ウエルナー症候群の病態把握、治療指針作成と新規治療法の開発を目的とした全国研究

文献情報

文献番号
201128068A
報告書区分
総括
研究課題名
ウエルナー症候群の病態把握、治療指針作成と新規治療法の開発を目的とした全国研究
課題番号
H22-難治・一般-107
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 雅彦(医療法人社団 みゆき会病院)
  • 森 聖二郎(東京都健康長寿医療センター臨床研究推進センター)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科発育)
  • 三木 哲郎(愛媛大学大学院・プロテオ医学 研究センター)
  • 吉本 信也(昭和大学医学部・形成外科)
  • 嶋本 顕(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・再生医学)
  • 田中 康仁(奈良県立医科大学・整形外科)
  • 竹本 稔(千葉大学附属病院・糖尿病・代謝・内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウエルナー症候群(Werner syndrome:WS)は我が国に多い代表的遺伝性早老症である。1984年に厚生省特定疾患ホルモン受容体機構調査研究班(尾形悦郎班長)による本疾患の診断の手引きが作成されたが、それ以降は、我が国におけるWSの現状は把握されておらず、さらに近年の基礎的、臨床的な進歩が必ずしもWSの診断、治療に反映されていない。こういった状況を受け、厚生省難治性疾患研究事業の一環として、WSの診断基準の改訂と世界初の診療指針作成を本研究の目的とした。
研究方法
フィージビリティ・スタディとして施行した平成21年度のアンケート調査(200症以上の病院の診療科、6921通)にて明らかとなったWS 396症例(303施設)に対して臨床症状の詳細調査をアンケート形式で各施設に郵送し、その結果を基に診断基準の改訂を行った。
結果と考察
303通のアンケートを全国へ発送し、202通(53%)、196症例の回答を得ることができた。そこで、アンケート調査の臨床所見を基に診断基準を改訂した。主な改訂点は、①これまでの臨床所見のうち陽性率90%以上の所見を主要徴候としたこと、②日常診療で簡便に評価可能かつWSに感度、特異度の高いアキレス腱の石灰化を診断基準に加えたこと、③尿中ヒアルロン酸増加といった明確な評価基準がない項目を省いたこと、④さらに旧診断基準作成時には明らかではなかったWS遺伝子変異を診断基準に加えたことである。またこれまでの多くの治療経験をまとめることにより、世界初のWSの診療指針を作成した。さらに社会活動の一環として患者会の運営、開催にも携わり、平成23年2月にはWSの基礎、臨床の最前線で活躍の医師、研究者をワシントン大学も含めて国内外から招集し研究会を開催した。これらの研究、活動を今後も継続することにより、我が国に頻度が高いWS患者の生活の質の向上や予後の改善に大きく貢献することが期待される。
結論
今回の研究によりWSの診断基準を改訂し、世界初の診療指針を作成することができた。さらに現在、ウェルナ‐iPS細胞を確立し、疾患の根本的な原因解明へ向けた取り組みにも着手している。今後も本研究によって得られる最新知見を患者へと還元しつつ、患者の新しいニーズを発掘し、WSの予後・QOL改善、そして根治療法の確立へ向け、着実に歩みを進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128068B
報告書区分
総合
研究課題名
ウエルナー症候群の病態把握、治療指針作成と新規治療法の開発を目的とした全国研究
課題番号
H22-難治・一般-107
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
横手 幸太郎(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 雅彦(医療法人社団みゆき会病院)
  • 森 聖二郎(東京都健康長寿医療センター臨床研究推進センター)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科発育・加齢医学講座)
  • 三木 哲郎(愛媛大学大学院・プロテオ医学 研究センター)
  • 吉本 信也(昭和大学医学部・形成外科)
  • 嶋本 顕(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・再生医学)
  • 田中 康仁(奈良県立医科大学・整形外科)
  • 竹本 稔(千葉大学附属病院・糖尿病・代謝・内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウエルナー症候群(Werner syndrome:WS)は我が国に多い代表的遺伝性早老症である。1984年に厚生省特定疾患ホルモン受容体機構調査研究班(尾形悦郎班長)による本疾患の診断の手引きが作成されたが、それ以降は、我が国におけるWSの現状は把握されておらず、さらに近年の基礎的、臨床的な進歩が必ずしもWSの診断、治療に反映されていない。こういった状況を受け、厚生省難治性疾患研究事業の一環として、WSの診断基準の改訂と世界初の診療指針作成を本研究の目的とした。
研究方法
フィージビリティ・スタディとして施行した平成21年度のアンケート調査にて明らかとなったWS 396症例(303施設)に対して臨床症状の詳細調査をアンケート形式で各施設に郵送し、196症例の臨床症状に関する情報を得ることができた。この情報を基に詳細な検討を行った。
結果と考察
今回の196症例の臨床所見を解析することにより、改めてWSでは糖尿病、脂質代謝異常を高率に合併することや、それに伴い心血管障害等を高率に合併していることが明らかにした。その一方高血圧や脳卒中に関しては50歳代の我が国の一般人口に比較して少ないという特徴も明らかにとなった (Okabe et al. J Am Geriatr Soc. 2012)。さらにWSに合併する悪性腫瘍の特徴も明らかにすることができた(Onishi et al Submitted)。26年振りに診断基準を改訂した (Takemoto et al. Geriatr Gerontol Int. in press)。加えてこれまでの診療経験に基づき世界初の診療指針も作成し、Web上からダウンロードできるようにした。WS患者の治療経験がない医師の診療の一助になることが期待される。また社会活動の一環として本症候群の患者・家族会設立を支援し、その運営、開催にも携った。平成23年2月にはWSの基礎、臨床の最前線で活躍中の医師、研究者を国内外から招集し、研究会と同時にWS患者・家族会を開催、医師、研究者のみならずWS患者、家族の間でWSに関する意見交換を行った。
結論
WSの診断基準を改訂し、世界初の診療指針を作成することができた。今後も本研究によって得られる最新知見を患者へと還元しつつ、患者の新しいニーズを発掘し、WSの予後・QOL改善、そして根治療法の確立へ向け、着実に歩みを進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128068C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ウェルナー症候群(Werner syndrome:WS)は我が国に多い代表的遺伝性早老症である。
本研究では全国6921通のアンケート調査を行い、WSを新たに396症例把握し、196症例の詳細な臨床所見を基に患者データベースのデータベースを作成した。このデータベースは今後もWS研究の基盤となるであろう。また、革新的診断・治療法の開発へ向けた患者iPS細胞の樹立研究も開始することができた。

