歯科医療関連職種と歯科医療機関の業務のあり方及び需給予測に関する研究

文献情報

文献番号
201129059A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科医療関連職種と歯科医療機関の業務のあり方及び需給予測に関する研究
課題番号
H23-医療・指定-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 慶太(鶴見大学 歯学部)
  • 大内 章嗣(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、歯科医療ニーズの6年間の推移や歯科医療機関にて具備する必要がある医療安全の要件を明らかにすることにより、今後の歯科専門職ならびに歯科医療機関での業務のあり方について検討した。また、近年の供給面の変化の要素を加えた歯科医師の需給分析を行うとともに、歯科技工士の将来予測についても解析した。併せて、未就業歯科衛生士の現状を明らかにするために、大規模調査を実施した。
研究方法
歯科医療ニーズ調査、歯科医療機関での医療安全要件に関する調査ならびに未就業歯科衛生士に対する再就職ニーズ調査については、自記式質問紙による留置郵送法を用いた。一方、歯科医師と歯科技工士の需給予測については、2次データによる分析を行い、今まで報告されてきた推計モデルにもとに、近年の動向の変化を加えた予測を行った。
結果と考察
歯科医療ニーズ調査では、ニーズが高いにもかかわらず不足している領域として、在宅歯科医療と摂食・嚥下リハビリテーションを挙げていた者が高率に認められ、6年前のニーズ調査結果と大きく変化した。歯科医療安全の取組状況については、医療安全上の具備要件10項目のうち、医育機関においては全ての項目で高い実施状況を認めた。歯科医師会においても医療安全研修会及び感染対策研修会については、高率に実施されていた。
 歯科医師の需給分析については、稼働歯科医師数は平成33年にピークを迎えた後、緩やかに減少することが推計されたが、需要量は平成35年に108,000人となり、その後ピークを迎えて緩やかに減少することが推計された。一方、就業歯科技工士の高齢化の進展のため、平成32年での就業歯科技工士数は5,000人程度の減少が予想された。
 未就業の歯科衛生士のうち、復職を希望する者は約3割であり、その多くが既婚者であった。復職の障害として、「技術力の不足」ならびに「育児」や「家庭との両立」を挙げた者が高率に認められたことから、未就業者歯科衛生士に対する研修会の実施や子育てしながら就業ができる社会環境の整備が必要だと考えられた。
結論
超高齢社会の到来を受けて、歯科口腔保健に対するニーズの変化は大きく、その状況は歯科医療専門職の需給にも大きな影響を与えていた。また、歯科医療安全に対しての取組については、一定レベルには達していたが、さらなる徹底が必要であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2012-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201129059C

成果

専門的・学術的観点からの成果
近年の歯科疾患の疾病構造の変化がもたらす歯科医療ニーズについて、明らかにするとともに、歯科専門職の需給分析や再就業に関する調査・分析を行うことにより、わが国の今後の歯科医療に関する人材育成のあり方や方向性について基礎的指針を提示した。歯科医療安全についても、その取り組みの現状を明らかにし、今後の対応策を検討する際のデータを提示した。これらの調査分析にあたっては、過去の厚労科研で得られた知見を活用することにより、経年的変化を明確にする等、その分析の精度を高めた。
臨床的観点からの成果
医療安全上の具備条件10項目のうち、歯科医師会においては医療安全研修会と感染対策研修会の実施は積極的に行われていたが、医療機器の保守点検計画の策定、医薬品取扱マニュアルの策定、医療安全ガイドラインの策定等については促進の余地があることが明らかになった。一方、医育機関附属病院においては、300件を越えるインプラント事故症例の後医を担当していたことも明らかになったことより、当該手技について、さらなる注意喚起の必要性が明らかになった。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
6年前の厚労科研のデータと比較することにより、近年の歯科医療ニーズの変化について把握することができた。また、過去の需給分析にて、今後、不足することが予測されている歯科衛生士の再就業ニーズについての大規模調査を行うことにより、未就業歯科衛生士への対応についても検討を行い、方向性を示した。また、歯科技工士の将来供給量についても、最新のデータを用いることにより、より精度の高い分析を行い、今後の歯科医療の適正供給に寄与する知見を得た。
その他のインパクト
研究成果の一部を社会に還元するために、平成23年度の第60回口腔衛生学会にて関連テーマの自由集会を行い、約50名の地域歯科保健関係者の参加を得た。今後の歯科保健医療ニーズの変化については、歯科医師を対象とした代表的な月刊誌(発行部数21,000部)の新年号にて巻頭特集が組まれ、広く周知された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
日本口腔衛生学会、日本公衆衛生学会等に発表
学会発表(国際学会等)
1件
国際歯科医学会(IADR)Best poster ノミネーション
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
三浦宏子、薄井由枝
地域包括医療・ケアの動向と今後の口腔保健
保健医療科学 , 60 (5) , 396-400  (2011)
原著論文2
安藤雄一、他
Web調査による定期歯科受診の全国的概況
口腔衛生学会誌 , 62 (1) , 41-52  (2012)
原著論文3
小原由紀、古川清香、安藤雄一他
求人状況からみた歯科診療所における歯科衛生士不足に関する研究-日本歯科医師会会員を対象とした全国調査による分析-
口腔衛生学会誌 , 62 (3) , 282-288  (2012)
原著論文4
Miura H, Sato K, Hara S, et al.
Deveopment of a masticatory indicator using a checklist of chewable food itmes ofr the community-dwelling elderly
ISRN Geriatrics , 2013 (194693) , 1-4  (2013)
原著論文5
薄井由枝、三浦宏子、玉置洋
超高齢社会における歯科口腔保健の今後のニーズと課題に関する歯科有識者への意識調査
老年歯科医学 , 28 (3) , 304-309  (2013)
原著論文6
Usui Y, Miura H
Workforce re-entry for Japanese unemployed dental hygienists
Internationa Journal of Dental Hygiene , 13 (1) , 74-78  (2015)
10.111/idh.12101
原著論文7
Sato K, Tamaki Y, Kobayashi T, et al.
Safety performance and accident data involving dental practice in the light of enactment of patient safety policy in Japan
Forensic Dent Sci , 7 (1) , 2-13  (2014)

公開日・更新日

公開日
2018-08-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201129059Z