バイオニック血圧制御システムの実用化開発

文献情報

文献番号
201114013A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオニック血圧制御システムの実用化開発
課題番号
H21-トランス・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 廣岡 良隆(九州大学大学院 医学研究院 先端循環制御学)
  • 杉町 勝(国立循環器病研究センター研究所 循環動態制御部)
  • 佐藤 隆幸(高知大学教育研究部医療学系)
  • 山越 憲一(金沢大学理工研究域機械工学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
48,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医学の進歩により代表的な血圧調節失調である高血圧は薬剤治療が可能になってきた。しかしながら、圧反射システムそのものが破綻する脊損や全身麻酔下の血圧失調に有効な治療戦略は皆無である。申請者は人工血管運動中枢(バイオニックブレイン)を自律神経系と融合させることにより、圧反射機能を再建するバイオニック血圧制御システムを世界で初めて実現した。本研究は当該開発を実用化するための前臨床試験・臨床試験を行うことを目標にする。
研究方法
(1)脊損患者の血圧制御システム:脊損患者の交感神経を非侵襲的に皮膚を介して電気刺激し、血圧の制御を実現する。電気刺激部位の最適化、経皮的電気刺激の最適化、制御論理の最適化、さらに瞬時血圧測定装置の開発を行う。(2)術中血圧制御システム:バイオニック血圧制御システムにより術中血圧を安定化させる基盤技術はすでに開発されている。実用化には硬膜外電極による脊髄刺激条件の最適化、制御論理の最適化、全体のシステム化、安全性試験が必要である。これらの開発と共に、期間内に企業と連携して前臨床試験および臨床試験を行う。
結果と考察
(1)脊損患者の血圧制御システム:広範囲の皮膚刺激に応じて血圧は変化した。血圧応答は大腿部から下腹部にかけて大きく変化した。最終仕様として、下腹部を中心に刺激を行うこととした。長期に渡り、慣れ現象を回避する条件が抽出された。制御器は固定パラメター方式でも、パラメターを適切に選択すれば、大部分の状況において、robustな制御ができることが明らかになった。しかしながら、実環境で使用された場合を考慮すると、さらなる頑健な制御論理を必要するものと思われた。瞬時血圧測定装置も基本仕様を満たす試作装置が完成した。(2)術中血圧制御システム:動脈圧反射の機能再建デバイスとして臨床応用可能なバイオニック血圧制御システムを開発する。ヒトの血管運動性交感神経を刺激する方法として,硬膜外カテーテル電極を用いた方法を採用した。本年度は全身麻酔中の患者を対象に,硬膜外腔からの電気刺激に対する動脈圧応答を伝達関数として同定し、制御理論を開発した。術中低血圧モデルにおける有効性を明らかにすることができた。
結論
バイオニック血圧制御の枠組みは、臨床例でも有効に機能することが示された。既に開始しているPMDAとの相談を通じ、早期に臨床治験を行い実用化をはかる。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201114013B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオニック血圧制御システムの実用化開発
課題番号
H21-トランス・一般-013
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 廣岡 良隆(九州大学大学院 医学研究院 先端循環制御学)
  • 杉町 勝(国立循環器病研究センター研究所 循環動態制御部)
  • 佐藤 隆幸(高知大学教育研究部医療学系)
  • 山越 憲一(金沢大学理工研究域機械工学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医学の進歩により代表的な血圧調節失調である高血圧は薬剤治療が可能になってきた。しかしながら、圧反射システムそのものが破綻する脊損や全身麻酔化の血圧失調に有効な治療戦略はない。申請者は人工血管運動中枢(バイオニックブレイン)を自律神経系と融合させることにより、圧反射機能を再建するバイオニック血圧制御システムを世界で初めて実現した。本研究は当該開発を実用化するための前臨床試験・臨床試験を行うことを目標にする。
研究方法
(1)脊損患者の血圧制御システム:脊損患者の交感神経を非侵襲的に皮膚を介して電気刺激し、血圧を制御する。電気刺激部位の最適化、電気刺激の条件の最適化、制御論理の最適化、さらに瞬時血圧測定装置の開発を行った。(2)術中血圧制御システム:バイオニック血圧制御システムにより術中血圧を安定化させる基盤技術はすでに開発されている。実用化には硬膜外電極による脊髄刺激条件の最適化、制御論理の最適化、全体のシステム化、安全性試験が必要である。これらの開発と共に、期間内に企業と連携して前臨床試験および臨床試験を行う。
結果と考察
