成人感染が問題となりつつある小児感染症への対応に関する研究

文献情報

文献番号
201123011A
報告書区分
総括
研究課題名
成人感染が問題となりつつある小児感染症への対応に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 岡田 賢司(国立病院機構福岡病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,146,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人感染が問題となりつつある百日せき,水痘(帯状疱疹を視野に入れる),麻しんの小児感染症への対応につき予防接種を中心に研究。百日せき:成人における早期血清学的診断の確立。成人に対するDPTワクチン接種後の抗体の持続性の評価。水痘:水痘ワクチンの接種効果、接種回数、安全性の確認。水痘ワクチン接種後の特異的細胞性免疫能の測定。MR:MRワクチン接種時期の検討、成人への接種の効果・安全性の評価。液性抗体以外の接種効果の評価方法の検討。多種ワクチン同時接種後の安全性の確認。
研究方法
百日せき:成人にDPTワクチン接種後、経時的に抗体価を測定。PROTEIN Xを抗原としたELISA法IgMによる成人百日せきの診断。水痘ワクチン:MRワクチン接種時に同時接種、その有効性・安全性を評価。ELISPOT法により接種後特異的細胞性免疫能を測定。MR:MRワクチン2期3期4期接種後の抗体価を測定。妊婦を対象に麻しん、風しん抗体価を測定、低抗体価者に産後1ヶ月時MRワクチンを接種、有効性・安全性を評価。麻しん、風しんウイルス蛋白を人工遺伝子合成にて作成し樹立発現細胞より蛋白を精製し,MRワクチン接種後のリンパ球より特異的細胞性免疫能を検索。同時接種:BCG,OPVワクチン、DPT、Hibワクチン、PCVワクチン等の種々の組み合わせによる同時接種を施行しその安全性を調査。
結果と考察
成人へのDPT接種では抗PT抗体が経時的にやや減衰するが、有効・安全性を確認した。IgMELISA法で患者の76%が陽性反応を示した。水痘:MRワクチンと水痘ワクチンの同時接種は安全・有効である。水痘ワクチンは2回接種が必要。MR:MRワクチンは今後現行の1期、2期接種が最適。産後のMRワクチン接種でその有効性・安全性を確認した。接種後の特異的細胞性免疫能測定は試行中。同時接種:種々のワクチンの組み合わせで同時接種を施行、すべての組み合わせで重篤な副反応は見られなかった。
結論
百日せき:成人へのDPTワクチン接種は有効かつ安全である。IgMELISA法の確立により成人の迅速な百日せき診断が可能となった。水痘:MRワクチンとの同時接種は有効かつ安全である。水痘ワクチンは2回接種が必要であろう。MRワクチンは今後現行の1期、2期接種が妥当。接種漏れ者には成人でも接種することが必要。同時接種:種々の組み合わせで同時接種のスケジュールが可能である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201123011B
報告書区分
総合
研究課題名
成人感染が問題となりつつある小児感染症への対応に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 達夫(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 岡田 賢司(国立病院機構福岡病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人感染が問題となりつつある小児感染症への対応として予防接種を中心に研究。百日せき:迅速な早期血清学的診断の確立。成人に対するDPTワクチン接種の効果・安全性の確認。水痘:水痘ワクチンの接種方法とその効果の評価。MR:MRワクチン接種時期の検討、成人への接種効果・安全性の確認。
研究方法
百日せき:百日せき菌特有の蛋白抗原を見出しIgMELISA法を開発。成人にDPTワクチンを接種し経時的抗体価の変動を観察。水痘:水痘ワクチンをMRワクチン1期、2期時に同時接種。Elispot法により水痘の細胞性免疫能を検索。MR:2期、3期、4期接種後の抗体価を測定。妊婦を対象に麻しん、風しん抗体価を測定、低抗体者に産後1か月時MRワクチン接種有効性・安全性を評価。
結果と考察
百日せき:百日せき菌特有の蛋白抗原PROTEIN Xを樹立し精度の高いIgMELISA法を確立。菌量の少ない成人患者の迅速診断を可能とした。成人へのDPTワクチン接種は症例数を増し、その有効性・安全性を確認できたが、抗PT抗体は経時的に減衰することから、今後のDPTワクチン接種時期を検討する必要性がある。水痘:水痘ワクチンとMRワクチンの同時接種は3年間で症例数を増した。同時接種は安全有効であるが、MR2期接種時までに、MR1期時同時接種した水痘抗体は減弱することから、水痘ワクチンは2回接種が必要であり、その接種間隔はさらなる検討を要する。細胞性免疫能に関しては帯状疱疹との関係から今後の検討課題。MR:MRワクチンの3期、4期接種は平成24年で終了するが、この研究中の3年間で成人を含む麻しん患者がきわめて減少したことに加え、本研究の結果から今後の接種は現行の1期、2期で十分と思われた。しかし、妊婦から見た成人の抗体価、その後の接種効果から考え、MR接種漏れ者への対応が今後の課題と考える。
