動物由来感染症のリスク分析手法等に基づくリスク管理のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201123004A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来感染症のリスク分析手法等に基づくリスク管理のあり方に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(北里大学 獣医学部獣医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 門平 睦代(帯広畜産大学 畜産生命科学部門 環境生態学講座)
  • 宇根 有美(麻布大学 獣医学部 病理学)
  • 奥 祐三郎(鳥取大学 農学部 獣医学科)
  • 浦口 宏二(北海道立衛生研究所 生物科学部 衛生動物科)
  • 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 今岡 浩一(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 丸山 総一(日本大学 生物資源科学部)
  • 小泉 信夫(国立感染症研究所 細菌研究部)
  • 佐野 文子(琉球大学 農学部 亜熱帯地域農学科)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウィルス第1部)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 川中 正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
34,687,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物由来感染症は多数あり病原体も様々である。限られた予算と人的資源でこれらの感染症群に対応するには、統一的なリスク評価に基づき感染症を順位化し、順位の高い順に適正なリスク管理措置を確立することが必要である。H23年度は動物由来感染症の専門家による科学的評価の承認を得たのち、行政官、一般市民、医師によるリスク因子の定量的重み付けを行い、3者の差を分析し、重要性順位の上位感染症でリスク管理対応のとれていない疾病の抽出を試みる。
研究方法
月に一回の研究統括班会議を開き、また班員全員参加のワークショップを2回開催した。H23年度はこれまでの評価で弱点であった定性的ディシジョンツリー型から、改良型AHP法を導入し7つの因子の定量的な重み付けを完成した。市民講座、行政研修会等を利用し、専門家以外から評価のデータを収集した。
結果と考察
各疾患の重要度が数値で表されるようになった。また、国内にある感染症と未侵入の感染症について侵入以前と侵入後にわけて序列化できることが明らかになった。さらに、立場の違いにより7つの因子の重みづけが異なることが示された。統一的、科学的なリスク評価法に基づき、動物由来感染症を序列化するという当初の研究班の目的を達成できた。
結論
研究統括班では月1回のミーティングを開き、また都合6回の研究班ワークショップを開催し、統一的リスク評価法の検討、科学評価に基づく動物由来感染症の順位化を完成した。また市民、行政、医師グループについて、専門家の評価と比較するための市民講座、シンポジウムとアンケート調査を行い、各グループのリスク因子に対する評価の差を明らかにし、考察した。初期の計画通り順位化について、専門家の最終結果に対するコンセンサスを得たこと、異なったグループのリスク評価特性が明らかにされた意義は大きい。リスクコミュニケーションにどのように反映するか?また順位の上位を占める感染症のリスク管理をどのように行うか?が、次の課題となる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

文献情報

文献番号
201123004B
報告書区分
総合
研究課題名
動物由来感染症のリスク分析手法等に基づくリスク管理のあり方に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 泰弘(北里大学 獣医学部獣医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 門平 睦代(帯広畜産大学 畜産生命科学部門)
  • 宇根 有美(麻布大学 獣医学部 病理学)
  • 奥 祐三郎(鳥取大学 農学部 獣医学科)
  • 浦口 宏二(北海道立衛生研究所 生物学部衛生動物科)
  • 井上 智(国立感染症研究所 獣医科学部 獣医学)
  • 今岡 浩一(国立感染症研究所 獣医科学部 獣医学)
  • 丸山 総一(日本大学 生物資源科学部 獣医学)
  • 小泉 信夫(国立感染症研究所 細菌研究部 細菌学)
  • 佐野 文子(琉球大学 農学部 亜熱帯地域農学科)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウィルス第1部 リケッチクラミジア)