(1)脊損患者の血圧制御システム:広範囲の皮膚刺激に応じて血圧は変化した。最終仕様として、下腹部を中心に刺激を行うこととした。長期に渡り、慣れ現象を回避する条件が抽出された。制御器は固定パラメター方式でも、robustな制御ができることが明らかになった。しかしながら、実環境で使用された場合を考慮すると、さらなる頑健な適応制御を必要するものと思われた。瞬時血圧測定装置も試作装置が完成した。全体をまとめた2次試作装置が完成した。倫理審査委員会の承認を受け、すでに臨床試験を開始している。(2)術中血圧制御システム:動脈圧反射の機能再建デバイスとして臨床応用可能なバイオニック血圧制御システムを開発する。ヒトの血管運動性交感神経を刺激する方法として、硬膜外カテーテル電極を用いた方法を採用した。本年度は全身麻酔中の患者を対象に、硬膜外腔からの電気刺激に対する動脈圧応答を伝達関数として同定し、制御理論を開発した。術中低血圧モデルにおける有効性を明らかにすることができた。
結論
バイオニック血圧制御の枠組みは、臨床例でも有効に機能することが示された。既にPMDAとの治験相談は開始しており、早期の実用化をめざす。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201114013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脊損や全身麻酔などにより生ずる中枢性血圧失調に有効な治療はない。我々は人工血管運動中枢を用いた低血圧を克服する治療システムを開発した。脊損患者は皮膚を電気刺激することで昇圧する。その動特性をモデル化し制御器を設計した。血圧に応じて皮膚を電気刺激することで、血圧の安定化が実現した。術中血圧は血管運動中枢の機能が低下し不安定化する。全身麻酔患者の硬膜外腔からの電気刺激し、血圧応答を求めた。その特性をモデル化し最適の制御器を設計した。血圧を帰還することにより、血圧が安定化した。
臨床的観点からの成果
これらの患者には従来は治療法がない。脊損患者は深刻な起立性低血圧を起こし、臥床を余儀なくされる。そのため誤嚥性肺炎などの感染症で短命である。開発した技術を用いることで、患者は座位をとることができ、感染症を防ぐことができる。その結果、QOLの改善のみならず、延命も可能と考えている。全身麻酔中の患者では血管運動中枢の機能が低下し、少量の出血や、血液分布の変化で深刻な低血圧を起こし医療事故につながる。開発された装置を用いることで術中患者の血圧を安定化させることができ、安全・安心な医療に貢献した。
ガイドライン等の開発
PMDAとは事前相談中である。脊損患者の治療システムを構成する個別の電気刺激装置等はすでに医療機器として承認されている。負帰還をかけて血圧を制御するところをどのように承認していくか、ガイドラインも作成されておらず、PMDAとの個別の検討が続いている。術中血圧制御装置も同様に構成要素の装置の承認は既にある。しかしながら、負帰還をかけたシステム全体として、どのように承認すべきか、ガイドラインがない。個別の事前相談が続いている。
その他行政的観点からの成果
世界に類いのない、日本初でかつその医療におけるインパクトが大きな技術として先端医療開発特区(スーパー特区)に指定された。
その他のインパクト
成果は新聞でとり上がられるとともに(2006年12月16日 産経新聞、2008年12月17日 読売新聞・西日本新聞、2010年11月18日 日刊工業新聞)、TV放送された。(2010年3月3日 毎日放送)

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
107件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
74件
学会発表(国際学会等)
105件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hosokawa K, Funakoshi K, Tanaka A et al.
Artificial baroreflex system restores volume tolerance in the absence of native baroreflex.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 2011 , 697-699  (2011)
原著論文2
Sakamoto T, Murayama Y, Tanaka A et al.
Impact of baroreflex on venous return surface.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 2011 , 4295-4296  (2011)
原著論文3
Kamiya A, Kawada T, Shimizu S et al
Closed-loop spontaneous baroreflex transfer function is inappropriate for system identification of neural arc but partially appropriate for peripheral arc: predictability analysis.
