脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究

文献情報

文献番号
201128151A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-192
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学 医学部・学際的痛みセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 戸山 芳昭(慶應義塾大学 医学部)
  • 菊地 臣一(福島県立医科大学 本部)
  • 谷  俊一(高知大学 医学部)
  • 田口 敏彦(山口大学 医学部)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学 医学部)
  • 高安 正和(愛知医科大学 医学部)
  • 柴田 政彦(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 竹下 克志(東京大学 医学部)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学 医学部)
  • 内田 研造(福井大学 医学部)
  • 井上 和秀(九州大学大学院 薬学研究院)
  • 野口 光一(兵庫医科大学 医学部)
  • 上野 雄文(九州大学大学院 医学研究院)
  • 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄障害性疼痛症候群は多彩な痛みであり、アロデニアや障害脊髄高位以下の締め付けられるような自発痛など様々な痛みを生ずる。この問題を解決するため、平成21年度に作成した本症候群の患者の選択基準に則り、その臨床的特徴の調査を進める。また、このような痛みから少しでも患者を解放していくために、治療指針作成の柱となるデータをまとめる。また、本症候群を生ずる頚椎症性脊髄症などに関する調査およびヒトにおける神経学、心理学的な病態と病態モデルを用いた基礎的研究との融合をはかる研究を行う。
研究方法
詳細な症状と治療薬の効果を調査するために、研究協力8施設による全国二次調査を行った。また、石川県志賀町において本症候群を含む慢性痛に関する疫学コホート研究を行った。本症候群を引き起こす脊椎脊髄疾患と本症候群の症状などの関係については圧迫性脊髄症手術後群、脊髄腫瘍手術後群および関連疾患として脊柱管狭窄症などを用いて、心理学的な因子を含めた痛みの症状の特徴を調査した。症状を脊椎・脊髄に由来する痛みの評価法の開発病態モデル動物を用いた実験を行った。
結果と考察
損傷髄節レベルでは、異常感覚、自発痛、誘発痛の順で頻度が高かく、抗てんかん剤の効果が高いことが判った。損傷髄節より下位では、筋肉の異常感覚の訴えが多く、発作痛は少なかった。疾患別調査では、脊髄腫瘍術後痛について、術後のグルココルチコイドの投与が関与していた。疼痛発症に関してCCL21がミクログリアに作用してP2X4受容体の過剰発現を起こすこと、P2X7受容体の遺伝子・蛋白の出現とP2X7阻害剤による疼痛行動の抑制が起こることが確認された。
今後はさらなる分析を行い、治療に向けての柱を作成していく必要があるものと考えられた。
結論
脊髄障害性疼痛症候群の実態の解明と病態の把握を行うために、地域・全国における調査を行った。その結果、現在までの調査では、本症候群の罹患率は0.15%程度と考えられた。また、異常感覚に苛まされているものが多いこと、QOLが比較的低いことなどが挙げられた。同時に行っているモデル動物研究では本症候群にCCL3やグリアの働きが関与していることが明らかになった。これらの研究を進めて本症候群の治療に向かうべきガイドラインの制定を進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128151B
報告書区分
総合
研究課題名
脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-192
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学 医学部・学際的痛みセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 戸山 芳昭(慶應義塾大学・医学部)
  • 菊地 臣一(福島県立医科大学・本部)
  • 谷  俊一(高知大学・医学部)
  • 田口 敏彦(山口大学・医学部)
  • 山下 敏彦(札幌医科大学・医学部)
  • 高安 正和(愛知医科大学・医学部)
  • 柴田 政彦(大阪大学大学院・医学系研究科)
  • 竹下 克志(東京大学・医学部)
  • 中村 雅也(慶應義塾大学・医学部)
  • 内田 研造(福井大学・医学部)
  • 井上 和秀(九州大学大学院・薬学研究院)
  • 野口 光一(兵庫医科大学・医学部)
  • 上野 雄文(九州大学大学院・医学研究院)
  • 中村 裕之(金沢大学・医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脊髄障害性疼痛症候群はアロデニアや障害脊髄高位以下の締め付けられるような自発痛など様々な痛みを生ずるもので、脊髄損傷だけでなく後縦靭帯骨化症や頸椎症性脊髄症など脊髄に起因する様々な疾患により発症に至る。この問題を解決するためには、本症候群の実態(罹患患者数や症状など)を調査すると同時にその神経病理学的なメカニズムの解明を臨床的および基礎的手法を用いてトランスレーショナルリサーチとして推進する。また、これらの研究結果を基に治療指針作成の柱となるデータをまとめる。
