文献情報
文献番号
201128089A
報告書区分
総括
研究課題名
小児神経伝達物質病の診断基準の作成と新しい治療法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-129
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
新宅 治夫(大阪市立大学 大学院医学研究科発達小児医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 瀬川 昌也(瀬川小児神経学クリニック)
- 加藤 光広(山形大学 医学部 小児科)
- 齋藤 伸治(名古屋市立大学 医学部 小児科)
- 浜野 晋一郎(埼玉県立小児医療センター 神経科)
- 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 神経内科)
- 遠山 潤(国立病院機構西新潟中央病院 小児科)
- 夏目 淳(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)
- 服部 英司(大阪市立大学大学院医学研究科 発達小児医学分野)
- 前垣 義弘(鳥取大学医学部脳神経小児科)
- 松石 豊次郎(久留米大学医学部 小児科)
- 井手 秀平(東京都立東部療育センター)
- 藤岡 弘季(大阪市立大学大学院医学研究科 発達小児医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,818,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
小児神経伝達物質病は、中枢神経系に症状があり小児神経疾患として取り扱われているが、病因は神経伝達物質の代謝異常症であり早期に適切な診断と治療が必要である。本研究の目的は、このような小児神経伝達物質病患者を発見し、診断し、治療するために、新しい診断法の作成と治療法の開発を行うことである。
研究方法
平成23年度は、新しい患者の発見のために重症心身症施設で診断不明の症例について診断基準に基づくスクリーニング検査を行い、小児神経伝達物質病の鑑別診断を行った。
結果と考察
瀬川病、セピアプテリン還元酵素欠損症、チロシン水酸化酵素欠損症の診断基準の作成を通じて、脳の発達に重要な役割を有する脳幹・中脳アミン系刺激伝達物質の生成に、発達早期に関与する代謝系の異常による刺激伝達物質の欠損がいかなる特異性を研究し、黒質線条体ドパミン・ニューロンには、終末部THの活性により刺激伝達を行うものと、黒質TH活性により刺激伝達を行うものの二種があり、前者は乳幼小児期の刺激伝達の主役をなすが、後者は10歳以後特に思春期20歳代でその役を受け持つことが示唆された。シナップスでの情報伝達を担う神経伝達物質の異常による疾患であるが、胎児期や乳幼児期のニューロンがシナプスを形成してネットワークを構成する際に神経伝達物質の異常が起こると、小児の神経発達に重大な異常が発生すると考えられる。この意味ですでにネットワークができあがった後の成人の神経伝達物質病であるパーキンソン病、うつ病などと病態が異なり、臨床症状や治療法が異なることが予測された。今後これらの神経伝達物質病について引きつづき病態の解明を勧め、新しい診断法・治療法の開発を行っていく必要があると考えられた。
結論
これまであまり研究されてこなかった超希少疾患において、新たな診断基準を作成し、診断法の開発に努めた結果、診断が難しく見過ごされていた神経伝達物質の異常による患者が新たに診断され、適切な診療が行われるようになった。さらに小児神経伝達物質病のシンポジウムを開催し、新しい患者の発見や診断法や治療方の開発状況などを患者家族に情報適用していくことを通じて患者家族の不安を解消し希望をあたえた。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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