Claudin binder修飾ナノリポソームを利用した上皮癌の早期診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201111012A
報告書区分
総括
研究課題名
Claudin binder修飾ナノリポソームを利用した上皮癌の早期診断・治療法の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昌夫(国立大学法人 大阪大学 大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 亮(帝京大学 薬学部)
  • 阿部 康弘(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
上皮細胞が癌化すると、分裂軸が水平方向から垂直方向に回転し、細胞間隙面に局在するclaudin (CL)を表面に露出した状態で増殖を開始する可能性が示唆されている。そこで本研究では、上皮細胞の癌化超早期イベントである分裂軸の回転に着目した癌診断・治療用ナノメディシンの創出を試みる。
研究方法
現在までに、CL-4 binderであるC-CPEを用いて、CL-4指向性トキシンが正常な上皮細胞と比較して癌細胞に対して強い細胞障害性を示すこと、腫瘍内投与のみならず静脈内投与によって副作用を伴うことなくin vivo抗腫瘍活性を有することを見出した。さらに、CL提示バキュロウイルス(BV)を利用したCL binderスクリーニング系を構築した。
本年度は、1)引き続きBVシステムなどを用いて新規CL binderの創製を試み、2)CL結合特性などを解析、3)リポソーム修飾条件の設定を試みた。
結果と考察
1)新規CL binderの創製:C-CPEの立体構造情報を基にC-CPEに比して20倍以上高いCL-4結合性を有する分子の創製に成功した。また、機能ドメインを改変したC-CPE変異体ライブラリを用いて、CL-1結合性を示すC-CPE変異体m19の取得に成功した。
2)新規CL binderのCL結合特性解析:m19のCL結合特性を解析したところ、CL-1のみならず、CL-2、CL-3、CL-4、CL-5などに結合性を示していたことから、m19は広域CL binderである可能性が示唆された。
3)CL binder修飾リポソームのin vitro活性解析: C-CPEに比して20倍強いCL-4結合性を有していたC-CPE変異体を用いてCL-4指向性リポソームの作製条件を設定した。
結論
以上、現在までの検討により、CLを標的とした癌治療戦略の有用性を見出し、CL binder創製系を構築した。さらに、高親和性CL-4 binder、広域CL binderの創製に成功し、現在高親和性CL binderを用いたCL指向性リポソームの作製を進めている。今後は引き続きCL指向性分子のスクリーニングを進めると同時に随時CL指向性リポソームを作製、CL指向性や抗腫瘍活性を解析し、CL指向性ナノメディシンの実用化を目指した研究を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201111012B
報告書区分
総合
研究課題名
Claudin binder修飾ナノリポソームを利用した上皮癌の早期診断・治療法の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 昌夫(国立大学法人 大阪大学 大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 亮(帝京大学 薬学部)
  • 阿部 康弘(独立行政法人 医薬基盤研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
上皮細胞が癌化すると、水平方向から垂直方向に分裂軸の回転が引き起こされ、細胞間隙面に局在するclaudin (CL)を表面に露出した状態で増殖する可能性が指摘されている。そこで本研究では、上皮細胞の癌化超早期イベントである分裂軸の回転に着目した癌診断・治療法を検証し、さらにナノメディシン創出に向けた基礎的検討を試みた。
研究方法
CL-4 binder(C-CPE)をモデルリガンドとして用い、蛋白合成阻害因子(PSIF)との融合蛋白質を作製した。Caco-2、4T1細胞を用いて抗腫瘍活性を解析した。
また、C-CPEの立体構造情報を基にC-CPE変異体を作製した。さらに、CL提示バキュロウイルス(BV)を用いたCL binderスクリーニング系を構築、CL提示BV免疫CL欠損マウスを用いて一本鎖抗体(scFv)ライブラリおよびC-CPE変異体ライブラリを作製し、新規CL binderの創製を試みた。
結果と考察
Caco-2細胞はプレコンフルエント状態では結腸癌様の形態、コンフルエント状態では極性を有する上皮様の形態をとることが知られている。そこで、プレコンフルエントおよびコンフルエント状態の細胞を用いてC-CPE-PSIFの感受性を解析したところ、C-CPE-PSIFはプレコンフルエント状態の細胞に対して顕著な細胞毒性を示していた。C-CPE-PSIFを担癌マウスの腫瘍内および静脈内投与したところ、CL-4発現臓器である肝臓や腎臓に対する障害性を示すことなく、抗腫瘍活性を発揮した。
CLを標的とした癌治療では、CL結合分子の創製が成否を握っている。そこで、C-CPEおよびscFvライブラリを用いて新規CL binderの創製を試み、高親和性CL-4 binder、広域CL binderなどの創製に成功し、幾つかのCL binderについてリポソーム修飾条件を設定した。
結論
以上、これまでに、CLを標的とした癌治療戦略を提唱、CL binder創製系を構築、高親和性CL-4 binder、広域CL binderの創製に成功した。現在、CL指向性リポソームの作製を進めると同時に、引き続きCL指向性分子のスクリーニングを進めている。今後は、本事業で確立したCL指向性ナノメディシン創製基盤をシステムアップすることで実用化を図りたい。

公開日・更新日

公開日
2012-05-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201111012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、悪性腫瘍の90%を占める上皮癌において、癌化に伴い局在性が変化するタイトジャンクション構成蛋白質claudinを標的とした癌ターゲテイング法が副作用を伴うことなく抗腫瘍効果を発揮すること、claudinの発現量でなく局在性を認識して作用することを見出し、claudinを標的とした癌ターゲテイングの有用性を明らかにした。今後は本成果を有効活用することで、claudinを標的としたナノメデシンの創出を進めていく予定である。
