感覚器障害戦略研究

文献情報

文献番号
201122001A
報告書区分
総括
研究課題名
感覚器障害戦略研究
課題番号
H19-感覚・戦略-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
公益財団法人テクノエイド協会(公益財団法人テクノエイド協会)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 邦博(岡山大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 中川 尚志(福岡大学)
  • 宇佐美 真一(信州大学)
  • 岩崎 聡(聖隷クリストファー大学)
  • 麻生 伸(みみはなのど あそうクリニック)
  • 中澤 操(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター)
  • 新谷 朋子(とも耳鼻科クリニック)
  • 工藤 典代(千葉県立保健医療大学)
  • 須藤 正彦(筑波大学)
  • 国末 和也(大阪河崎リハビリテーション大学)
  • 藤本 裕人(国立特別支援教育総合研究所)
  • 藤野 博(東京学芸大学)
  • 武居 渡(金沢大学)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学)
  • 岩田 和彦(大阪府立精神医療センター)
  • 高橋 吾郎(浜松医科大学)
  • 菅谷 明子(岡山大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 濱田 豊彦(東京学芸大学)
  • 高橋 真理子(名古屋市立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の聴覚障害児に対する日本語言語指導方法は標準化されておらず、施設ごとあるいは担当者ごとに異なった方法が実践されているものと推測されている。また、日本語言語指導の効果について科学的に検討された報告は非常に乏しく、いずれも極めて小規模(数名程度)の検証に留まっているのが現状である。このため、効果的な日本語言語指導方法の確立を図ることを目的として、日本語言語指導の共通プロトコルを定め、全国で介入研究を実施することによりその有効性を検討した。
研究方法
介入研究は、平成22年度から継続して実施された介入パイロット研究(プレ介入研究)と、平成23年度に追加実施された介入研究(本研究)から成る。いずれも同一プロトコルで実施されているため、その両者をまとめて検討した。
結果と考察
介入が行われた群は、すべての言語発達スコアにおいて、いずれの比較でも有意なスコア上昇効果を示した。さらに有害事象が見られなかったこととあわせ、介入研究の手法、すなわち評価とそれに基づく指導との一体的実施が有益であることを示していると考えられる。
 一方で、対照群の中にも一部に介入群と同等のスコア増加を示す者も見られた。これは対照群の中でも客観的な言語発達評価に基づく指導を実践されている児がいることを示唆しているとも考えられ、この介入研究手法が決して現場から乖離したものではないことが推測される。
 介入の実施に際しては、指導担当者(介入研究協力者)に対する評価ならびに指導方法の講習と、指導経過中のモニタリングを行った。その有用性や必要性を検証することは困難であるが、不慣れな指導法を実践することから、プロトコルからの逸脱傾向を示すケースが起こり得る印象であった。したがって研究の対象者である聴覚障害児のみならず、指導担当者(主に言語聴覚士)への適切かつ定期的な介入も言語指導を成功に導くうえで重要な要素であると考えられた。
本手法は、対象者に直接的な侵襲がないことから健康被害が生じる恐れは極めて乏しいと考えられたが、有害事象やそれに伴う中止例が見られなかったことでそれを裏付ける結果となった。その一方で家庭環境(保護者の健康状況など)により定期的な指導の継続が困難となる事例が改めて確認されたことから、聴覚障害児に定期的かつ安定的な指導を提供するための社会福祉施策上の対策を検討すべきと考えられた。
結論
聴覚障害児に対する客観的な言語発達評価とそれを基にした科学的な言語指導は、1つのパッケージとして実践することにより、比較的短期間(6ヶ月間・計12回)で成果を上げうることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-11-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201122001B