  • 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 川中 正憲(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究者にとっては自分の研究対象が最も重要であり、研究者間ではコンセンサスを得られない。メディアはその時の社会的インパクトにより、前後を顧みず報道する、市民は混乱する情報の中でパニックに陥る、というのが新興感染症のアウトブレイクシナリオである。このような事態を避けるには、多様性のある動物由来感染症に関して、適正なリスク管理を行う必要がある。そのためには、リスクシナリオの作成、科学的なエビデンスの集積、統一的なリスク評価法による感染症の序列化と重点的な統御法の開発が必須である。本研究班では分野の異なる専門家集団が協力して、上記の課題の解決法を研究した
研究方法
月に1回の統括班戦略会議を開き、AHP法を動物由来感染症の序列化のための評価法に適用し、改良した。6回の研究者ワークショップ(WS)と専門家へのインターネットによる調査を行った。市民講座、リスク管理者研修会等を利用して、立場の異なる集団による評価データを回収し、専門家の評価との差異を検討した。
結果と考察
100種に及ぶ動物由来感染症を序列化した。またリスク評価に必要な個別研究をグループに分かれて遂行した。結果としてカプノサイトファーガ感染症のリスク公表(厚労省QA)、狂犬病の侵入シナリオ・危機管理対応(地方自治体への新しい指針案)、フィリピンのルーセットオオコウモリに関するエボラレストンの自然宿主同定、輸入げっ歯類のバルトネラ分類と新種の発見・登録、オウム病・アニサキスの疫学、エキノコックスの統御法検討、ロボミコーシス発見など多くの研究成果を上げた。
結論
3年間の班員全員の協力により、一貫性のある統一的リスク評価法を完成した。また、動物由来感染症を重要性に基づき序列化するためのリスクプロファイルの作成、個々の研究課題で多くの新しいデータを収集し、リスク評価に利用できた。評価結果は行政のリスク管理、市民へのリスクコミュニケーションに有用である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
欧米の数か国では、リスク管理のために動物由来感染症の重要性序列化を試みている。しかし、その評価法は非常にシンプルで、かつ定性的なものである。本研究班では分野の異なる感染症の専門家集団で、7つの因子についてAHP法による重みづけを行い、また国内感染症・国外感染症に分けて評価を行った。さらに市民、行政者、医師等の異なるグループによる評価を進め、リスコミ対応を検討した。これまでに行われていない方法論であり、応用性の高いリスク評価法といえる。
臨床的観点からの成果
医師から見た動物由来感染症の序列化が可能になった。データ収集の母集団をさらに増やし、評価の再現性を得る必要がある。また、専門家から見た序列とは異なる部分があるので、分析したのち、医師による動物由来感染症リテラシーに利用できる。
ガイドライン等の開発
ペットとして輸入されるげっ歯類のバルトネラ属の分類(新規発見株を含む)と病原性を明らかにし、飼育上の注意や飼育法に関するガイドライン作成の重要性を喚起した。旧版の狂犬病ガイドラインをみなおし、狂犬病の発生時の地方自治体の対応に関するガイドライン(案)の作成と診断、臨床徴候識別のためのDVDを作成した。豚エキノコックス診断のガイドラインとして「豚の肝臓に見られた白色結節病理アトラス」を作成し配布した。サル類の病理カラーアトラスを作成し配布した。
その他行政的観点からの成果
北海道の特定地域でのエキノコックス清浄化効果を北海道エキノコックス対策協議会に報告。不法上陸犬の狂犬病リスクに関する自治体、海上保安庁、税関への教育(講演、研修)。日本で初めてロボミコーシスの発生を認め、イルカ飼育者の注意喚起のため動物園水族館協会に連絡。厚生労働省と協力し、カプノサイトファーガ感染症のQ&Aを作成し、厚労省のウェッブサイトで公開。馬のエキノコックス感染を全国の食肉衛生検査所と調査し、汚染実態を報告した。
その他のインパクト
カプノサイトファーガ感染症について、テレビ、新聞、雑誌等に情報提供した。動物取扱者研究用テキストにカプノサイトファーガ感染症を追加記載。サル類の病理カラーアトラス発行に関してラジオ、新聞で情報提供された。市民公開講座(帯広大学、北里大学)、公開シンポジウム(千葉科学大学、日本大学)等を開催。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
1件
著書
学会発表(国内学会)
36件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
著書(カラーアトラス)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Taniguchi, S., Watnabe, S., Masangakay, JS. et al.
Reston Ebolavirus antibodies in bats, the Philippienes.
Emerg. Infect. Dis. , 17 (8) , 1559-1560  (2011)
原著論文2
Inoue, K., Kabeya, H., Hagiya, K., et al.
Multi-locus sequence analysis reveals host specific association between Bartonella washoensis and squirrels.
Vet. Microbiol. , 148 , 60-65  (2011)
原著論文3
Arayan, LT., Reyes, AW., Masangkay, JS. et al.
Serological examination of Philippine bats for Histoplasma capsulatum.
