文献情報
文献番号
201116001A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の危険因子の解明と予防に関する大規模ゲノム疫学研究
課題番号
H20-認知症・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(九州大学大学院医学研究院 環境医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 神庭 重信(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野・精神医学)
- 岩城 徹(九州大学大学院医学研究院 神経病理学・神経病理)
- 中別府 雄作(九州大学生体防御医学研究所 個体機能制御学部門脳機能制御学分野・分子生物学神経科学)
- 康 東天(九州大学大学院医学研究院 臨床検査医学分野)
- 久保 充明(独立行政法人理化学研究所 横浜研究所 ゲノム医科学研究センター・ゲノム解析)
- 内田 和宏(中村学園大学 食物栄養学科・栄養学、栄養教育論)
- 熊谷 秋三(九州大学健康科学センター 健康と運動の疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
38,666,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書（概要版）
研究目的
福岡県久山町で行われている生活習慣病の疫学調査（久山町研究）において、認知症が日常生活動作（ADL）障害に及ぼす影響を検討した。久山町住民の剖検例において、脂質異常とアルツハイマー病（AD）の病理学的変化との関係を分析した。ゲノム疫学研究の手法によりゲノムワイド研究およびマイクロアレイ解析によってADの遺伝的危険因子を探索した。さらに、食事と運動の面から認知症の予防因子を分析した。
研究方法
①2005年の久山町高齢者調査より、認知症がADL障害に及ぼす影響を検討した。②1988年の久山町健診受診者の追跡調査の成績より、高齢者が生涯に認知症を発症する確率を検討した。③久山町剖検例を対象に、脂質異常とADの病理学的変化の関連を調べた。④久山町の剖検脳やADモデルマウスの脳から採取したRNA検体を用いて、マイクロアレイ解析を行った。⑤九州大学およびバイオバンクジャパンで収集された患者・対照集団を用いて、AD関連遺伝子の同定を試みた。⑥九州大学および久山町で収集された患者・対照集団を用いて、既知のAD関連遺伝子の再現性研究を行った。⑦2005年の高齢者調査に参加した住民のDNA検体を用いて、ミトコンドリア遺伝子多型とADの関係を検討した。⑧食習慣と認知症に関する研究の系統的レビューを行った。⑨1988年の集団の追跡調査の成績より、運度継続状態と認知症発症の関係を検討した。
結果と考察
①久山町の高齢者におけるADL障害者の頻度は20％であった。ADL障害の原因疾患として認知症が32％と最も多かった。②高齢者の55%が死亡するまでに認知症を発症すると推定された。③剖検例の病理学的検討では、高コレステロール血症は老人斑の形成に関与していた。④マイクロアレイ解析では、脳内のインスリン応答に影響を及ぼす遺伝子がADの病理変化に関与した。⑤ゲノムワイド研究では，APOE遺伝子領域以外に有意水準を満たすSNPsを認めなかった。⑥APOE遺伝子とPICALM遺伝子の多型がADと有意な関連を示した。⑦np16227の遺伝子変異の頻度がAD患者群で有意に高かった。⑧DASH食や地中海食による介入研究が多かった。⑨5年間運動を継続した群において全認知症の発症リスクは低下した。
結論
久山町における疫学調査では、認知症はADL障害の主な原因であった。さらに、脂質代謝異常が老人斑の形成に関与することや、APOE遺伝子、PICALM遺伝子、脳内インスリン不応答性に関与する遺伝子がAD発症に関与すること、運動習慣の継続がAD発症のリスクを低下させることが示された。今後、介入試験による予防の可能性を検討する必要性がある。
公開日・更新日
公開日
2012-07-20
更新日
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