報告書区分
総合
研究課題名
感覚器障害戦略研究
課題番号
H19-感覚・戦略-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
公益財団法人テクノエイド協会(公益財団法人テクノエイド協会)
研究分担者(所属機関)
  • 福島 邦博(岡山大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 中川 尚志(福岡大学)
  • 宇佐美 真一(信州大学)
  • 岩崎 聡(聖隷クリストファー大学)
  • 麻生 伸(みみはなのど あそうクリニック)
  • 中澤 操(秋田県立リハビリテーション・精神医療センター)
  • 新谷 朋子(とも耳鼻科クリニック)
  • 工藤 典代(千葉県立保健医療大学)
  • 須藤 正彦(筑波大学)
  • 国末 和也(大阪河崎リハビリテーション大学)
  • 藤本 裕人(国立特別支援教育総合研究所)
  • 藤野 博(東京学芸大学)
  • 武居 渡(金沢大学)
  • 城間 将江(国際医療福祉大学)
  • 岩田 和彦(大阪府立精神医療センター)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学)
  • 高橋 吾郎(浜松医科大学)
  • 石橋 達朗(九州大学医学研究院)
  • 清原 裕(九州大学医学研究院)
  • 畑 快右(九州大学)
  • 城田 知子(中村学園大学短期大学部)
  • 熊谷 秋三(九州大学)
  • 内田 和宏(中村学園大学短期大学部)
  • 菅谷 明子(岡山大学耳鼻咽喉・頭頸部外科)
  • 高橋 真理子(名古屋市立大学)
  • 濵田 豊彦(東京学芸大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
課題1:聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究(以下「課題1」とする。)本研究では、検討の対象とする言語を当面「日本語(音声または文字を使用)」とし、特に断りのない限り「日本語」における言語発達を評価し検討することを目的とする。
課題2:視覚障害の発生と重症化を予防する手法に関する介入研究(以下「課題2」とする。)近年の視覚障害の原因疾患の特徴はである加齢黄斑変性について、地域一般住民を対象として大規模な一般住民健診に基づく前向きコホート研究を行い、視覚障害との関連を分析し危険因子や防御因子を明らかにし、視覚障害の予防手段の確立を図ることを目的とする。
研究方法
課題1のアウトカムは「聴覚障害児の言語能力等の向上」であり、「症例対照研究」、「介入研究」の二つから構成される。
課題2は福岡県久山町で全住民を対象にした前向きコホート調査のベースに観察研究によって明らかにされた危険因子や防御因子に対する介入群と対照群に分けた介入を行い、その効果を評価する。
結果と考察
課題1では症例対照研究、介入研究の結果、本邦の聴覚障害児の日本語言語発達を評価するうえで、ALADJINは極めて有益なツールであり、本研究を通して広く全国に浸透が進んでいる。また、聴覚障害児の日本語言語発達を担保するためには、NHSによる早期の難聴発見とともに、それを早期の療育開始に繋げることが極めて重要である。
課題2では疫学調査による観察研究の結果、眼科疾患の発症には生活習慣が密接に関連していることが明らかとなった。
結論
課題1では聴覚障害児に対する客観的な言語発達評価とそれを基にした科学的な言語指導は、1つのパッケージとして実践することにより、比較的短期間(6ヶ月間・計12回)で大きな効果を上げることができると考えられる。
課題2では高齢者の視力低下や失明の主原因となっている加齢黄斑変性は喫煙によりその発症率が大幅に増加し、糖尿病網膜症は適切な血糖値のコントロールや運動による発症が予防されることがわかった。生活習慣の改善は予防可能な因子である。禁煙や食事指導、運動指導などの生活習慣改善により失明や視力低下につながる眼科疾患が予防できることが明らかとなり、この研究結果は今後のわが国の失明予防において重要な役割を果たすと思われる。(平成21年3月末で研究中止)

