文献情報
文献番号
201128093A
報告書区分
総括
研究課題名
レット症候群の診断と予防・治療法確立のための臨床および生物科学の集学的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-133
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 雅之(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第2部)
研究分担者(所属機関)
- 松石豊次郎(久留米大学医学部)
- 栗政 明弘(鳥取大学大学院医学系研究科)
- 堀家 慎一(金沢大学フロンティアサイエンス機構)
- 田中 輝幸(東京大学大学院医学系研究科)
- 白川 哲夫(日本大学歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、レット症候群(RTT)の臨床実態調査をし、生体試料の収集と研究基盤の構築、独自開発したモデルマウスの分子生物学的研究を行なう。1.全国疫学調査から実態把握による診断手引きを作成する。診断、治療の生物マーカーの探求を行なう。2.Mecp2発現制御マウスを作製、解析する。Mecp2欠損マウスの呼吸、睡眠の解明を行う。また、Cdkl5の分子病態およびその欠損マウスの解析を行う。3.MECP2が関与するエピゲノム機構の研究を行い、RTTの複雑な分子病態を解明する。
研究方法
母集団(2,918施設)から層化無作為抽出1,020施設を対象に患者数を尋ねた。個々の患者の実態把握のための二次調査を行なった。同意を得られた患者検体を用いて、グレリンをRIA法により症状との関連性を調べた。Mecp2欠損マウスのiPS細胞を作製した。MECP2のMBD変異と症状の重症度との関連性を検討した。15q11-q13 領域上のFISHプローブを作製し、SH-SY5Y細胞の核内配置を調べた。新規Mecp2マウスを作製した。CDKL5に対する相互作用スクリーニングを行った。また、Cdkl5欠損マウスを作製した。Mecp2欠損マウスの呼吸波形を測定・記録した。また抗VMAT2抗体による免疫組織化学的解析を行い、DMV、NST、VRGで評価した。
結果と考察
有効回答は677施設(66.4%)で、RTTの患者数は569名であった。推計患者数は1011人(95%信頼区間778から1244人)であった。患者分布の地域差が大きいことが分かった。27症例のRTT患者の血中GRLが低値であることをみつけた。iPS細胞を単離した。MECP2のMBD変異による症状の重症度との相関を見出した。GABA受容体遺伝子近傍で特異的に相同染色体のペアリングを認めた。新規発現制御Mecp2遺伝子改変マウスを作製した。CDKL5 N末端側キナーゼ領域で19個、C末端側で2個の相互作用蛋白候補を同定した。また、cdkl5 欠損マウスを作製した。Mecp2欠損マウスでは、著明な無呼吸回数の増加がみられた。VMAT2免疫組織化学的解析では、puncta数の著しい減少がみられた。
結論
全国のRTTの推計患者数は1011人(95%信頼区間778から1244人)であった。Mecp2欠損マウスの研究は、RTTの自律神経系の障害を再現し、病態理解と治療戦略の重要である。さらに、Mecp2欠損マウスのES細胞、iPS細胞の樹立、Cdkl5欠損マウス、Mecp2の発現制御マウスの完成は今後の展開が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2013-03-12
更新日
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