国内外のHIV感染症の流行動向及びリスク関連情報の戦略的収集と統合的分析に関する研究

文献情報

文献番号
201124011A
報告書区分
総括
研究課題名
国内外のHIV感染症の流行動向及びリスク関連情報の戦略的収集と統合的分析に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺昭一(東京慈恵医科大学医学部感染制御部)
  • 和田 清(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 荒川 創一(神戸大学医学部附属病院感染制御部)
  • 中村 亮介(東京都立松沢病院精神科)
  • 西村由実子(橋本由実子)(関西看護医療大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,184,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内外のHIV関連情報の集約と統合的分析を通じて、わが国の流行の文脈的理解と効果的・効率的なエイズ施策の形成に資する。
研究方法
(1)わが国のHIV流行に関連する内外の二次情報のデータベースの構築と分析に関する研究
①近隣地域(中国、台湾、香港、韓国)と先進国(米、英、仏、独、加、豪)のHIV/AIDS/性感染症(STD)データベースを最新化するとともに流行動向を分析した。②わが国のSTD発生動向調査、母子保健統計、薬事工業生産動態統計、性行動データ、出入国管理統計、警察白書を収集分析するとともに、他のHIV可憐研究班の情報を収集し、Global AIDS Progress Reportに適切な情報を選択・吟味した。
(2)STD患者・薬物使用者のHIV/STD感染と行動のモニタリングに関する研究
①全国9STD医療施設の受診者762人(男231、女96、風俗女性365)に対し、無料HIV/検査とHIV
検査ニーズ、HIV関連知識に関する質問票調査を行った。②全国4施設の入院薬物中毒者139人と6薬物関係自助組織会員67人の新規対象者に対し、HIV/STD/肝炎感染率、注射・性行動を調査した。
結果と考察
以下の知見を得た;①近隣地域において日本を上回る性感染を主とするHIV流行が持続していること、②欧米諸国においてSTD全般と性感染(特に同性間感染)によるHIV流行が再燃していること、③近年減少していた我国の主要STD、及び15歳の人工妊娠中絶率が2010年に増加に転じ、若者に高リスク性行動の「新しい波」が生じたと考えられること、④高リスクの同性間性行動が若者層に広がっていると考えられること、⑤派遣型性産業が著しく増加していること、⑥近隣地域との出入国数が高いレベルで持続していること、⑦薬物使用者において、注射共用率は低率ながらHCV感染率と注射使用がここ数年再燃したこと、⑧STD医療施設受診者に無料HIV検査に対する高いニーズが存在し、かつ男性STD受診者において1%という高いHIV感染率が持続していること。
結論
以上、国内外のHIV関連情報を集約して総合的に分析し、わが国のHIV流行の置かれた国際的文脈と社会的脆弱性の状況について明らかにし情報発信した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124011B
報告書区分
総合
研究課題名
国内外のHIV感染症の流行動向及びリスク関連情報の戦略的収集と統合的分析に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻国際保健学講座社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺昭一(東京慈恵医科大学医学部感染制御部)
  • 荒川創一(神戸大学医学部附属病医院感染制御部)
  • 和田 清(国立精神・神経医療研究センター精神保健)
  • 中村 亮介(東京都立松沢病院精神科)
  • 西村由実子(橋本由実子)(関西看護医療大学看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内外のHIV関連情報の集約と統合的分析を通じて、我国の流行の文脈的理解と効果的・効率的なエイズ施策の形成に資する。
研究方法
(1)我国のHIV流行に関連する内外の二次情報の収集分析とデータベース構築に関する研究
①近隣地域(中台韓、香港)と先進国(米英仏独加豪)のHIV/AIDS/性感染症(STD)データベースを最新化すると共に流行動向を分析した。②STD発生動向調査、母子保健統計、薬事工業生産動態統計、性行動データ、出入国管理統計、警察白書を収集分析した。③海外の梅毒流行関連文献を収集分析した。④我国のMSMにおける流行モデルを構築した。⑤我国女性のSTDリスクに関する症例対照研究を行った。⑥Global AIDS Progress Report(UNGASS報告)に適切な情報を選択吟味した。
(2)STD患者・薬物使用者のHIV/STD感染と行動のモニタリングに関する研究
①全国9STD医療施設の受診者1720人(男616、女345、風俗女性759)に対し、無料HIV/検査と、性行動、HIV検査、HIV関連知識に関する質問票調査を行った。②全国4施設の入院薬物中毒者302人と6薬物関係自助組織会員108人の新規例に対し、HIV/STD/肝炎感染率、注射・性行動を調べた。
結果と考察
