難治性川崎病の治療ガイドライン作成

文献情報

文献番号
201128043A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性川崎病の治療ガイドライン作成
課題番号
H22-難治・一般-082
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐地 勉(東邦大学医学部)
  • 浜岡 建城(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 小川 俊一(日本医科大学医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学医学部)
  • 服部 成介(北里大学薬学部)
  • 阿部 淳(国立成育医療研究センター研究所)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター病院)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
初回IVIG療法に不応な症例を難治性川崎病(Refractory Kawasaki Disease:rKD)と定義して、rKDの定義と実態、早期診断方法を確立、rKDの標準的治療ガイドラインを作成に必要なエビデンス、rKDの後遺症としての成人期急性冠症候群の実態を明らかにすることを目的とした。
研究方法
免疫グロブリン(IVIG)不応例、KD冠動脈障害(CAL)に合併する血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の実態、成人期急性冠症候群の実態、rKDに対するInfliximab (IFX)使用実態についてアンケート調査を行った。IVIG療法前後の血漿中サイトカインおよびバイオマーカーのPRV-1蛋白を定量した。
結果と考察
rKDの定義と治療の実態調査では、IVIG不応例の頻度が16.5%であった。IVIG不応例の判断時点はIVIG終了後24時間後が263施設(53.7%)で最も多く、この基準を採用するのが無難である。KD合併CAL内血栓塞栓症に対する血栓溶解療法の実態調査では、21症例存在。AMIのない浮遊血栓に対してはDIVが、AMI症例に対してはDIVとICTの併用療法またはICT療法が推奨される。ロキナーゼとtPAでの効果の差はない。副作用がなかったことは重要。成人期急性冠症候群の実態調査では、10年間に63例(男女比47/16)の報告があった。看過されている患者はさらに多いだろう。rKDのバイオマーカーの検討では、sTNFR-1とPRV-1のの2項目を用いて治療反応性スコアを計算する予測式を作成し、感度81.3%、特異度78.3%。rKDに対するIFX使用実態調査では、IFX使用例は68例。IFXの解熱効果は約8割、10病日未満に使用されれば冠動脈瘤の出現頻度が低い。重大な副作用はない。
結論
KD初回IVIG不応の判断時点はIVIG終了24時間後とする。KDのCAL血栓溶解療法では、AMIのない浮遊血栓に対してはDIVが、AMI症例に対してはDIVとICTの併用療法またはICT療法が推奨される。PRV-1とsTNFR-1の組合せで、IVIG反応性予測を、良好な感度と特異度で予測できることが分かった。rKDに対するIFXに大きな副作用はなく、解熱等の効果は80%以上である。IFX使用指針案を提案した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201128043B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性川崎病の治療ガイドライン作成
課題番号
H22-難治・一般-082
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐地 勉(東邦大学医学部)
  • 浜岡 建城(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 小川 俊一(日本医科大学医学部)
  • 中村 好一(自治医科大学医学部)
  • 服部 成介(北里大学薬学部)
  • 阿部 淳(国立成育医療研究センター研究所)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター病院)
  • 坂本 なほ子(国立成育医療研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
初回免疫グロブリンIVIG療法に不応な症例を難治性川崎病(Refractory Kawasaki Disease:rKD)と定義して、rKDの定義し、治療ガイドライン作成のためエビフデンスを得るためことを目的とした。
研究方法
1)全国に医療機関での初回IVIG不応の判断基準、頻度、rKDに対する追加治療など、KDの冠動脈障害における血栓溶解療法、急性期rKDに対するインフリキシマブ(IFX)、KD既往成人の急性冠症候群の発症についてアンケート調査を行った。2)サイトカインなどを測定しIVIG不応、CAL危険性の予想について検討した。3)抗血小板療法の効果モニタリング法としてトロンボキサンB2の有用性を検討した。4)小児冠動脈内径標準値作成目的で、全国の病院から正常小児冠動脈内径の収集を行った。
結果と考察
