結核対策の評価と新たな診断・治療技術の開発・実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201123014A
報告書区分
総括
研究課題名
結核対策の評価と新たな診断・治療技術の開発・実用化に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也((公財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 徳永 修(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 原田 登之((公財)結核予防会結核研究所)
  • 前田 伸司((公財)結核予防会結核研究所)
  • 御手洗 聡((公財)結核予防会結核研究所)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター)
  • 小林 典子((公財)結核予防会結核研究所)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
42,121,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は従来の対策・技術の再評価と感染診断、菌検査、治療法、抗結核薬などの新技術の開発・評価を行うことである。
研究方法
従来の対策の評価のために全国薬剤耐性調査、小児結核対策・医療の評価、日本版DOTSの技術強化を実施した。また、新技術の開発評価のために、新化学療法剤を含めた治療方式の開発、結核菌検出・薬剤感受性検査の技術開発と評価、結核菌の感染性・病原性の評価方法の開発、結核菌のVNTR標準分析法の確立と自動化を目指した分析システムの構築を実施した。
結果と考察
薬剤耐性全国調査ではいずれの薬剤の薬剤耐性も低く,適正な医療が実施されていると考えられた。治療についてはDelamanidをはじめとする有望な薬剤による新しい化学療法が期待される。本研究班で開発した薬剤耐性遺伝子迅速診断法は臨床応用できることが証明された。小児結核は減少傾向が持続しているが,BCG接種の維持,リスクの高い地域・グループへの選択的な対策、診断精度・標準的治療の小児科医に対する知識の普及,結核患者の全例把握等が必要と考えられた。また、IP10 release assayは良好な感度・特異度を有する診断法となることが期待される。抗原特異的INFγ及びIL-2産生細胞を解析する二重染色Fluorospot法を確立した。結核感染の状態の詳細な検討が期待される。PMA活性化THP-1細胞を使用した結核菌競合感染によるin vitro毒力評価系を確立した。臨床分離株のクラスターサイズと相対毒力の相関を示した。 VNTR分析法として昨年度作成したマルチプレックスPCRでローカスの組合せにより検出する方法を改良し、国際標準への対応及び識別能の向上に活用できる。日本版DOTSの技術強化ではリスク分析、看護サービスの評価分析、地域連携の基礎調査を行い、患者教育の重要性、失敗例で最も支援が必要なこと、綿密な地域連携の必要性が確認された。
結論
本年度も本研究班は薬剤耐性の状況、外科療法、小児結核医療、日本版DOTSの再評価及び感染診断、菌検査、治療法、抗結核薬などの新技術の開発・評価等の当初の目的に対して十分な成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201123014B
報告書区分
総合
研究課題名
結核対策の評価と新たな診断・治療技術の開発・実用化に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也((公財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 全司(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 徳永 修(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 原田 登之((公財)結核予防会結核研究所)
  • 前田 伸司((公財)結核予防会結核研究所)
  • 御手洗 聡((公財)結核予防会結核研究所)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター)
  • 小林 典子((公財)結核予防会結核研究所)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
  • 伊藤 邦彦((公財)結核予防会結核研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は従来の対策・技術の再評価と感染診断、菌検査、治療法、抗結核薬などの新技術の開発・評価を行うことである。
研究方法
従来の対策の評価のために全国薬剤耐性調査、小児結核対策・医療の評価、日本版DOTSの技術強化、コッホ現象報告の分析、結核病床の実態調査、院内DOTS業務量調査を実施した。また、新技術の開発評価のために、新化学療法剤を含めた治療方式の開発、結核菌検出・薬剤感受性検査の技術開発と評価、結核菌の感染性・病原性の評価方法の開発、結核菌のVNTR標準分析法の確立と自動化を目指した分析システムの構築を実施した。
結果と考察
日本の薬剤耐性率は世界的に見て低率である。治療については有望な薬剤による新しいレジメンの開発が期待される。本研究班で開発した薬剤耐性遺伝子迅速診断法は臨床応用できることが証明された。小児結核は減少傾向が持続しているが,BCG接種の維持,リスクのグループへの選択的な対策、小児科医への診断・標準的治療の知識の普及,結核患者の全例把握等が必要と考えられた。また、IP10 release assayは良好な感度・特異度を有する診断法となることが期待される。抗原特異的INFγ及びIL-2産生細胞を解析する二重染色Fluorospot法を確立した。結核感染の状態の詳細な検討が期待される。結核菌競合感染によるin vitro毒力評価系を確立した。これは臨床分離株のクラスターサイズと相対毒力の相関を示した。VNTR分析法では、マルチプレックスPCR分析によって省力化と国際標準への対応及び識別能の向上に活用できる。日本版DOTSの技術強化ではリスク分析、看護サービスの評価分析、地域連携の基礎調査を行い、患者教育の重要性、失敗例で最も支援が必要なこと、綿密な地域連携の必要性が確認された。結核病床調査は既存施設の感染防止やアメニティの対応は不十分であることが明らかになり、施設基準設定によって改善を図る必要がある。院内DOTS業務量調査は良好な「院内DOTS業務」はチーム医療によって成り立っており,患者の理解度・満足度に貢献することを示唆する結果が得られた。
結論
本研究班は薬剤耐性の状況、外科療法、小児結核医療、日本版DOTSの再評価及び感染診断、菌検査、治療法、抗結核薬などの新技術の開発・評価等の当初の目的に対して十分な成果をあげることができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新知見として論文化したテーマは次のとおり。日本のMDR、同XDR、(御手洗)、RBT耐性遺伝子、Glanulysin(以上、岡田)、PZA耐性、LPAキットの多施設研究、INH耐性遺伝子、キノロン耐性遺伝子(以上、切替)、小児のQFT適用、小児症例検討、小児におけるIGRAとIP10(以上、徳永)、日本の北京株(前田)、感染症病床調査、結核病床調査(以上、伊藤)、コッホ現象の分析(加藤)。院内DOTSは論文化予定。結核菌感染性評価(御手洗)及びT細胞二重染色法(原田)は今後の展開が期待される。
臨床的観点からの成果
全国薬剤耐性調査ではLVFXの耐性が初めて明らかになった。新抗結核薬を使った治療は治療成績向上に有用となることが期待される。外科治療の調査は有用性を再確認することができた。薬剤耐性LPAsの開発及び臨床評価は迅速診断の臨床応用に道を開いた。小児のIGRAは感染診断における限界と活動性結核に有用性を明らかにした。小児結核全国調査及び症例検討は診療上の課題を明らかにした。
ガイドライン等の開発
院内DOTS調査は日本版DOTSに関する通知の改訂の資料となった。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会結核部会での特定感染症予防指針改正の参考資料となったのは以下のとおり。第19回 (平成22年8月6日):BCG骨炎調査(徳永)、BGC接種の問題点と今後の方向性(森)、コッホ現象 (加藤)。第20回(11月5日):結核病床全国サンプリング調査(伊藤)。第21回(11月19日):医療機関等における包括的患者支援の評価(加藤)、薬剤感受性検査の精度保証(御手洗)。第23回(平成23年1月28日):小児結核の現状と今後の課題(徳永)。院内DOTS調査は診療報酬改定の資料となった。
その他のインパクト
結核研究所が主催する以下のセミナー等で発表した。第15回国際結核セミナー(平成22年3月4日):耐性遺伝子診断のシンポ(安藤弘樹)、VNTR法による分子疫学(前田伸司)。第16回全国結核対策推進会議(平成23年3月4日):結核病床調査(筧敦夫)、包括的患者支援の評価に関する研究(永田容子)、薬剤耐性全国調査(御手洗聡)、遺伝子診断最新情報(切替)