臨床的観点からの成果
マウスの肺自然転移モデルを用いて抗腫瘍活性を解析したところ、原発巣(皮下腫瘍)の腫瘍増殖を有意に抑制した上に肺への自然転移をほぼ完全に阻害していた。癌による死因の多くはがん転移によること、悪性腫瘍の90%が上皮由来であることを考慮すると、claudinを標的とした癌治療戦略は臨床的意義が高い。現在、本研究成果をシステムアップすることで、claudinを標的とした癌治療法の開発を進めているところである。
ガイドライン等の開発
該当事項なし
その他行政的観点からの成果
該当事項なし
その他のインパクト
日本薬学会第131年会(静岡)にてclaudinを標的とした創薬研究に関するシンポジウムを企画した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
74件
学会発表(国際学会等)
54件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本薬学会第131年会(静岡)にてclaudinを標的とした創薬研究に関するシンポジウムを企画した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Abe Y., Yoshikawa T., Inoue M., et al.
Fine tuning of receptor-selectivity for tumor necrosis factor-α using a phage display system with one-step competitive panning
Biomaterials , 32 (23) , 5498-5504  (2011)
原著論文2
Imai S, Nagano K, Yoshida Y, et al.
Development of a novel antibody proteomics system using a phage antibody library for efficient screening of tumor-related biomarker proteins
Biomaterials , 32 (1) , 162-169  (2011)
原著論文3
Takahashi A, Kondoh M, Uchida H, et al.
Mutated C-terminal fragments of Clostridium perfringens enterotoxin have increased affinity to claudin-4 and reversibly modulate tight junctions in vitro
Biochem Biophys Res Commun , 410 , 466-470  (2011)
原著論文4
Kakutani H, Kondoh M, Saeki R, et al.
Claudin-4-targeting of diphtheria toxin fragment A using a C-terminal fragment of Clostridium perfringens enterotoxin
Eur J Pharm Biopharm , 75 , 213-217  (2010)
原著論文5
Kakutani H, Kondoh M, Fukasaka M, et al.
Mucosal vaccination using claudin-4 targeting
Biomaterials , 31 , 5463-5471  (2010)
原著論文6
Saeki R, Kondoh M, Kakutani H, et al.
A novel tumor-targeted therapy using a claudin-4-targeting molecule
Mol Pharmacol , 76 , 918-926  (2009)
原著論文7
Uchida H, Kondoh M, Hanada T, et al.
A claudin-4 modulator enhances the mucosal absorption of a biologically active peptide
Biochem Pharmacol , 79 , 1437-1444  (2010)
原著論文8
Suzuki H, Kakutani H, Kondoh M, et al.
The safety of a mucosal vaccine using the C-terminal fragment of Clostridium perfringens enterotoxin
Pharmazie , 10 , 766-769  (2010)
原著論文9
Saeki R, Kondoh M, Kakutani H, et al.
A claudin-targeting molecule as an inhibitor of tumor metastasis
J Pharmacol Exp Ther , 334 , 576-582  (2010)
原著論文10
Kakutani H, Takahashi A, Kondoh M, et al.
A novel screening system for claudin binder using baculoviral display
PLoS ONE , 6 , 16611-  (2011)
原著論文11
Suzuki H, Kondoh M, Li X, et al.
A toxicological evaluation of a claudin modulator, C-terminal fragment of Clostridium perfringens enterotoxin, in mice
Pharmazie , 66 , 543-546  (2011)
原著論文12
Iida M, Yoshida T, Kondoh M, et al.
A Baculoviral Display System to Assay Viral Entry
Biol Pharm Bull , 36 , 1867-1869  (2013)
原著論文13
Li X, Saeki R, Kondoh M, et al.
Tissue distribution and safety evaluation of a claudin-targeting molecule, the C-terminal fragment of Clostridium perfringens enterotoxin
Eur J Pharm Sci , 52 , 132-137  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201111012Z