研究方法
本症候群の患者の詳細な症状と治療薬の効果を調査するために、取り込み基準を作成し、全国の整形外科及び脳神経外科研修施設に対してのアンケートを行った。さらに研究協力8施設による詳細な分析を二次調査として行った。また、本症候群の人口を把握するために琴平町において成人を対象とする疫学調査を行った。本症候群を引き起こす圧迫性脊髄症、脊髄腫瘍などについて、心理学的な因子を含めた痛みの症状の特徴を調査した。症状を脊椎・脊髄に由来する痛みの評価法の開発病態モデル動物を用いた実験を行った。
結果と考察
罹患率は人口の0.15%、圧迫性脊髄症に起因するものが52%であることが明らかとなった。痛みの分布は脊髄障害高位に一致する63%(うちアロデニアを有するものが43%)、痛みが脊髄障害高位より下位にみられたものは39%(うち脚の痺れ痛みが68%)であった。本症候群ではしびれや痛みに苛まされ、不安・うつとの関連が高く、QOL低下が見られた。薬物療法はCaチャネルリガンドの有効性が高いことが明らかになった。
トランスレーショナル研究を更に推進し、症状の応じた治療に向けての柱を構築していく必要があるものと考えられた。
結論
脊髄障害性疼痛症候群の実態の解明と病態の把握を行うために、地域・全国における調査を行った。その結果、現在までの調査では、本症候群の罹患率は0.15%程度と考えられた。また、異常感覚に苛まされているものが多いこと、QOLが比較的低いことなどが挙げられた。同時に行っているモデル動物研究では本症候群にCCL3やグリアの働きが関与していることが明らかになった。これらの研究を進めて本症候群の治療に向かうべきガイドラインの制定を進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128151C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脊髄障害性疼痛症候群が圧迫性脊髄障害(頚椎症性脊髄症、脊髄後縦靭帯骨化症)で発症する頻度が高く、調査人口の0.15%に発症が認められることが分かった。従来、脊髄障害による痛みは脊髄の外傷(脊髄損傷)により発症すると考えられていたが、それ以外の要因によることが多いことから、圧迫性脊髄症手術後の患者への対応を考慮する必要があることが判った。
臨床的観点からの成果
痛みの症状を障害高位(AL)と下位(BL)に分けて、その特徴と薬物療法に対する反応性を検討した結果、痛みがALに生じることは62.5%であり、その内アロデニアを呈する症例が43.0%認められた。痛みがBLには38.7%であり、脚の痺れ痛みが67.6%と高かった。 薬物療法は抗てんかん剤の有効性が高く、よりALで有効性がみられた。症状に応じた治療方法の選択は、未だ海外研究でも示されておらず、本研究の意味は非常に大きいと考えられた。
ガイドライン等の開発
症状に応じた治療法の選択にあたり、脊髄障害性疼痛症候群の取り込み基準およびグレード分類を作成し、患者の臨床症状と治療効果に関する特徴を調査した。患者数が調査人口の0.15%と非常に少ない上に、症状が多彩であることが明らかにされており、脊髄障害性疼痛の痛みが障害高位にみられるものについては、抗てんかん剤が有効であることは分かったものの、その他の症状へどの様な対応をするべきかといった総括的なガイドラインの作成については、患者グループをまとめた上での前向き研究が今後必要と考えられた。
その他行政的観点からの成果
今回の調査により、有効性が乏しい非ステロイド性抗炎症薬が疼痛緩和の目的で多く使われていること、その一方で抗てんかん剤の有効性が高いことが明らかとなった。適応がない薬剤も含めて抗てんかん剤の有効性が高いことについては、さらなる調査を行い、保険適応の取得など行政的に対応策を講じていく必要がある。先ずは、この結果を広く知らしめていくことで貢献していく必要があるものと考えられた。
その他のインパクト
本研究の成果については、現在論文を作成中であり、同時にNPO法人いたみ医学研究情報センターのホームページや市民セミナーを通じて周知していく予定である。更に、現在日本脊髄基金および全国脊髄損傷後疼痛患者の会などと協力して、より患者の症状にあった治療法の選択のためのデータベース作成を進めていこうとしているところである。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
55件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
20件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakamura M, Tsuji O, Iwanami A, et al.
Central neuropathic pain after surgical resection in patients with spinal intramedullary tumor.
J Orthop Sci.  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128151Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,829,538円
人件費・謝金 1,732,689円
旅費 918,555円
その他 519,218円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-