文献情報
文献番号
201122069A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患の生物学的病態解明研究-最新の神経科学・分子遺伝学との融合-
課題番号
H22-精神・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究分担者(所属機関)
- 岩田 仲生(藤田保健衛生大学 医学部 精神医学)
- 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院 医学系研究科 精神医学)
- 橋本 亮太(大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 精神医学)
- 野田 隆政(国立精神・神経医療研究センター病院 精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
精神疾患の診断は医師が症状を診ることによりなされており、客観的な検査等による診断法は未だ確立しておらず、客観的・科学的診断法の開発が必要とされている。抗精神病薬や抗うつ薬は約半数については治療効果が不十分であり様々な副作用が起こる。よって有効性が高く副作用の少ない治療薬の開発が待ち望まれている。本研究では新たな診断法・治療法への応用を目指して、最新の神経科学と分子遺伝学融合させた手法を用いて統合失調症とうつ病の病態を解明することを第一の目的とする。その成果の普及啓発のための提言を行い、国民の精神疾患への神経科学的な理解を深めて精神疾患に対する誤解や偏見を打破することを第二の目的とする。
研究方法
世界で最大規模となる三千以上のゲノムサンプルとそれに付随する数百以上の中間表現型データを最新の神経科学・遺伝学・分子生物学の手法を用いて解析する。サンプル収集を続けつつ、収集済みのサンプルにて神経科学的な中間表現型と関連する多型を見出し、統合失調症やうつ病のリスク遺伝子を同定する。
結果と考察
大阪大学では、藤田保健衛生大学の協力を得て中間表現型付きのゲノムサンプルの全ゲノムタイピングがほぼ完了した。その予備的な検討において統合失調症の認知機能障害に関与する遺伝子を見出し、この手法が非常に有用であることを示唆するデータを得た。
藤田保健衛生大学では、覚醒剤の副作用としての「精神病状態」を検討する薬理遺伝学的研究を行い「覚醒剤により精神病となるリスクSNP」は、統合失調症の患者に多く見られることを同定した。
名古屋大学では、Ptpra-/-マウスにおいて統合失調症様の行動異常と統合失調症患者死後脳で報告されたミエリン関連遺伝子の発現低下を確認し、PTPRAのSNPが本疾患と遺伝統計学的に関連し、患者死後脳でPTPRA mRNAの発現低下していることを見出し、統合失調症の新たなリスク遺伝子とモデル動物を提案した。
国立精神・神経医療研究センターでは、NIRSの症状評価ツールとしての有用性を検討した。大うつ病性障害患者においては、HAMD-21総得点と右背外側前頭前野の賦活に負の相関が認められ、双極性障害においては、YMRSの気分高揚項目と右側頭部の賦活に正の相関が認められた。
藤田保健衛生大学では、覚醒剤の副作用としての「精神病状態」を検討する薬理遺伝学的研究を行い「覚醒剤により精神病となるリスクSNP」は、統合失調症の患者に多く見られることを同定した。
名古屋大学では、Ptpra-/-マウスにおいて統合失調症様の行動異常と統合失調症患者死後脳で報告されたミエリン関連遺伝子の発現低下を確認し、PTPRAのSNPが本疾患と遺伝統計学的に関連し、患者死後脳でPTPRA mRNAの発現低下していることを見出し、統合失調症の新たなリスク遺伝子とモデル動物を提案した。
国立精神・神経医療研究センターでは、NIRSの症状評価ツールとしての有用性を検討した。大うつ病性障害患者においては、HAMD-21総得点と右背外側前頭前野の賦活に負の相関が認められ、双極性障害においては、YMRSの気分高揚項目と右側頭部の賦活に正の相関が認められた。
結論
これらの研究成果は、統合失調症やうつ病をはじめとする精神疾患の新たな診断法・治療法の開発に役立つものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
-