介護予防における口腔機能向上・維持管理の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201115003A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防における口腔機能向上・維持管理の推進に関する研究
課題番号
H21-長寿・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
菊谷 武(日本歯科大学 生命歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 耕一郎(日本大学 歯学部)
  • 関野 愉(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 渡邊 裕(東京歯科大学)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学 歯学部)
  • 平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 大原 里子(東京医科歯科大学 歯学部)
  • 北原 稔(神奈川県厚木保健福祉事務所)
  • 八重垣 健(日本歯科大学 生命歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,047,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、歯科衛生士等の専門職の事業所への配置を目的とした職業紹介などをモデル事業として実施し、その成果と課題を分析した。歯科衛生士等の専門職の事業所への配置を目的とした職業紹介などをモデル事業として実施し、その成果と課題を分析した。また介護予防を目的とした口腔機能向上サービスの高齢者認知機能への関与度を明確化する目的で調査を行った。本年度は、普及ツールの開発を行うことを目的として以下の研究を行った。
研究方法
 口腔機能向上サービスの事業所への普及・定着を促進するために、運動器向上、口腔機能向上、栄養改善を包括したサービスを実践した。また、口腔内細菌数測定装置を介護現場の口腔ケアに応用した。
 e-Learningシステム構築は、①コンテンツの積み増し、②利用状況の分析、③SNS機能の本運用、を行うこととした。
 認知症高齢者に関する研究では、認知症高齢者への口腔機能向上サービスの効率的なサービス提供方法を認知機能への関与も含め提案することを最終目標とした。
結果と考察
 要介護高齢者に対し、歯科衛生士による口腔ケアの介入により舌背スコア、細菌数に変化が認められた。
 e-learningによる口腔機能向上に関する教育については、受講する価値を見出すために、需要認定等の仕組み作りが急がれること、ユーザの利便性をさらに向上する工夫が課題となる。
 口腔機能向上推進のための新たな教育ツールは、事業を担当する専門的人材の増加を促進し、二次予防事業対象者の事業参加率を高めることにより、口腔機能向上の推進を促す。
 認知症原因疾患別追跡調査では、認知症が進行するに従い介護度の重症化、食事自立度の低下、口腔機能の低下が認められた。また移動能力と嚥下能力において、認知症が重度化する際に認める経年的な変化傾向にADとVaD間に差を認めた。
結論
 複合サービス導入に必要な要件としては歯科衛生士の確保が最も多く、ついで通所事業所のサービスに対する理解であった。
 口腔ケア介入効果の判定に細菌数を用い、その測定に結果が迅速に判明する口腔内細菌数測定装置を用いることは有用である。
 e-learningによる口腔機能向上に関する教育については、受講する価値を見出すために、需要認定等の仕組み作りが急がれること、ユーザの利便性をさらに向上する工夫が課題となる。
 認知症原因疾患別追跡調査では、認知症が進行するに従い、介護度の重症化、食事自立度の低下、口腔機能の低下が認められた。