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
BGC接種の問題点と今後の方向性(森)、結核病床全国サンプリング調査(伊藤)、院内DOTS調査
その他成果(普及・啓発活動)
6件
結核研究所が実施している国際結核セミナー及び全国結核対策推進会議

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mitarai S, Kato S, Ogata H et al.
Comprehensive multicenter evaluation of a new line probe assay kit for identification of Mycobacterium species and detection of drug-resistant Mycobacterium tuberculosis.
Journal of Clinical Microbiology , 50 (3) , 884-890  (2012)
原著論文2
伊藤邦彦、永田容子、浦川美奈子 他
感染症病床のみを有する第二種感染症市営医療機関への結核医療に関する全国アンケート調査結核
結核 , 87 (2) , 51-55  (2012)
原著論文3
Ando H, Kitao T, Miyoshi-Akiyama T, Kato S et al.
Downregulation of katG expression is associated with isoniazid resistance in Mycobacterium tuberculosis
Mol Microbiol , 79 (6) , 1615-1628  (2011)
原著論文4
Ando H, Mitarai S, Kondo Y et al.
Evaluation of a line probe assay for the rapid detection of gyrA mutations associated with fluoroquinolone resistance in multidrug-resistant Mycobacterium tuberculosis.
J Med Microbiol , 60 , 184-188  (2011)
原著論文5
Ando H, Mitarai S, Kondo Y et al.
Pyrazinamide resistance in multidrug- resistant Mycobacterium tuberculosis isolates in Japan.
Clin Microbiol Infect. , 16 , 1164-1168  (2010)
原著論文6
Murase Y, Maeda S, Yamada H, et al.
Clonal expansion of multidrug-resistant and extensively drug-resistant tuberculosis, Japan.
Emerg Infect Dis , 16 , 948-954  (2010)
原著論文7
Maeda S, Wada T, Iwamoto T, Murase et al.
Beijing family Mycobacterium tuberculosis isolated from throughout Japan: phylogeny and genetic features
Int J Tuberc Lung Dis , 14 , 1201-1204  (2010)
原著論文8
Ando H, Kondo Y, Suetake T, Toyota E et al.
Identification of katG mutations associated with high-level isoniazid resistance in Mycobacterium tuberculosis.
Antimicrob Agents Chemother , 54 (5) , 1793-1799  (2010)
原著論文9
加藤誠也、徳永修、吉山崇
日本のコッホ現象報告の分析
結核 , 85 , 777-782  (2010)
原著論文10
Yoshida S, Suzuki K, Iwamoto T et al.
Comparison of rifabutin susceptibility and rpoB mutations in multi-drug-resistant Mycobacterium tuberculosis strains by DNA sequencing and the line probe assay.
J Infect Chemother , 16 (5) , 360-363  (2010)
原著論文11
永田容子,浦川美奈子,小林典子 他
結核病床における院内DOTS業務量に関する分析
結核 , 89 , 495-502  (2014)
原著論文12
伊藤邦彦、永田容子、浦川美奈子 他
結核病床の施設整備状況に関する全国アンケート調査
結核 , 87 , 475-480  (2012)
原著論文13
Tuberculosis Research Committee (RYOKEN)
Nationwide survey of anti-tuberculosis drug resistance in Japan
Int J Tuberc Lung Dis , 19 (2) , 157-162  (2015)
10.5588/ijtld.13.0905

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201123014Z