骨系統疾患における新規CNP治療に対する有効症例鑑別診断法の確立

文献情報

文献番号
201128150A
報告書区分
総括
研究課題名
骨系統疾患における新規CNP治療に対する有効症例鑑別診断法の確立
課題番号
H22-難治・一般-191
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 一和(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
  • 八十田 明宏(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科 )
  • 伊藤 達也(京都大学医学部附属病院 探索医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患(Skeletal dysplasia)は骨・軟骨の成長障害をきたす先天性疾患の総称であり、著明な低身長や四肢短縮などによる著しい日常生活の支障をきたすが、現在、有効な薬物治療は確立されていない。申請者らはC 型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が極めて強力な骨伸長促進作用を持つことを発見し、骨系統疾患の代表的疾患である軟骨無形成症(Achondroplasia)のモデルマウスに対して劇的な治療効果を示すことを証明した。今後、軟骨無形成症に対するCNP の臨床応用が期待されるとともに、軟骨無形成症以外の骨系統疾患に対する展開研究が期待されるが、その有効性は確立されていない。本研究において、400種類以上と数多く存在する軟骨無形成症以外の骨系統疾患におけるCNP治療有効症例の把握を、前臨床研究や疾患特異的iPS細胞を用いた解析と併せて総合的におこなった。
研究方法
前年度に引き続き、軟骨特異的CNPあるいはGC-Bノックアウトマウスの解析をおこなった。骨系統疾患のモデルマウスとしてムコ多糖症モデルマウスを用いて、器官培養における添加実験や、CNP投与モデルとしての血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験をおこない、CNPの効果を検討した。また、疾患特異的iPS細胞の樹立を試みた。
結果と考察
軟骨特異的CNPあるいはGC-Bノックアウトマウスにおいて、CNPあるいはGC-Bの全身ノックアウトマウスとほぼ同程度の骨伸長障害が確認された。このことから、軟骨局所におけるCNP/GC-B系の作用が生理的な骨伸長に重要であることが明らかとなった。
骨系統疾患のモデルマウスを用いたCNP/GC-B系賦活化の有効性の検討としては、ムコ多糖症7型(Sly症候群)のモデルマウスを用いて、まず器官培養におけるCNP添加の伸長促進作用を確認した。さらに、血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験によって、その骨伸長障害が改善することを証明して、同疾患に対してCNP/GC-B系賦活化治療が有効である可能性を示した。
ヒトiPS細胞を用いた検討では、軟骨無形成症患者より採取した皮膚の細胞からiPS細胞の樹立に成功した。
結論
CNP/GC-B系の賦活化治療の、骨系統疾患に対する適応拡大のための展開研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201128150B
報告書区分
総合
研究課題名
骨系統疾患における新規CNP治療に対する有効症例鑑別診断法の確立
課題番号
H22-難治・一般-191
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 一和(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
  • 八十田 明宏(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科)
  • 伊藤 達也(京都大学医学部附属病院 探索医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患は骨・軟骨の成長障害をきたす先天性疾患の総称であり、著明な低身長や四肢短縮などによる著しい日常生活の支障をきたすが、現在、有効な薬物治療は確立されていない。申請者らはC 型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が極めて強力な骨伸長促進作用を持つことを発見し、骨系統疾患の代表的疾患である軟骨無形成症のモデルマウスに対して劇的な治療効果を示すことを証明した。しかし、軟骨無形成症以外の骨系統疾患に対する有効性は確立されていない。本研究において、400種類以上と数多く存在する軟骨無形成症以外の骨系統疾患に対するCNP/GC-B系賦活化治療の有効性を、前臨床研究や疾患特異的iPS細胞を用いた解析と併せて総合的におこなった。
研究方法
まず、CNP/GC-B系の骨伸長促進作用に関する生理的なメカニズムを解明するために軟骨特異的CNPあるいはGC-Bノックアウトマウスを作製し、その表現型を解析した。さらに、骨系統疾患のモデルマウスとしてGDF-5変異マウスやムコ多糖症モデルマウスを用いて、器官培養における添加実験や、CNP投与モデルとしての血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験をおこない、CNPの効果を検討した。
結果と考察
