文献情報
文献番号
201111007A
報告書区分
総括
研究課題名
頚動脈洞神経マイクロマシンによって圧反射性に自律神経を自動制御し、心不全を抑制する医療の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
研究分担者(所属機関)
- 杉町勝(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
- 川田徹(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
41,284,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の慢性心不全患者は100万人を越え、高齢化社会において増加中であるが、その死亡率は悪性癌に匹敵するほど高い。慢性心不全では、脳が不合理に働いて自律神経が異常(交感神経増加・迷走神経低下)となり、心臓を過剰刺激して病勢を増悪させる。これを是正する実験的神経治療が生存率を格段に改善した(Circulation 2004)。しかし現存のヒト薬物治療や神経医療は治療効果不十分である。そこで本研究は、全身の循環系自律神経を適切に制御するようなマイクロマシン神経医療による、心不全治療システムを開発することを目的とする。
研究方法
まず、生体の神経性血圧調節システムの工学的な仕組みを、システム同定する。これを基に、システム神経循環生理研究によって、圧反射求心路(頚動脈洞)を刺激するマイクロマシン神経医療を開発し、この神経刺激によって全身の循環器系臓器(心臓血管腎臓等)の交感神経を全て抑制し、且つ迷走神経のうち心臓枝を刺激し、消化管刺激による副作用のない方法を開発する。これを心不全動物の治療実験で試用し、治療効果を検討する。
結果と考察
連携企業との産学官連携下にMEMS技術を駆使して、刺激部(神経束から目的線維を選択記録刺激するマイクロマシン)、計測部(治療効果を定量化する心拍血圧自律神経モニター)を試作した。これらを用いて、動物実験(正常心・慢性心不全)において、頚動脈洞等の刺激に対する自律神経応答(圧反射中枢特性)および自律神経変化による血圧心拍数応答(末梢特性)を実測しシステム同定しモデル化した。またシミュレーションを利用して、治療を自動調節する制御部を開発した。これらを刺激部-計測部-制御部の閉ループ生体制御に統合し、システム医療を試作した。これを急性動物実験で試し、実際に、頚動脈洞等の刺激(電流・周波数等)を自動調節して、脳に血圧ダミー信号(実圧より高い仮想圧信号)を送り、圧反射性に全身の循環系自律神経を設定値に自動制御(交感神経抑制・迷走神経刺激)し、急性心不全を抑制した(死亡率低減)。さらに長期間の慢性動物実験等によって心不全治療に効果があり、また身体低侵襲かつ安全であることなど、本治療の有効性を確認した。
結論
血圧調節のシステム医工学研究に基づく、先端工学的な神経介入や生体閉ループ制御は、
心不全治療に著効することを明らかにした。今後の、研究継続や実用化推進が必要である。
心不全治療に著効することを明らかにした。今後の、研究継続や実用化推進が必要である。
公開日・更新日
公開日
2012-08-13
更新日
-