好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎の疾患概念確立と治療指針作成のための臨床研究

文献情報

文献番号
201128026A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎の疾患概念確立と治療指針作成のための臨床研究
課題番号
H22-難治・一般-065
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木下 芳一(島根大学 医学部・内科学講座(内科学第二))
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 勉(京都大学 医学研究科・内科学消化器内科学講座)
  • 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院・消化器内科)
  • 松本 主之(九州大学 医学研究科・機能病態内科学)
  • 坂本 長逸(日本医科大学 医学部・消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本年度は昨年度作成した診断の指針を用いて診断された好酸球性食道炎例と好酸球性胃腸炎例を対象として、非侵襲的でかつ感度と特異度の高い診断方法と病勢の把握を行うための客観的なマーカーを作成することを目的とした。
研究方法
①島根県内の17病院で6ヶ月間に上部消化管内視鏡検査を受けた例を対象とし好酸球性食道炎と診断された例の数と内視鏡検査受検例の数から有病率を算定した。
②好酸球性食道炎・胃腸炎の52例の血清でIL-5、-13、-15、eotaxin3、Thymic stromal lymphopoietin(TSLP)をマルチプレックス法で測定した。
③好酸球性食道炎例3例、健常成人2例の食道粘膜生検材料のmRNAを用いてマイクロアレイ解析を行った。
④TSLPとその受容体であるTSLPRの機能をブロックしたモデルマウスを用いてTSLPの基本的な機能の解析を行った。
結果と考察
①日本においては内視鏡検査5,000例に1例程度の好酸球性食道炎が発見されることが明らかとなった。
②血中サイトカインが好酸球性食道炎や胃腸炎で高い例がみられるが、統計学的に大きな有意差をもって高いとは判定できないことが明らかとなった。
③好酸球性食道炎例では食道粘膜でeotaxin3とIL-13が健常者の10倍以上の高発現をし、IL-5も健常者の約5倍産生されていることがわかった。反対にIL-1α、claudin10、filaggrin、irvolcrin等はその発現が著しく低下していた。
④TSLPがTh1免疫応答に依存した自己免疫応答とともに、感染免疫応答に対しても抑制的に働きうることが明らかとなった。
 これらの結果からマイクロアレイ解析を用いて食道粘膜でのmRNAの発現を好酸球性食道炎例と健常者を比較することによって、好酸球性食道炎では食道扁平上皮のdiffusion barrierとしての機能が低下し、食物中や空気中の抗原物質が食道粘膜内に侵入しやすい状態であることが考えられた。
 次いで好酸球性食道炎の診断に関しては5,000例の内視鏡検査で1例の好酸球性食道炎が発見されていること、発見されている好酸球性食道炎例の症状はheartburn、dysplasia、food impaction 、chest painが主で「診断の指針」と一致すること、全発見例に特有の内視鏡像が存在することが明らかになった。さらに好酸球性胃腸炎の診断においては炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病との鑑別に注意が必要であることが示された。
結論
 本研究から好酸球性食道炎・胃腸炎の病因、病態、有病率が明らかとなりつつある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201128026B
報告書区分
総合
研究課題名
好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎の疾患概念確立と治療指針作成のための臨床研究
課題番号
H22-難治・一般-065
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木下 芳一(島根大学 医学部・内科学講座(内科学第二))
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 勉(京都大学 医学研究科・内科学消化器内科学)
  • 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院・消化器内科)
  • 松本 主之(九州大学 医学研究科・機能病態内科学)
  • 坂本 長逸(日本医科大学 医学部 消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 好酸球性食道炎・胃腸炎は消化管の粘膜に何らかのアレルギー性の機序により多数の好酸球が浸潤し、慢性的な炎症を起こす結果、知覚の異常や消化管の運動能に異常が起こる疾患である。これらの疾患は症例数が少なく、また診断の基準も確立されてないため、診断を行うことが難しく、また診断された例もheterogeneityの大きな集団であり、病態の解析を行うことも困難であった。
 そこで、まずこれら2疾患の日本国内での実態を把握すること、次いで実態に基づいて診断の指針を作成すること、最後に新たに作成した診断の指針の有用性を検証しつつ、症例を集積し、新たな診断法、治療法を確立するとともに病態を明らかにすることを目的として研究を行った。
研究方法
 消化器病学会の認定施設1078施設にて2004年~2009年間に診断を受けた好酸球性食道炎・胃腸炎の臨床データをアンケートにより集積し、診断の指針を作成した。この指針を用いてさらに症例の集積を行い、新たに集積された例の血中サイトカイン濃度の測定、病変部消化管の粘膜生検組織のマイクロアレイ解析を行った。
結果と考察
①好酸球性食道炎は中年男性に多い,アレルギー疾患、特に喘息を伴いやすい,特徴的な内視鏡像を示すことが多い,胸のつまり、胸痛、胸やけ等の症状が多い,内視鏡検査を受ける例の5000例に1例の割合でみられる、また好酸球性胃腸炎は、中年に多い,男女比はほぼ同数,アレルギー疾患,特に喘息を伴いやすい,腹痛と下痢の症状を有することが多い,ことが明らかになった。
②好酸球食道炎例、胃腸炎例の血清では、IL-5、-15が高値であることが明らかになった。
③好酸球性食道炎患者ではeotaxin-3、IL-5、IL-13が著明に増加していた。
結論
 好酸球性食道炎と胃腸炎の特徴を明らかにすることができた。これらの疾患に対して全国調査、診断指針の作成、病態の解析を行い、研究者、医師、患者への情報提供を行ってきたが、今後も続けていくことが重要であることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
好酸球性食道炎と胃腸炎の病態にアレルギーが関与していること、特にIL-5、-15のTh2系のサイトカインの関与が大きいことが明らかになった。特にマイクロアレイ解析から、好酸球性食道炎の病態には食道扁平上皮の透過性の亢進と、それに伴う食物抗原等によるTh2タイプのアレルギーの発現が重要であることが示唆された。 さらに 病態にはIgEの関与は低いことも明らかとなった。
臨床的観点からの成果
好酸球性食道炎の頻度が明らかになった。また、診断には血液検査マーカーは有用ではなく内視鏡検査を含む画像診断と病理組織学的検索が必要であることが明らかになった。治療においては、好酸球性食道炎では局所作用ステロイドの内服が、好酸球性胃腸炎では全身ステロイドが有用であるが、中止に伴って再発再燃が多いことも確認された。 また 内視鏡所見のうち縦走溝が診断に重要であること H.pylori感染陰性者の発症リスクが高いことを明らかとすることができた。
ガイドライン等の開発
好酸球性食道炎の診断のためのガイドラインを作成した。好酸球性胃腸炎の診断のためのガイドラインは作成するとともに、臨床データに基づいて2011年に改訂をおこなった。これらのガイドラインは消化器内視鏡学会雑誌をはじめ多くの専門誌にとりあげられた。さらに両疾患に対する治療の指針も作成し公表している。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
好酸球性食道炎・胃腸炎の解説記事が、2010年には京都新聞をはじめとする11新聞に掲載された。また2011年にはテレビの医療番組においては好酸球性胃腸炎が取り上げられた。さらに2012年の日本消化器病学会においては好酸球性消化管疾患のシンポジウムが行われた。また2013年には市民公開講座を開催し消化管のアレルギー疾患に関する新しい情報を市民に伝えた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
49件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会、日本消化管学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
13件
新聞、テレビ、公開講座