臨床的観点からの成果
196症例の臨床所見を基にWSの診断基準を改訂した。(Geriatr Gerontol Int. 2013 ;13:475-81)新しい診断基準には、何処の施設でも簡便に行うことができ、しかもWSに感度、特異度の高いアキレス腱の石灰化を取り入れた。この診断基準を用いることにより、簡便により早期にWSが診断できることが期待される。またこれまでの臨床経験を基に世界初の診療指針も作成した。さらに、患者・家族会の立ち上げにも携わる等、WS患者の社会的サポートに関しても活動を行った。

ガイドライン等の開発
これまでの多くの医師の経験や文献的考察を基に世界初のWS診療指針を作成した。(http://www.m.chiba-u.jp/class/clin-cellbiol/werner/index.html)糖代謝、脂質異常症に対する治療指針、難知性潰瘍の内科的、外科的な治療法等が記載されており、今後は診療する医師の経験に左右されることなく、WS患者にとって最善かつ最も効率のよい治療を受けられるようになることが期待される。
その他行政的観点からの成果
なし。
その他のインパクト
共同通信社取材(下記の新聞掲載)
2011年 福島民報・徳島新聞・宮崎日日新聞・佐賀新聞・高知新聞・下野新聞・千葉日報・京都新聞・山陰中央新報・岐阜新聞・佐賀新聞・岩手日報・山陽新聞、2012年 東奥日報・琉球新聞・日本海新聞・千葉日報・高知新聞・岐阜新聞・神戸新聞,2013年 読売新聞
2012年2月19日 研究報告会「遺伝性早老症ウェルナ‐症候群のこれまでの研究の歩みとこれからの展望」開催
2012年2月21日 NHK首都圏ネットワークにて放映

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
11件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
・患者・家族の会設立支援 ・ホームページ:http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/clin-cellbiol/werner/index.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takemoto M, Mori S, Kuzuya M, et al.
Diagnostic criteria for Werner syndrome based on Japanese nationwide epidemiological survey.
Geriatric Gerontology International , 13 , 475-481  (2013)
doi:10.1111/j.1447-0594.2012.00913.x
原著論文2
Okabe E, Takemoto M, Onishi S, et al.
Incidence and characteristics of metabolic disorders and vascular complications in individuals with Werner syndrome in Japan.
Journal of the American Geriatrics Society , 60 , 997-998  (2012)
doi:10.1111/j.1532-5415.
原著論文3
Onishi S, Takemoto M, Ishikawa T, et al.
Japanese diabetic patients with Werner syndrome exhibit high incidence of cancer.
Acta Diabetol , 49 , 259-260  (2012)
doi:10.1007/s00592-012-0424-z.
原著論文4
Kitamoto T, Takemoto M, Fujimoto M,et al.
Sitagliptin successfully ameliorates glycemic control in werner syndrome with diabetes.
Diabetes Care , 35 (12) , e83-  (2012)
doi:10.2337/dc12-1179.
原著論文5
Watanabe K, Kobayashi K, Takemoto M, et al.
Sitagliptin Improves Postprandial Hyperglycemia by Inhibiting Glucagon Secretion in Werner Syndrom With Diabetes.
Diabetes Care , 36 (8) , e119-  (2013)
doi:10.2337/dc13-0709

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201128068Z