公開日・更新日

公開日
2012-11-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2018-02-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、通常学級を含む全国の小学校に在籍する高度難聴児に対し統一した言語発達評価を実施した初の大規模疫学調査で、小学校在籍中の聴覚障害児の60%程度に言語発達障害が見られることが判明した。新生児聴覚スクリーニング後の難聴児について就学後までの長期的な効果検証をした場合、就学前の言語発達が良好となるオッズ比は早期療育開始によって3倍以上高くなることが示された。成果は国際学会(IFOS2013:等)で口頭発表、ならびに専門学術誌(Ann Otol Rhinol Laryngol等)に掲載された。
臨床的観点からの成果
就学期の聴覚障害児に日本語言語発達障害が合併した場合に、言語発達評価とこれに基づいた言語聴覚療法による介入を6ヶ月間実施することによって、従来の対応のみを行った場合の約2年間分に相当する言語発達の伸びが達成できた。研究を通じて用いられた日本語言語発達評価パッケージ(ALADJIN)は、全国の医療・教育施設等に普及し言語発達評価の均てん化に資するものとなった。さらに、日本語言語発達評価パッケージに基づく言語聴覚療法のマニュアルも整備した。
ガイドライン等の開発
研究の成果は、現在、人工内耳適応基準等の改訂根拠として活用され検討されている(日本耳鼻咽喉科学会 福祉医療・乳幼児委員会)。また、感覚器障害戦略研究の成果を活用し、言語評価とそれに基づいた指導方法に関するガイドライン「聴覚障害児の日本語言語発達のために」を出版し、全国の聴覚特別支援学校、子ども発達支援センター、医療機関等に配布して普及を促した。
その他行政的観点からの成果
聴覚障害児の日本語言語能力に関する全国規模の疫学データが得られたことによって、今後の聴覚障害児に対する保健福祉行政の重要な基礎資料となると期待される。さらに、聴覚障害児に比較的短期間であっても言語聴覚療法を実施することで顕著な訓練効果が見られ、通常の小学校に通う聴覚障害児が医療機関を利用しながら言語発達を図る選択肢が増えた。このような児童が成人した後の障害程度を軽減することにより、当事者の自立生活に資するだけではなく障害者施策における負担を社会資源や経済の観点からも軽減することが考えられる。
その他のインパクト
東京、名古屋、福岡にて研究成果の親等を目的としたシンポジウムを開催し言語聴覚士、医師、ろう学校教員等156名の参加が得られた。前述の研究成果と言語発達評価法(ALADJIN)をまとめた冊子「聴覚障害児の日本語言語発達のために」は、その後も追加配布希望が多数寄せられ、平成25年春の時点で配布部数は約2,000部に上り、多くの反響とともに潜在的なニーズの存在が浮き彫りになった。また、本研究の成果は教育医事新聞等の専門紙にも取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
研究成果「聴覚障害児の日本語言語発達のために-ALADJINのすすめ-」刊行・配布

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
福島邦博、笠井紀夫、大森佳奈他
Assessment Package for Language Development in Japanese Hearing-Impaired Children(ALADJIN)as a Test Battery for the Development of Practical Communication
Ann Otol Rhinol Laryngoi , 121 (4) , 3-15  (2012)
原著論文2
笠井紀夫、福島邦博、大森佳奈他
Effects of Early Idenntification and Intervention on Language Development in Japanese Children With Prelingual Severe to Profound Hearing Impairment
Ann Otol Rhinol Laryngoi , 121 (4) , 16-20  (2012)
原著論文3
菅谷明子、福島邦博、笠井紀夫他
Language Ability in the Intermediate-Scoring Group of Hearing-Impaired Children
Ann Otol Rhinol Laryngoi , 121 (4) , 21-27  (2012)
原著論文4
藤吉昭江、福島邦博、田口智子他
Syntactic Development in Japanese Hearing-Impaired Children
Ann Otol Rhinol Laryngoi , 121 (4) , 28-34  (2012)
原著論文5
菅谷明子、福島邦博、笠井紀夫他
Language Development,Interpersonal Communication,and Academic Achievement Among Japanese Children as Assessed by the ALADJIN
Ann Otol Rhinol Laryngoi , 121 (4) , 35-39  (2012)
原著論文6
岩崎聡、西尾信哉、福島邦博他
Language development in Japanese children who receive cochlear implant and/or hearing aid
International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology , 76 , 433-438  (2012)
原著論文7
岩崎聡、西尾信哉、福島邦博他
人工内耳装用時期と言語発達の検討
Audiology Japan , 55 , 56-60  (2012)
原著論文8
菅谷明子、福島邦博、笠井紀夫他
当院にて手術を施行した人工内耳装用児の言語発達評価
Audiology Japan , 55 , 126-131  (2012)
原著論文9
西尾信哉、岩崎聡、福島邦博他
難聴児における低出生時体重児の占める割合およびその言語発達に関する検討
Audiology Japan , 55 , 146-151  (2012)
原著論文10
菅谷明子、福島邦博他
新生児聴覚スクリーニングの現状と問題点
外来小児科 , 14 (2) , 119-124  (2011)
原著論文11
笠井紀夫
言語習得前の難聴は言語発達に影響するのか?
JOHNS , 28 (3) , 301-303  (2012)
原著論文12
笠井紀夫
言語発達遅滞では何を考え、何を検査するのか?
JOHNS , 28 (3) , 304-306  (2012)
原著論文13
中澤操
新生児聴覚スクリーニングはなぜ必要なのか?
JOHNS , 28 (3) , 82-83  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-22
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122001Z