結論
百日せき:成人感染が問題となっているが、本研究の結果精度の高い血清学的迅速診断が可能になったことにより、早期治療が可能となり乳幼児への2次感染の防止が期待できる。成人へのDPTワクチン接種が有効・安全である。抗PT抗体の減衰を考えて現行のDT2期接種をDPTワクチン接種に変える必要性につき考慮するべきと思われる。水痘:水痘ワクチン接種とMRワクチンの同時接種は有効・安全であるが、2回接種が必要である。MR:MRワクチンは今後現行の1期、2期の接種率をさらに上げ、接種漏れ者への対応を考慮すべきである。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)成人百日せき患者からの百日せき菌量が小児に比し極めて少量であるため、成人患者には高感度血清診断が必要である。本研究ではビオチンーアビジンシステムを用いたcapture-IgM ELISA法を開発し、感染早期の血清診断に有用である。
2)近時問題となっている成人百日せきの早期診断により、早期、適切な治療を可能とし、乳幼児への2次感染防止が期待できる。
臨床的観点からの成果
1)成人へのDPTワクチン接種は有効・安全であるが抗PT抗体は早期に減衰する。水痘ワクチンとMRワクチンの同時接種は安全かつ有効であるが、水痘ワクチンは1回の接種では不十分である。抗体価の低い成人へのMRワクチンは有効・安全である。
2)現行のDT定期接種をDPT接種に。水痘ワクチンを定期接種に。
ガイドライン等の開発
成人の百日せき診断は一般に難しいところから、成人百日せき診断ガイドライン作成を試みたが現在まで充分な症例がなく、今後の課題。
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会において水痘の定期接種化、MRワクチン接種時期に関して提言。同部会へ小委員会を通じて、百日咳ワクチン作業チーム報告書を提出し、施策へ反映。麻しん対策推進会議において本研究班の中間報告として発言、施策に反映。その他、水痘ワクチン2期接種時期の検討も行った。これらにより、成人百日咳患者の増多阻止のため、先ずは現行のDT定期接種をDPT接種とすることを期待。未だわが国では定期接種ではない水痘ワクチン定期接種化を期待。MRワクチン接種漏れ成人への接種方法確立を期待。
その他のインパクト
各種ワクチンに関して、講演、市民セミナー、学会等で啓蒙活動を行ってきたが、今後も継続して研究成果を公表。
百日咳患者の新規血清診断法に関して特許出願を予定しており、感染早期の血清診断に有用と考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
36件
その他論文(英文等)
16件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
百日咳新規血清診断法(出願予定)
その他成果(施策への反映)
4件
その他成果(普及・啓発活動)
14件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
髙山直秀、外川玲子、三輪操子他
中学1年生への麻疹・風疹混合(MR)ワクチン追加接種の効果と安全性 ―2008年度の調査結果―
小児科臨床 , 63 (6) , 1135-1141  (2010)
原著論文2
Nakamura Y Kamachi K Toyoizumi-Ajisaka H et al
Marked difference between adults and children in Bordetella pertussis DNA load in nasopharyngeal swabs
Clinical Microbiology and Infection , 17 , 365-370  (2011)
原著論文3
Han H-J Kuwae A Abe A et al
Differential expression of type III effector BteA protein due to IS481 insertion in Bordetella pertussis
PLoS ONE , 63 (3) , 17797-  (2011)
原著論文4
Kenji Okada Takako Komiya Akihiko Yamamoto et al
Safe and effective booster immunization using DTaP in teenager.
Vaccine , 28 , 7626-7633  (2010)
原著論文5
Otsuka N Han HJ Toyoizumi-Ajisaka H et al
Prevalence and genetic characterization of pertactin-deficient Bordetella pertussis in Japan
PLoS ONE , 7 (2) , 31985-  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123011Z