文献情報
文献番号
201128123A
報告書区分
総括
研究課題名
Alagille症候群など遺伝性胆汁うっ滞性疾患の診断ガイドライン作成、実態調査並びに生体資料のバンク化
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-163
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
須磨崎 亮(筑波大学 医学医療系小児科)
研究分担者(所属機関)
- 瀧本 哲也(国立成育医療センター臨床研究センター臨床研究推進室)
- 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター)
- 木村 昭彦(久留米大学医学部小児科学講座)
- 田澤 雄作(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター小児科)
- 乾 あやの(済生会横浜市東部病院小児科)
- 鹿毛 政義(久留米大学病院病理部)
- 村山 圭(千葉県こども病院代謝科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Alagille症候群の全国調査を実施し、本症患者の抱える問題点を明確にする。また得られた臨床データと本症及び類縁疾患に関する分担研究の成果をまとめて、遺伝性胆汁うっ滞症の診療支援のためのWebサイトを公開する。
研究方法
外科施設121施設を対象に全国二次調査を追加し、さらに大きな侵襲を伴う肝移植や心臓手術と重大な合併症である脳出血に焦点を絞った三次調査を行った。本研究班員が原稿を執筆し、関連学会で内容を精査・改変し、学会のホームページにWebサイトを公開した。
結果と考察
全国調査により、Alagille症候群患者92例の詳細な臨床データが蓄積された。症状別にみると、肝胆道系異常95%、心奇形89%うち肺動脈狭窄74%、骨格系異常52%とつづき、合併症として成長障害49%、発達遅滞26%であった。成長障害では-2SD未満の割合が身長で45%、体重は21%におよび、ことに男児は女児に比べ-3SD以下の低身長が多かった。侵襲的治療では、肝移植が24%、心臓手術が4%、カテーテル治療が9%、脳外科手術が2%、葛西手術が8%に行われていた。本調査の肝移植率と日本肝移植研究会の登録数を合わせると、Alagille症候群患者の患者数は279例と算出された。肝移植の適応としては、肝不全と共に、強い掻痒感や成長障害を挙げた例が多かった。特筆すべきは葛西手術後、71%で肝移植に至っており、胆道閉鎖症を伴うAlagille症候群に対する葛西手術は効果が乏しい事が確認された。心疾患についてはカテーテル治療が多用され、治療後にも心不全を残す例があるなど重症度は多様であった。米国に比べて頭蓋内出血の症例は少なく、大部分が乳児期のビタミンK欠乏性出血症が原因となっており、欧米で問題になっている脳血管奇形による脳出血の報告はみられなかった。診療支援サイト「乳児黄疸ネット」は日本小児栄養消化器肝臓学会のホームページ上に公開された。代表的な検索エンジンでも上位に表示され、月間約800回の検索数に達している。
結論
わが国における過去20年間のAlagille症候群患者数は279名と推計された。本症患者の多くが肝移植、心臓手術など大きな侵襲を伴う治療を受けており、長期予後では、約半数で成長障害や発達障害など包括的な支援が必要な問題を抱えている。遺伝性胆汁うっ滞症の診療支援サイト「乳児黄疸ネット」を作成・公開し、活用されていることが確認された。今後、適正な診療方針の普及に伴って、本症患者の予後が改善する事が期待される。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
-