公開日・更新日

公開日
2012-06-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201115003B
報告書区分
総合
研究課題名
介護予防における口腔機能向上・維持管理の推進に関する研究
課題番号
H21-長寿・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
菊谷 武(日本歯科大学 生命歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 植田 耕一郎(日本大学 歯学部)
  • 関野 愉(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 渡邊 裕(東京歯科大学)
  • 西原 達次(公立大学法人九州歯科大学 歯学部)
  • 平野 浩彦(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 大原 里子(東京医科歯科大学 歯学部)
  • 北原 稔(神奈川県厚木保健福祉事務所)
  • 八重垣 健(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 小坂 健(東北大学 大学院)
  • 柳澤 智仁(東京医科歯科大学 大学院)
  • 相田 潤(東北大学 大学院)
  • 石川 健太郎(昭和大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度に新介護予防給付の選択的サービスとして「口腔機能の向上」サービスが実施され、平成19年度老人保健健康増進等事業による調査結果において、「人材の確保・育成」が課題のひとつとして挙げられた。そこで本研究は、歯科衛生士等の専門職の事業所への配置を目的とした職業紹介などをモデル事業として実施し、その成果と課題を分析すること、普及・定着に重要な事業所についても調査しその推進方法を探ることとした。
研究方法
1.介護予防における口腔機能向上・維持管理のモデル事業に関する研究
歯科衛生士の口腔機能向上サービスに関する意識調査、モデル事業による歯科衛生士の養成、効果的な複合プログラムと、その中で口腔機能向上サービスを実施する際の問題点とその解決法ついての検討を行った。
2.サービス事業希望者に対するe-Learningによる就職支援プログラムの開発と運用
e-Learningや、電子掲示板、SNS(Social Networking Service)などを組み合わせ、適切に情報共有が図れるようにするための研究を展開した。
3.認知症高齢者に対する効率的な口腔機能向上サービス提供法の検討
認知症高齢者への口腔機能向上サービスの効率的なサービス提供方法および当該サービスの認知機能への関与も含め提案、検証した。
結果と考察
1. 口腔機能向上サービスの通所介護事業所への普及・定着の推進について、サービス導入にもっとも必要な要件は、歯科衛生士の確保であった。介護現場で働く歯科衛生士を確保、養成するには、実際の介護現場での実務体験や研修、特に経験者と未経験者による研修が有効であった。
2.口腔内細菌数測定装置の口腔ケアモニタリング装置としての有用性が確認された。
3.e-learningによる口腔機能向上に関する教育については、受講する価値を見出すために需要認定等の仕組み作りが急がれること、ユーザの利便性をさらに向上する工夫が課題となった。
4.認知症原因疾患別追跡調査では、認知症が進行するに従い介護度の重症化、食事自立度の低下、口腔機能の低下が認められた。
結論
本研究事業を通じ、介護予防における口腔機能向上サービスの普及のための方策が示され、サービスの効果を提示した。高齢者が要介護状態になることを予防するための、歯科からの効果的なアプローチ方法の方策や有効性について明らかにすることができたことは、超高齢化社会を迎える我が国にとって、地域社会の活性化にも貢献することに繋がると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201115003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで、口腔ケアには明確な目標とする指標がなかった。本研究によって口腔ケア後には唾液中の細菌数が著しく上昇することを示し、誤嚥を配慮しない口腔ケアはきわめて危険であることを訴えた。さらに要介護高齢者の大規模追跡調査によって低栄養、誤嚥リスクの高い者が肺炎発症のリスクであり、唾液中の細菌数が唾液1mlあたりLog8(cfu/ml)以上を示す者は他のリスクを調整してもなお単独の肺炎発症リスクになることが明らかとなり、肺炎発症の予防を目的とした口腔衛生管理の指標を提案した。
臨床的観点からの成果
開発した口腔内細菌カウンタを介護現場で使用し、誤嚥性肺炎予防を目的とした標準的使用法を提示し、患者に細菌数を示すことで行動変容を起こすのに有効であった。これにより、口腔内細菌が関与するとされる誤嚥性肺炎予防の臨床応用が期待できる。さらに認知症高齢者に対する追跡調査において、認知症が重度化するに従い食事自立度、口腔機能は低下傾向を認め、認知症の重度化に伴う口腔機能低下に配慮した口腔機能向上サービス提供が必要なことが示唆された。また口腔ケアの介入により、認知機能低下予防効果が示された。
ガイドライン等の開発
口腔ケアマネジメントに加えて歯科衛生士による直接介入をしている対象者において、観察期間中の肺炎発症に有意差が認められた。さらに、介護予防における口腔機能向上プログラムの複数プログラムに適した教育ツールを開発し実施した。その結果、RSSTの積算時間、オーラルディアドコキネシス等において効果が認められ、複合サービスの優位性を強調した。これらの結果は、介護給付費分科会にて提出され、平成24年に改正された介護保険における口腔機能維持管理加算および介護予防における選択的サービス複数実施加算の根拠となった。
その他行政的観点からの成果
要介護高齢者の大規模追跡調査によって、唾液中の細菌数が唾液1mlあたりLog8(cfu/ml)以上を示す者は、他のリスクを調整してもなお単独の肺炎発症リスクになることが明らかとなり、肺炎発症の予防を目的とした口腔衛生管理の指標を提案した。
2015年介護保険、経口維持加算に対して、本研究の口腔ケアマネジメントの観点から、その様式例等の作成に携わった。
その他のインパクト
研究期間中には、三大新聞である新聞より誤嚥性肺炎の予防法に関する取材をうけ、複数の記事となっている。また、多くの医科歯科専門誌、一般紙より依頼論文の要請を受け掲載された。臨床応用を行った口腔内細菌カウンタは今春発売され、多くの医療現場、介護現場で応用され始めた。平成24年6月に行われる日本老年歯科医学会シンポジウムにおいて、本研究の成果の一部が報告される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
59件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
64件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
18件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kikutani T, Tamura F, Takahashi Y, et al.
A novel rapid oral bacteria detection apparatus for effective oral care in prevent pneumonia.
Gerodontology , 29 (2) , 560-565  (2012)
原著論文2
Takahashi N, Kikutani T, Tamura F, et al.
Videoendoscopic assessment of swallowing function to predict the future incidence of pneumonia of the elderly.
J Oral Rehabil , 39 (6) , 429-437  (2012)
原著論文3
Kikutani T, Tamura F, Tohara T, et al.
Tooth loss as risk factor for foreign-body asphyxiation in nursing-home patients.
Arch GerontolGeriatr , 54 (3) , 431-435  (2012)
原著論文4
Yoshida M, Kikutani T, Yoshikawa M, et al.
Correlation between dental and nutritional status in community-dwelling elderly Japanese.
Geriatr Gerontol Int , 11 (3) , 315-319  (2011)
原著論文5
Edahiro A, Hirano H, Yamada R, et al.
Factors affecting independence in eating among elderly with Alzheimer's disease.
Geriatr Gerontol Int. 2012 Jan 10. doi: 10.1111/j.1447-0594.2011.00799.x. [Epub ahead of print] , 65-70  (2012)
原著論文6
菊谷武,福井智子,高橋賢晃,他
介護施設における歯科衛生士介入の効果
口腔リハビリ誌 , 24 , 65-70  (2011)
原著論文7
渡邊裕,枝広あや子,伊藤加代子,他
介護予防の複合プログラム効果を特徴づける評価項目の検討‐口腔機能向上 プログラムの評価項目について−
老年歯科医学 , 26 (3) , 327-338  (2011)
原著論文8
久野彰子,菊谷武,田代晴基,他
舌背からの試料採取圧が採取される細菌数に及ぼす影響
老年歯科医学 , 24 (4) , 354-359  (2010)
原著論文9
川名弘剛,菊谷武,高橋賢晃,他
介護老人福祉施設における継続的な口腔機能管理によるかかわりが義歯の装着に与える効果
老年歯科医学 , 25 (1) , 3-10  (2010)
原著論文10
Hamada R, Suehiro J, Nakano M, Kikutani T, et al.
Development of rapid oral bacteria detection apparatus based on dielectrophoretic impedance measurement method.
IET Nanobiotechnol , 5 (2) , 25-31  (2011)
原著論文11
田代晴基,田村文誉,平林正裕,他
新しい簡易口腔内細菌数測定装置の介護現場における臨床応用
障害者歯科 , 33 (1) , 85-89  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2017-10-03

収支報告書

文献番号
201115003Z