好酸球性副鼻腔炎の診断基準作成と網羅的解析に関する研究

文献情報

文献番号
201128236A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎の診断基準作成と網羅的解析に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-080
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 恵美子(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター )
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部)
  • 飯野 ゆき子(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 石戸谷 淳一(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 河田 了(大阪医科大学 医学部)
  • 春名 眞一(獨協医科大学 医学部)
  • 平川 勝洋(広島大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 川内 秀之(島根大学 医学部)
  • 氷見 徹夫(札幌医科大学 医学部)
  • 岡野 光博(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 吉川 衛(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 坂下 雅文(福井大学 医学部)
  • 浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 分子疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
好酸球性副鼻腔炎は、好中球浸潤優位であるこれまでの慢性副鼻腔炎に比較して、難治性である。しかし好酸球性副鼻腔炎の診断がついたものでも、内視鏡下副鼻腔手術で治癒する症例も存在する。そこでこれまで集めた3014例を層別解析し、臨床データの変化を検討するとともに、内視鏡下副鼻腔手術後の術後経過を3施設で調べ、再発し再手術を行った症例の特徴を見出そうとした。さらに好酸球性副鼻腔炎の病因の探索を行うとともに、新しい治療法として難治性気管支喘息に使用されている抗IgE抗体療法を好酸球性副鼻腔炎と好酸球中耳炎を合併している症例に投与し、その成績を検討した。
研究方法
層別解析は、好酸球浸潤数が80個以上、120個以上、200個以上で行った。3施設では、内視鏡下副鼻腔手術を行った症例の経過調査し、その臨床データを解析した。組織標本では、ケモカイン・サイトカインの発現状態を免疫組織化学で検討するとともに、鼻茸細胞をLPS刺激しTh1/Th2/Th17タイプのサイトカイン産生を調べた。
結果と考察
層別解析では、好酸球浸潤の数が上昇するにつれ、好酸球性副鼻腔炎の特徴的所見である両側病変、鼻茸、嗅裂閉鎖の発現率と血中好酸球率、アスピリン喘息と薬物アレルギーの合併率が有意に上昇した。春名らは238例中69例(29%)の再発を認める術後経過不良群は、術前のCTスコア(Lund-Mackay staging score)にて12点以上、末梢好酸球率10%以上、嗅覚障害高度、粘膜好酸球浸潤数200個以上であった。池田らはアスピリン喘息例、好酸球性ムチン存在例、組織中MBP、IL-17A、Eotaxin強発現例が再発を認めやすいとした。病因として、岡野らはLPSが鼻茸細胞からのSEB刺激IL-5/IL-13/IL-17産生を抑制するが、Cox2やPGE2合成酵素発現を亢進し、2方向性を持つとした。また玉利らは、IL-6とperiostinの関与を示唆した。飯野らは、治療として抗IgE抗体の導入を好酸球性中耳炎合併例に行った。その結果、好酸球性副鼻腔炎も施行した8例すべてで軽快した。
結論
好酸球性副鼻腔炎の手術予後は、層別解析、再発例の検討から、副鼻腔炎が重症で広範(CTによる判定)、嗅覚障害が高度、好酸球浸潤が高い、末梢好酸球率が高い、アスピリン喘息の合併例において不良と予想される。平成23年からprospectiveな検討を行っており、その再発結果でかなり具体的なことがわかり、真に難治性の好酸球性副鼻腔炎臨床像を提示したいと思う。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128236Z