遺伝性女性化乳房の実態把握と診断基準の作成

文献情報

文献番号
201128246A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性女性化乳房の実態把握と診断基準の作成
課題番号
H23-難治・一般-090
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
生水 真紀夫(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 深見 真紀(国立成育医療研究センター 分子内分泌研究部)
  • 原田 信広(藤田保健衛生大学 医学部生化学)
  • 横田 千津子(城西大学 薬学部薬学科)
  • 花木 啓一(鳥取大学 医学部保健学科)
  • 野口 眞三郎(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 碓井 宏和(千葉大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国における遺伝性女性化乳房症の早期診断および早期治療を可能にすることにより、本症患者のQOLを向上させることを目的としている。この目的のために、わが国における患者の実態把握と臨床診断基準の策定、さらに細胞遺伝学的診断方法の開発とその評価を目指す。
研究方法
平成22年度までの調査研究で明らかとなった遺伝性女性化乳房症(HG)の可能性のある253名の患者を主な対象として、細胞遺伝学的確定診断法の確立とその検証を行う。また、一連の研究により確定診断された症例および文献報告例の臨床症状および全国患者実態調査結果をもとに、臨床症状・内分泌学的検査値などの診断的意義を検討し、臨床的診断指針を策定する。
結果と考察
1.細胞遺伝学的確定診断法の確立: 15番染色体のCGH arrayおよび5’-RACEなどによる染色体変異のスクリーニングと、long range PCR法、シークエンス、FISHなどの方法を個別にデザインして組み合わせて遺伝子変異を確定させるための系統的診断システムを開発した。本手法を平成22年度の疫学調査で見いだされた症例に適用し、その診断力を確認した。
2.診断基準案の策定:4つの臨床項目よりなる臨床的診断手引き(案)を作成した。この臨床的診断基準は、特殊な検査を行うことなく診断することができ、4項目すべてを満たすものを臨床的遺伝性女性化乳房症、1から3までの3項目のみを満たすものを疑い例と診断する。これにより、もれなく候補患者を拾い上げることができる。その後に、適切な細胞遺伝学的検査を行って診断を確定させることを推奨している。
一連の研究成果から、わが国にはまだ適切な診断を受けていない患者家系が存在している可能性がある実態が明らかになってきた。適切な診断を受けないまま手術治療を受けていることも明らかとなった。本疾患は、的確な診断とこれに基づく治療により、発症や再発を予防できると考えられている。今回策定した診断手引き案を、関連学会に提案し検討承認を得ることにより、(1)現状では不十分な本症に対する認知度を上げる、(2)臨床医による適切な本症のスクリーニングを可能にすることができると思われる。さらに、本研究班で開発・評価してきた系統的細胞遺伝学的診断を提供して、確定診断を支援する体制をとることが必要である。
結論
今回策定された診断基準は、本研究班で提供する細胞遺伝学的診断ファシリティーと組み合わせることで、効率的かつ早期の本症の診断を可能にするものである。また、今回の研究で同定された新たなゲノム変異は、本症の発生メカニズムの研究を大いに展開させるものとなる成果である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128246Z