止対策を講じる必要があること」等、全22の事項を指摘した。
その他のインパクト
2012年3月13日農林水産省「省内の食品安全に関係する者を集めて、危機管理の勉強会」講演
2011年6月4日NHK制作局「週刊ニュース深読み」NHK総合 出演
2011年2月7日人事院公務員研修所 第10回行政研修(係長級特別課程)基調講義 行政政策事例研究「BSE問題 」
2010年12月15日農林水産省 食品安全マネジメント研修「リスクコミュニケーションと食品安全」講演
2009年6月15日毎日新聞セミナー食・安全・危機管理 「フードディフェンスと食品安全のための新しい課題」講演

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
36件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
今村知明
食品の安全とはなにか -食品安全の基礎知識と食品防御
日本生活協働組合連合会出版部 , 1-237  (2009)
原著論文2
今村知明、神奈川芳行、板倉弘重 他
栄養管理と生命科学シリーズ」食品衛生の科学- 第2章 食品衛生と食品衛生関連法規.
理工図書株式会社 , 7-21  (2011)
原著論文3
Yoshiyuki Kanagawa, Shinya Matsumoto, Tomoaki Imamura et al.
Association analysis of food allergens
Association analysis of food allergens , 20 (4) , 347-352  (2009)
原著論文4
大日康史、今村知明、岡部信彦 他
北海道洞爺湖サミットにおける症候群サーベイランスの実施
感染症学雑誌 , 83 (3) , 236-244  (2009)
原著論文5
今村知明、尾花尚弥、山口健太郎、 他
健康危機関連事件における本来のリスクを上回ると思われる過剰な社会反応の定量的把握とその分析
厚生の指標 , 56 (15) , 42-47  (2009)
原著論文6
赤羽学、高谷幸、今村知明
フードディフェンス-わが国の現状と課題-
食品衛生研究 , 59 (9) , 7-13  (2009)
原著論文7
今村知明
食の安全のための新しい課題 「食品防御」とはなにか?
生協運営資料 , 249 , 88-89  (2009)
原著論文8
今村知明、康永秀生、尾花尚弥 他
健康被害情報や医療事件への社会反応の定量分析の試みと比較
医療情報学 , 27 , 989-994  (2009)
原著論文9
杉浦弘明、赤羽学、今村知明 他
インターネットアンケート調査による新しい症候群サーベイランスの構築と長期運用の基礎的研究
医療情報学 , 27 , 756-761  (2009)
原著論文10
山内利朗、杉浦弘明、今村知明 他
出雲市における症候群サーベイランス
出雲市における症候群サーベイランス , 30 (1) , 39-46  (2010)
原著論文11
今村知明
特集 フードディフェンスについて考える 食品の安全を守るということ -食品防御をはじめよう-
明日の食品産業 , 406 , 13-19  (2010)
原著論文12
赤羽学、今村知明
食品防御とは何か -食品安全のための新しい課題-
FFIジャーナル , 215 (2) , 184-190  (2010)
原著論文13
Sugiura Hiroaki, Akahane Manabu, Imamura Tomoaki et al.
Construction of syndromic surveillance using a web-based daily questionnaire for health and its application at the G8 Hokkaido Toyako Summit meeting
Epidemiology and Infection , 138 (10) , 1493-1502  (2010)
原著論文14
杉浦弘明、今村知明、岡部信彦 他
学校欠席者情報システムを用いた新型インフルエンザに対する学級閉鎖の有効性
学校保健研究 , 52 (3) , 214-218  (2010)
原著論文15
今村 知明、赤羽 学、鬼武 一夫、 他
食品市販後調査:PMM(Post Marketing Monitoring)の実行可能性の検証とそのデータ活用の検討
医療情報学 , 30 , 669-674  (2010)
原著論文16
Hiroaki Sugiura, Manabu Akahane, Tomoaki Imamura et al.
Development of a web-based survey for monitoring daily health and its application in an epidemiological survey.
Journal of Medical Internet Research. , 13 (3) , 66-  (2011)
原著論文17
前屋敷明江、赤羽学、今村知明 他
食品市販後調査の実行可能性の検証とシグナル検出方法の検討
医療情報学 , 31 (1) , 13-24  (2011)
原著論文18
今村知明、赤羽学、鬼武一夫 他
食品における市販後調査の試みと食中毒早期発見に向けた検証結果
医療情報学 , 31 , 739-742  (2011)
原著論文19
前屋敷明江、赤羽学、今村知明 他
発疹の有症状率に食品と花粉が相互影響を与える可能性
医療情報学 , 31 , 1069-1073  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-10-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,104,000円
(2)補助金確定額
15,104,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,173,614円
人件費・謝金 2,766,069円
旅費 1,054,100円
その他 10,110,467円
間接経費 0円
合計 15,104,250円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-