軟骨特異的CNPあるいはGC-Bノックアウトマウスにおいて、CNPあるいはGC-Bの全身ノックアウトマウスとほぼ同程度の骨伸長障害が確認された。このことから、軟骨局所におけるCNP/GC-B系の作用が生理的な骨伸長に重要であることが明らかとなった。
骨系統疾患のモデルマウスを用いたCNP/GC-B系賦活化の有効性の検討としては、GDF-5変異マウスの胎仔脛骨器官培養に対するCNPの伸長促進作用を証明して、CNP/GC-B系の賦活化治療がGDF-5変異による骨系統疾患に対して有効である可能性を示した。また、ムコ多糖症7型のモデルマウスと血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験によりその骨伸長障害が改善することを証明して、同疾患に対してCNP/GC-B系賦活化治療が有効である可能性を示した。
ヒトiPS細胞を用いた検討では、軟骨への分化誘導系を確立した。さらに、軟骨無形成症患者より採取した皮膚の細胞からiPS細胞の樹立に成功した。
結論
CNP/GC-B系の賦活化治療の、骨系統疾患に対する適応拡大のための展開研究をおこなった。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128150C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新たな骨伸長促進系であるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)およびその受容体グアニル酸シクラーゼ−B(GC-B)系の内軟骨性骨化における作用を、組織特異的CNPあるいはGC-B欠損マウスの作製と解析をとおして検討した。軟骨特異的CNPあるいはGC-B欠損マウスでは著明な骨伸長障害が認められ、軟骨局所におけるCNP/GC-B系のautocrine/paracrine作用により生理的な内軟骨性骨化の促進による骨伸長がおこることが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
骨伸長障害を惹起する骨系統疾患に対するCNP/GC-B系賦活化の効果を検討するために疾患モデルマウスを用いた検討をおこなった。すでに軟骨無形成症のモデルマウスに対するCNP投与の有効性を確認しているが、今回ムコ多糖症7型モデルマウスにおける骨伸長障害に対する効果を、血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験により検討した。その結果、ムコ多糖症7型モデルマウスの骨伸長障害は改善し、CNP療法が有効である可能性が示された。
ガイドライン等の開発
骨系統疾患のなかにGC-Bの機能喪失型変異が原因であるマロトー型遠位中間肢異形成症(acromesomelic dysplasia type Maroteaux)が存在するが、この疾患のようにGC-Bより下流のシグナル伝達系の変異を原因とする疾患に対してはCNP療法に対する抵抗性が予想される。今後CNP/GC-B系賦活化療法の開発とともに、治療抵抗疾患の鑑別のためのガイドラインの作成が必要である。
その他行政的観点からの成果
おこなわれた研究の成果について、国際内分泌学会(2010年、第14回、京都)や日本内分泌学会学術集会(2011年、第84回、神戸)におけるシンポジウムにて発表したのをはじめ、2010~2011年に日本内分泌学会、日本骨代謝学会等において多くの発表をおこなった。
その他のインパクト
軟骨無形成症に対するCNP療法の可能性について、発表時(2004年)各新聞で取り上げられた。現在は軟骨無形成症の患者会「つくしんぼ」を通して研究結果の進捗などについての情報を発信している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yasoda A, Nakao K.
Genetic basis for skeletal disease. CNP therapy for achondroplasia.
Clin Calcium. , 20 , 1212-1218  (2010)
原著論文2
Fujii T, Komatsu Y, Yasoda A, Kondo E,et al
Circulating C-type natriuretic peptide (CNP) rescues chondrodysplastic CNP knockout mice from their impaired skeletal growth and early death.
Endocrinology , 151 , 4381-4388  (2010)
原著論文3
Yasoda A, Nakao K.
Translational research of C-type natriuretic peptide (CNP) into skeletal dysplasias.
Endocr J. , 57 , 659-666  (2010)
原著論文4
Kondo E, Yasoda A, Tsuji T, Fujii T, et al
Skeletal Analysis of the Long Bone Abnormality (lbab/lbab) Mouse, A Novel Chondrodysplastic C-Type Natriuretic Peptide Mutant.
Calcif Tissue Int. , 90 , 307-318  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128150Z