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Li YY, Ishihara S, Aziz MM, et al
Autophagy is required for toll^like receptor-mediated interleukin-8 production in intestinal epithelian cells
International J Molecular Medicine , 27 , 337-344  (2011)
原著論文2
Tanaka J, Watanabe N, Kido M, et al
Human TSLP and TLR3 ligand promote differentiation of Th17 cells with central memory phenotype under Th2-polarizing conditions
Clin Exp Allergy , 39 , 89-100  (2009)
原著論文3
Kinoshita Y, Furuta K, Ishimura N, Ishihara S
Elevated plasma cytokines in Japanese patients with eosinophilic esophagitis and gastroenteritis
Digestion , 86 , 238-243  (2012)
10.1159/000341421
原著論文4
Kinoshita Y, Furuta K, Ishimaura N, et al
Clinical characteristics of Japanese patients with eosinophilic esophagitis and eosinophilic gastroenteritis
Journal of Gastroenterology , 48 , 333-339  (2013)
10.1007/s00535-012-0640-x
原著論文5
Furuta K, Adachi K, Aimi M, et al
Case-control study of association of eosinophilic gastrointestinal disorders with Helicobacter pylori infection in Japan
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition , 53 , 60-62  (2013)
10.3164/jcbn.13-15
原著論文6
Ishimura N, Furuta K, Sato S, et al
Limited role of allergy testing in patients with eosinophilic gastrointestinal disorders
Journal of Gastroenterology and Hepatology , 28 , 1306-1313  (2013)
10.1111/jgh.12197
原著論文7
Shimura S, Ishimura N, Tanimura T, et al
Reliability of symptoms and endoscopic findings for diagnosis of esophageal eosinophilia in a Japanese population
Digestion , 90 , 49-57  (2014)
10.1159/000365209

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-15

収支報告書

文献番号
201128026Z