文献情報
文献番号
201128029A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性腸管吸収機能障害Microscopic colitisに関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-068
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 守(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 平田 一郎(藤田保健衛生大学 医学部)
- 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院)
- 三浦総一郎(防衛医科大学校)
- 田中 正則(弘前市立病院)
- 緒方 晴彦(慶應義塾大学 医学部)
- 松本 主之(九州大学大学院)
- 清水 誠治(大阪鉄道病院)
- 土屋輝一郎(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
- 岡本 隆一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班は難治性腸管吸収機能障害Microscopic Colitis(以下MC)に対し、1)わが国における全国規模の実態調査を行い、これを通じてわが国独自の疾患概念の確立を行うこと、2)同概念に立脚したわが国独自の診断・治療指針を策定すること、3)病態解明研究の遂行とこれを基盤とした新規治療法開発を行うこと、を目的とした。
研究方法
前年度より継続実施したMCに関する全国実態調査の集計及び分析を行うとともに、重症例に焦点を当て、臨床的特徴の解析を行った。更に病因究明を目指した基礎研究プロジェクトを企画・立案し、本疾患の本質的病因と考えられる腸管上皮細胞の機能的異常の解析に必須となる、腸管上皮の初代培養系を用いた機能解析、及び疾患動物モデルの確立に取り組んだ。
結果と考察
全国調査の解析から、MCには難治・重症例が存在し、特に若年女性における発症例に於いて既存治療に抵抗性の経過を辿る可能性があることを新たな知見として明らかにした。さらにMCは疾患概念・診断基準の統一がされておらず、他疾患との鑑別において難渋する例が少なからず存在すること、薬剤そのものも原因となるにも拘わらず、MCには明確で統一した治療指針が存在しない事、 小腸病変を伴う本邦独自の疾患カテゴリーが存在する可能性があること、が改めて確認された。本邦における上記実態を踏まえ、本研究班ではわが国初のMC病理診断基準(案)、及び治療指針(案)を策定し、提示した。基礎研究プロジェクトに於いては3年に及ぶ条件検討の結果、マウス及びヒト腸管上皮の長期初代培養に成功した。これら培養がわずか1個の生検検体からほぼ無限に培養継続・長期保存が可能であるのみならず、正常腸管組織から採取した際には腸管上皮特異的な吸収・分泌機能を保持していることを確認した。これら技術は本症の病態解明の切り札となるものであり、既に本技術を応用した腸疾患患者を対象とした疾患解析を進めている。
結論
本研究により、我が国MCの実態が明らかとなったのみならず、我が国初のMC診断・治療指針(案)を策定した。我が国独自の疾患像を呈するMCは、今後も継続的な調査研究活動を行うと同時に、病因究明を目指した基礎研究を強力に推進する事が必要であり、これにより更なる実態解明と診療体制の向上、新しい治療法開発を通じた難治患者のQOL改善・向上へと発展する事が期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-08
更新日
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