Ceylon J. Sci. , 40 (2) , 183-186  (2011)
原著論文4
Reyes, AW., Rovia, HG., Masangkay, JS. et al.
Polymerase chain reaction assay and conventional isolation of Salmonella spp. from Philippine bats.
Acta Sci. Vet. , 39 (1) , 947-953  (2011)
原著論文5
Oishi, T., Uraguchi, K., Takahashi, K., et al.
Population structure of the red fox on the Hokkaido Island, Japan, revealed by microsatellite analysis.
J. Heredity , 102 , 38-46  (2011)
原著論文6
Engel, P., Salzburger, W., Liesch, M. et al.
Parallel evolution of a type IV secretion system in radiating lineages of the host-restricted bacterial pathogen Bartonella.
PLoS Genetics e1001296 , 7 (2)  (2011)
原著論文7
Sato, S, Kabeya, H., Makino, T. et al.
Seroprevalence of Toxoplasma gondii infection in feral raccoons in Japan.
J. Parisitol. , 97 (5) , 956-957  (2011)
原著論文8
Matsumoto, K., Kako, Y., Morita, Y., et al.
Seroprevalence of Toxoplasma gondii in wild boars and wild sika deer in Gunma prefecture, Japan.
Parasitol. Intern. , 60 (3) , 331-332  (2011)
原著論文9
Yoshii, K., Mottae, K., Omori-Urabe, Y. et al.
Epizootiological study of tick-borne encephalitis virus infection in Japan.
J. Vet. Med. Sci. , 73 , 409-412  (2011)
原著論文10
Miyasato, H., yamaguchi, S., Taira, K. et al.
Tinea corporis caused by Microsporum gallinae. The first clinical case in Japan.
J. Dermatol. , 38 , 1-6  (2011)
原著論文11
Tanaka, M., Izawa, T., Kuwamura, M. et al.
Deep granulomatous dermatitis of the fin caused by Fusarium solani in a False killer whale.
J. Vet. Med. Sci.(in press) , 74  (2012)
原著論文12
Dang Z, Yagi K, Oku Y, et al.
A pilot study on developing mucosal vaccine against alveolar echinococcosis (AE) using recombinant tetraspanin 3: vaccine efficiency and immunology.
PLos NTDs (in press)  (2012)
原著論文13
Nonaka N, Nakamura S, Inoue T, et al.
Coprological survey of alimentary tract parasites in dogs from Zambia and evaluation of a coproantigen assay for canine echinococcosis.
Ann. Trop. Med. Parasitol. , 105 (7) , 521-531  (2011)
原著論文14
Nakao R, Kameda Y, Kouguchi H, et al.
Identification of genetic loci affecting the establishment and development of Echinococcus multilocularis larvae in mice.
Int J Parasitol. , 41 (11) , 1121-1128  (2011)
原著論文15
Kobayashi,T., Kanai, Y., Oku, Y.,et al.
Morphological and molecular characterization of sylvatic isolates of Trichinella T9 obtained from feral raccoons (Procyon lotor)
Nematological Reseach , 41 (1) , 27-29  (2011)
原著論文16
Kouguchi H, Matsumoto J, Yamano K, et al.
Echinococcus multilocularis: purification and characterization of glycoprotein antigens with serodiagnostic potential for canine infection.
Exp Parasitol. , 128 (1) , 50-56  (2011)
原著論文17
Armua-Fernandez MT, Nonaka N, Sakurai T, et al.
Development of PCR/dot blot assay for specific detection and differentiation of Taeniid cestode eggs in canis.
Parasitol Int. , 60 (1) , 84-89  (2011)
原著論文18
Ueno, M., Kuroda, N., Yahagi, K. et al.
Analysis of antibody responses by commercial western blot assay in horses with alveolar echinococcosis.
J. Vet. Med. Sci.(in press) , 74  (2012)
原著論文19
Kameo, U., Nagao, Y., Nishio, Y., et al.
Epizootic canine distemper virus infection among wild mammals.
Vet. Microbiol. , 154 , 222-229  (2012)
原著論文20
Sano, A., Yarita, K.
Ochroconis, in Molecular detection of human fungal pathogens. Dongyou liu Ed.
CRCpress , 459-468  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-06-05
更新日
2015-07-06

収支報告書

文献番号
201123004Z