以下の知見を得た;①近隣地域で性感染によるHIV流行が本格化したこと、②欧米諸国でSTDと性感染(特に同性間)によるHIV流行が再燃したこと、③近年減少していた我国の主要STD及び15歳の妊娠中絶率が2010年に再増し、若者に高リスク性行動が再燃したこと、④我国女性では特定の相手からのSTDリスクが高いこと、⑤高リスクの同性間性行動が広がっていること、⑥MSMのHIV感染率、発生率は10%、1.0%人年、高リスクMSM人口は8万人と推定されること、⑤派遣型性産業が激増したこと、⑥近隣地域との出入国が高水準にあること、⑦薬物使用者で、注射共用率は低率だがHCV感染率と注射使用が再増したこと、⑧STD患者で無料HIV検査へのニーズが極めて高く、かつ男性患者で1-2%のHIV感染が見られたこと。また、UNGASS報告を作成した。
結論
以上、国内外のHIV関連情報を集約して総合的に分析し、我国のHIV流行の置かれた国際的文脈と社会的脆弱性の状況について明らかにし情報発信した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIVの政策科学の学術基盤として、HIV流行に影響を与える地政学的、社会文化的諸要因の系統的・総合的収集とそれに基づく数理的・質的な統合的分析integrated analysisの必要性が指摘されているが、本研究は、わが国における唯一の統合的解析の取り組みであり、内外の関連情報データベースの構築、男性同性間のHIV流行の数理モデルの開発を初めて行うなど、わが国の統合的解析の情報的・方法論的基盤の確立に貢献した。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針(エイズ予防指針)の策定に関わり、その過程で、研究で得られた情報に基づいて専門家としてのアドバイスを行った。指針作成のための会議は、平成23年1月26日、2月24日、3月31日、4月13日、4月27日、6月1日に開催された。
その他行政的観点からの成果
本研究はHIV/STDに関する内外の最新情報に加えて、薬物静注者とSTD患者の調査により、HIV感染、リスク行動情報を収集するなど、HIV/AIDS関連情報の系統的・継続的収集を通して、エイズ予防指針策定や、国連エイズ特別総会(UNGAS)に係る政府報告書作成に寄与するなど、研究成果は、行政的に広く活用された。UNGASについては、2013年と14年の報告書作成にも寄与した。また、2012年度以降のエイズ予防財団主催の保健所対象研修会では、本研究の研究成果を用いた研修が行われている。
その他のインパクト
本研究で得たデータは、Webでパワーポイントファイルとして公開しているが、Wikipediaとのリンクを通して多くの利用があり、講演・報道資料として広く活用されている。成果の一部は地球環境学辞典など権威ある書籍に収録され、3年間で、15編の和文総説論文を寄稿した。また、研究成果は、日本エイズ学会や日本性感染症学会など国内学会、台湾保健省や世界基金セミナーの招待講演などで国際的にも発表し、また、24回の招待講演や大学等の講義などで広く社会に普及した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
26件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
25件
Webによる情報公開(http://www.aidssti.com/)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ono-Kihara M, Sato T, Kato H
Demographic and behavioral characteristics of non-sex worker females attending sexually transmitted disease clinics in Japan: a nationwide case-control study
BMC Public Health , 10 , 106-  (2010)
原著論文2
木原正博、西村由実子、加藤秀子
先進諸国における早期梅毒流行の再興とその背景要因について
日本性感染症学会誌 , 22 , 30-39  (2011)
原著論文3
Suguimoto SP, Techasrivichien T, Musumari PM, El-saaidi C, Lukhele BW Ono-Kihara M, Kihara M
Changing Patterns of HIV Epidemic in 30 Years in East Asia
Current HIV/AIDS Report 2014  (2014)
DOI 10.1007/s11904-014-0201-4
原著論文4
Kiyoshi Wada, Masahiko Funada, Toshihiko Matsumoto,Takuya Shimane
Current status of substance abuse and HIV infection in Japan
Journal of food and drug analysis , 21 , S33 -S36  (2013)
原著論文5
谷渕由布子,松本俊彦,小林桜児,和田 清
薬物依存症専門外来における脱法ハーブ乱用・依存患者の臨床的特徴-覚せい剤乱用・依存患者との比較
精神神経学雑誌 , 115 (5) , 463-476  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124011Z