成人を対象とした眼検診プログラムの臨床疫学、医療経済学的評価

文献情報

文献番号
201122044A
報告書区分
総括
研究課題名
成人を対象とした眼検診プログラムの臨床疫学、医療経済学的評価
課題番号
H22-感覚・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山田 昌和(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター・視覚研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 福原 俊一(京都大学医学部・医療疫学)
  • 平塚 義宗(国立保健医療科学院・医療・福祉サービス研究部)
  • 村上 晶(順天堂大学医学部 眼科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,468,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の視覚障害の有病者数は164万人で、社会の高齢化に伴って今後更に増加すると予測される。視覚障害の主要な原因疾患は慢性、進行性の加齢性疾患であり、早期発見のための成人眼検診プログラムの開発が急務と考えられる。本研究は、成人を対象とした眼検診の効果と費用対効果を臨床疫学、医療経済学の視点から分析することを目的とする。
研究方法
本研究は大きく3つの研究から構成される。1)視覚障害の原因となる疾患の年代別、性別の有病率、危険因子を検討するための地域住民を対象としたコホート研究、2)視覚障害の程度別の効用値、日常生活機能の評価を行い、視覚障害の疾病負担を評価する研究、3)検診で発見された眼疾患に医療介入を加えた場合の効果を主要疾患別に評価し、総体としての成人眼検診の効用を検討する研究である。1)の疫学研究で得られた主要眼疾患の有病率データと2)の研究で得られた視覚障害による疾病負担データを用い、検診により減ずることができる視覚障害数と疾病負担、費用対効果をICERなどの医療経済学的な指標を用いて評価する。感度分析を行うことで成人眼検診の内容を変えた場合の変化を分析し、検診プログラムの最適化を行う。
結果と考察
地域住民を対象としたコホート研究では、福島県南会津町、只見町で視力・屈折検査を含めた住民検診を行う予定であったが、東日本大震災の影響で本年度は中止を余儀なくされた。視覚障害の疾病負担を評価する研究は、多施設共同研究のプロトコールを固定、倫理委員会の承認を得て症例登録を開始した。成人眼検診の効果と費用対効果を検討する研究に関しては、本年度は緑内障を対象として検討した。マルコフモデルによる費用効用分析では、ベースケースのICERは約470万円/QALYと許容範囲であり、緑内障による失明者数を49.4%減少できることが示された。感度分析によって検診内容を失明者減少(検診の効果)と費用対効果(医療経済学的指標)の両方の観点から検討すると、40歳または50歳開始で70歳終了、2年に1度実施するプログラムが最適と考えられた。今後、他の主要眼疾患の分析結果も合わせて、最終的に統合して最適な成人眼検診プログラムを確立する予定である。
結論
成人眼検診の効果と費用対効果を示す理論的根拠を整備し、医学的、医療経済学的に有用性が担保された最適な成人眼検診プログラムを確立、提示していくことが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122044Z