文献情報
文献番号
201115008A
報告書区分
総括
研究課題名
腰痛の診断、治療に関する研究「腰部脊柱管狭窄症の診断・治療法の開発」
課題番号
H21-長寿・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 和久(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 山下 敏彦(札幌医科大学 整形外科学)
- 竹下 克志(東京大学 整形外科)
- 吉田 宗人(和歌山県立医科大学 整形外科)
- 永田 見生(久留米大学 整形外科学)
- 田口 敏彦(山口大学 整形外科学)
- 高橋 啓介(埼玉医科大学 整形外科学)
- 紺野 愼一(福島県立医科大学 整形外科学)
- 野原 裕(獨協医科大学 整形外科学)
- 星野 雄一(自治医科大学 整形外科学)
- 谷 俊一(高知大学 整形外科学)
- 千葉 一裕(慶應義塾大学 整形外科学)
- 渡邉 航太(慶應義塾大学 整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,409,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本症は、高齢者の身体活動を低下させる代表的運動器疾患である。わが国では近年、その増加が指摘されてはいるが、全国規模での実態把握は不十分であり、その治療・診断法の確立は喫緊の課題である。本研究は、わが国を代表する脊椎疾患専門の研究者を選任し、本症の正確な頻度、自然経過の調査をもとに、一次検診にて使用可能な診断基準の作成、さらに重症度判定にもとづく、運動器疾患専門医(整形外科医)への紹介指針の作成、新たな予防及び治療法の開発をとおして、高齢者のQOL(生活の質)を高め、介護予防を実現することを目的とした。
研究方法
①地域住民の検診による調査と病院受診者への調査を行った。②和歌山県の2地域で一般住民を対象とした脊椎MRI検診を実施した。③対象を腰部本症の診断サポートツールで7点以上かつ画像上明らかな脊柱管狭窄を認める症例とし、保存療法例、馬尾型、神経根型、混合型について術前、術後1か月、3か月、2年後で評価した。
④自己記入式の質問票により狭窄ありと判定された画像上の硬膜管絞扼の程度が影響を与えているかどうかについて検討した。⑤運動療法開発のため、歩行時の腰背筋の血流動態に関する検討を行った。⑥馬尾性間欠跛行を呈する中心型を対象としたPGE1製剤の脛骨神経F波に及ぼす影響に関するクロスオーバー臨床試験を行った。⑦正中で棘突起を縦割して傍脊柱筋を極力温存して神経組織の除圧を行う「腰椎棘突起縦割式椎弓切除術(縦割術)」を開発した。
④自己記入式の質問票により狭窄ありと判定された画像上の硬膜管絞扼の程度が影響を与えているかどうかについて検討した。⑤運動療法開発のため、歩行時の腰背筋の血流動態に関する検討を行った。⑥馬尾性間欠跛行を呈する中心型を対象としたPGE1製剤の脛骨神経F波に及ぼす影響に関するクロスオーバー臨床試験を行った。⑦正中で棘突起を縦割して傍脊柱筋を極力温存して神経組織の除圧を行う「腰椎棘突起縦割式椎弓切除術(縦割術)」を開発した。
結果と考察
3年目の研究では、通院患者において、身体スコアに関連のある因子としてうつ、MRI画像での狭窄度、年齢が検出され。地域住民の検診では、最大歩行速度が歩行機能の判別に役立ち、プライマリーケア医のための紹介指針は、診断サポートツールが有用である。本症を適切にスクリーニングし、診療所へ保存療法目的で紹介し、保存療法抵抗性の患者を手術目的で大学病院に紹介する流れが有用である。運動療法では、歩行時の腰背筋の血流動態が異なっており、処方する際には、患者の状態に応じた指導が重要である。薬物療法では、PGE1製剤と生理食塩水との間で設定した評価項目の間で有意差が認められなかった。低侵襲手術法の開発では、ラット縦割法モデルにて、低侵襲性が確認され、改善への基礎的データが得られた。
結論
3年間の成果をもとに、本研究により腰部脊柱管狭窄の社会に還元できる診断・治療体系の確立が可能であることが改めて確認されたが、一方で本症に対する更なる研究が重要であることが確認された。
公開日・更新日
公開日
2012-06-18
更新日
-