J Physiol. , 589 , 1769-1790  (2011)
原著論文4
Shimizu S, Akiyama T, Kawada T et al
Centrally administered ghrelin activates cardiac vagal nerve in anesthetized rabbits.
Auton Neurosci. , 162 , 60-65  (2011)
原著論文5
Shimizu S, Une D, Shishido T et al
Norwood procedure with non-valved right ventricle to pulmonary artery shunt improves ventricular energetics despite the presence of diastolic regurgitation: a theoretical analysis.
J Physiol Sci. , 61 , 457-465  (2011)
原著論文6
Shimizu S, Akiyama T, Kawada T et al
Medetomidine, an α(2)-Adrenergic Agonist, Activates Cardiac Vagal Nerve Through Modulation of Baroreflex Control.
Circ J. , 76 , 152-159  (2011)
原著論文7
Yamamoto H, Kawada T, Kamiya A et al
Involvement of the mechanoreceptors in the sensory mechanisms of manual and electrical acupuncture.
Auton Neurosci. , 160 , 27-31  (2011)
原著論文8
Kawada T, Shimizu S, Li M et al
Contrasting effects of moderate vagal stimulation on heart rate and carotid sinus baroreflex-mediated sympathetic arterial pressure regulation in rats.
Life Sci. , 89 , 498-503  (2011)
原著論文9
Sakamoto T, Murayama Y, Tobushi T et al.
How to quantitatively synthesize dynamic changes in arterial pressure from baroreflexly modulated ventricular and arterial properties.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 2010 , 2869-2871  (2010)
原著論文10
Sunagawa K, Sugimachi M.
Development of artificial bionic baroreflex system.
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. , 2010 , 3446-3448  (2010)
原著論文11
Une D, Shimizu S, Kamiya A et al
Both skeletonized and pedicled internal thoracic arteries supply adequate graft flow after coronary artery bypass grafting even during intense sympathoexcitation.
J Physiol Sci. , 60 , 407-413  (2010)
原著論文12
Mizuno M, Kawada T, Kamiya A et al
Dynamic characteristics of heart rate control by the autonomic nervous system in rats.
Exp Physiol. , 95 , 919-925  (2010)
原著論文13
Kawada T, Akiyama T, Shimizu S et al
Large conductance Ca2+-activated K+ channels inhibit vagal acetylcholine release at the rabbit sinoatrial node.
Auton Neurosci. , 156 , 149-151  (2010)
原著論文14
Kawada T, Li M, Kamiya A et al
Open-loop dynamic and static characteristics of the carotid sinus baroreflex in rats with chronic heart failure after myocardial infarction.
J Physiol Sci. , 60 , 283-298  (2010)
原著論文15
Shimizu S, Akiyama T, Kawada T et al
In vivo direct monitoring of interstitial norepinephrine levels at the sinoatrial node.
Auton Neurosci. , 152 , 115-118  (2010)
原著論文16
Shimizu S, Shishido T, Une D et al
Right ventricular stiffness constant as a predictor of postoperative hemodynamics in patients with hypoplastic right ventricle: a theoretical analysis.
J Physiol Sci. , 60 , 205-212  (2010)
原著論文17
Seo K, Inagaki M, Nishimura S et al
Structural heterogeneity in the ventricular wall plays a significant role in the initiation of stretch-induced arrhythmias in perfused rabbit right ventricular tissues and whole heart preparations.
Circ Res. , 106 , 176-184  (2010)
原著論文18
Ogawa M, Nogawa M, Yamakoshi T et al
Evaluation of cardiovascular stress reaction using HPCD method on a beat-by-beat basis.
Advances in Natural Science. , 3 , 128-132  (2010)
原著論文19
Kawada T, Kamiya A, Li M et al
High levels of circulating angiotensin II shift the open-loop baroreflex control of splanchnic sympathetic nerve activity, heart rate and arterial pressure in anesthetized rats.
J Physiol Sci. , 59 , 447-455  (2009)
原著論文20
Sasaki H, Asanuma H, Fujita M et al
Metformin prevents progression of heart failure in dogs: role of AMP-activated protein kinase.
Circulation , 119 , 2568-2577  (2009)

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201114013Z