1)不応の判断時点でIVIG終了24時間後とする。KDの冠動脈障害における血栓溶解療法では、AMIを伴っていない浮遊血栓に対しては全身投与療法(DIV)が、また、AMI症例に対してはDIVと冠動脈内投与法(ICT)の併用療法またはICTが推奨される。IFXに対する大きな副作用はなく、解熱等の効果は80%以上であった。しかし、生後6ヶ月以内乳児にも使用されており、使用指針案を呈示した。11年間に63例のKD既往成人に冠症候群がみられた。今後のさらなる検討が必須である。2)PRV-1とsTNFR-1の組合せで、IVIG反応性とCAL合併予測を、良好な感度と特異度で予測できることがわかった。抗血小板療法効果のモニタリングにトロンボキサンB測定が有用であることが判明した。この方法はワーファリンにおけるPT-INRと同じような地位を占める可能性があるとともに、患者に服用コンプライアンス向上に貢献するだろう。4,000以上の値を収集し、日本での正常小児冠動脈内径標準を作成でき、Z値で患者冠動脈径を表現できるようにした。今後、冠動脈拡大/瘤の新しい診断基準を作成する必要がある。
結論
本研究班では、rKDに対するIFX使用指針案、CALにおける血栓溶解療法、抗血小板療法効果に対するモニタリング方法、IVIG不応、CAL合併の予測可能式を提案した。また新しい正常小児冠動脈内径標準を作成した。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 研究目的の成果
 難治性川崎病に対する治療のエビデンスとして、1)インフリキシマブ治療に生命に関わる副作用のないこと、効果が約80%であること、2)冠動脈病変に合併した冠動脈内血栓症に対する血栓溶解療法の安全性とその治療法について明らかにした。
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 これらの成果は世界的に初めての報告であり、その意義は大きい。特に冠動脈内血栓療法は生命に関わる治療のため、さらにその意義は大きい。
臨床的観点からの成果
(1) 研究目的の成果
 難治性川崎病に対するインフリキシマブ療法の効果とその現状を明らかにし、効果が約80%であることを示し、かつ、大きな副作用のないことも明らかになり、臨床現場に有用な情報を提供できた。
(2) 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 川崎病における免疫グロブリンに対する反応性(不応性)、冠動脈合併症の危険性を予測する方法を臨床症状でなく、PRV-1、sTNFR-1の値を代入した計算式から可能にしたことは、学術的に大きなインパクトを与えた。
ガイドライン等の開発
川崎病に対するインフリキシマブ使用における指針案を報告書に明示した。かつ、小児科雑誌にも記載した。適応は初回免疫グロブリン不応例であること、第10病日以内の使用の推奨、特に投与時年齢、投与前の感染症チェック、予防接種との関係(生ワクチン接種1ヶ月以上経過していること)、インフォームドコンセントの重要性を強調した。
その他行政的観点からの成果
特に、審議会資料、予算要求策の基礎資料となったことはない。ただ、インフリキシマブの難治性川崎病への保険適応に向けた治験が開始されつつある。
その他のインパクト
正常小児冠動脈内径の標準を作成した。今まで小児冠動脈内径の正常値はなく、冠動脈拡大の診断は内径の絶対値で診断されていた。約4000件のデータを収集し、小児は成長するため各年齢毎、各冠動脈部位毎の正常値(平均値)を求め、Z値で患者冠動脈径を評価することを可能にした。この収集数での標準化は世界的にも初めてであり、大きなインパクトを持つ。近々、HPにZ値の計算式を掲載する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
1)川崎病におけるインフリキシマブ使用における指針案 2)川崎病に対するインフリキシマブの製薬会社主導治験の開始
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fuse S, Kobayashi T, Saji T, et al
Standard method for ultrasound imaging of coronary artery in children.
Ped Int. , 52 , 876-882  (2010)
原著論文2
Shunichi Ogawa(JCS Working Group)
Guidelines for Diagnosis and management of Cardiovascular Sequelaein Kawasaki Disease.
Cric J , 74 (9) , 1989-2020  (2010)
原著論文3
Taakahashi K, Oharaseki T, Saji T, et al
Mizoribin provides effective treatment of sequential change of arteritis and reduction of inflammatory cytokines and chemokines in an animal model of Kawasaki disease.
Pediatoric Pherumatology , 9 , 30-  (2011)
原著論文4
Nakamura Y, Yashiro M, Uehara R, et al
Epidemiologic features of Kawasaki deisease in Japan: results from the nationwide survey in 2007-2008.
J Epidemiol , 20 , 302-307  (2010)
原著論文5
原里程、屋代真弓、中村好一、他
川崎病容疑例(教義の不全型)の疫学的特徴
日本小児科学会雑誌 , 114 , 497-502  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128043Z