細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究

文献情報

文献番号
201106006A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究
課題番号
H21-再生・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 正人(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿久津 英憲(国立成育医療研究センター研究所 生殖細胞医療研究部)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 石原 美弥(防衛医科大学校 医用工学講座)
  • 村井 邦彦(自治医科大学 麻酔科学集中治療医学講座)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部)
  • 三谷 玄弥(東海大学 医学部)
  • 沓名 寿治(東海大学 医学部)
  • 海老原 吾郎(東海大学 医学部)
  • 長井 敏洋(東海大学 医学部)
  • 小久保 舞美(東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
45,314,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来修復困難と考えられてきた関節軟骨部分損傷に対して、温度応答性培養皿で作製した積層化軟骨細胞シートによる関節軟骨修復再生効果を世界で初めて報告し、修復能力に富んだ積層化軟骨細胞シートの特性を明らかにした。細胞シートによる修復・再生効果を確認し、細胞シート工学という日本オリジナルな技術による関節治療を目指し、自己細胞による臨床研究の早期実現と同種細胞による将来的な実用化のための基礎的な検討を行う。
研究方法
1.細胞シートの構築に適した軟骨細胞等の評価に関する研究を行う。
2.移植細胞動態の解析をBioluminescenceによる経時的評価を行う。
3.ミニブタによる同種移植により安全性と有効性を確認する。
4.細胞シートの免疫調節効果に関する研究を行う。
5.細胞シートの保存法に関する研究を行う。
6.ヒト幹指針に則り厚労省へ申請し、臨床研究を行う。
結果と考察
1.軟骨細胞、滑膜細胞のマーカーを確定し、ヒト幹細胞臨床研究の品質評価として使用。
2.移植細胞動態に関する研究として、ルシフェラーゼを強発現するTgラットの細胞で作製した積層化軟骨細胞シートを作製し、関節内での細胞シートの生存期間を確認した。
3.ミニブタによる同種移植の有効性評価として、同種のミニブタ膝関節において自然修復しない大きさの骨軟骨全層欠損を作製し、同種軟骨細胞シート移植による治療効果を確認した。
4.同種軟骨細胞および同種積層化軟骨細胞シートが免疫系に与える影響をin vitroで検討し、積層化軟骨細胞シートは活性化T細胞増殖抑制効果を維持していることが確認できた。
5.軟骨細胞シートの凍結保存法として、実用性の高いガラス化保存法の開発に成功した。
結論
本研究事業の主要課題である「自己細胞シートによる軟骨再生医療の臨床研究」並びに「同種細胞シート移植のための技術開発に関する研究」は何れも、当初の予想以上の成果が得られた。特筆すべきは、「細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」に関して平成23年3月3日にヒト幹細胞臨床研究として厚生労働省へ申請し、同年10月3日に厚生労働大臣の意見書の発出をもって承認された。現在までに2例の患者に臨床応用し、経過は良好である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201106006B
報告書区分
総合
研究課題名
細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究
課題番号
H21-再生・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 正人(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿久津 英憲(国立成育医療研究センター研究所 生殖細胞医療研究部)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部)
  • 石原 美弥(防衛医科大学校 医用工学講座)
  • 村井 邦彦(自治医科大学 麻酔科学集中治療学講座)
  • 加藤 玲子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部)
  • 三谷 玄弥(東海大学 医学部)
  • 沓名 寿治(東海大学 医学部)
  • 海老原 吾郎(東海大学 医学部)
  • 長井 敏洋(東海大学 医学部)
  • 小久保 舞美(東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来修復困難と考えられてきた関節軟骨部分損傷に対して、温度応答性培養皿で作製した積層化軟骨細胞シートによる関節軟骨修復再生効果を世界で初めて報告し、修復能力に富んだ積層化軟骨細胞シートの特性を明らかにした。細胞シートによる修復・再生効果を確認し、細胞シート工学という日本オリジナルな技術による関節治療を目指し、自己細胞による臨床研究の早期実現と将来的な実用化のため、同種細胞による細胞シートの導入に向けて基礎的な検討を行う。
研究方法
1.細胞シートの構築に適した軟骨細胞等の評価に関する研究を行う。
2.移植細胞動態の解析をBioluminescenceによる経時的評価を行う。
3.ミニブタによる同種移植により安全性と有効性を確認する。
4.細胞シートの免疫調節効果に関する研究を行う。
5.細胞シートの保存法に関する研究を行う。
6.ヒト幹指針に則り厚労省へ申請し、臨床研究を行う。
結果と考察
1.軟骨細胞、滑膜細胞のマーカーを確定し、ヒト幹細胞臨床研究の品質評価として使用。
2.移植細胞動態に関する研究として、ルシフェラーゼを強発現するTgラットの細胞で作製した積層化軟骨細胞シートを作製し、関節内での細胞シートの生存期間を確認した。
3.ミニブタによる同種移植の有効性評価として、同種のミニブタ膝関節において自然修復しない大きさの骨軟骨全層欠損を作製し、同種軟骨細胞シート移植による治療効果を確認した。
4.同種軟骨細胞および同種積層化軟骨細胞シートが免疫系に与える影響をin vitroで検討し、積層化軟骨細胞シートは活性化T細胞増殖抑制効果を維持していることが確認できた。
5.軟骨細胞シートの凍結保存法として、実用性の高いガラス化保存法の開発に成功した。
結論
本研究事業の主要課題である「自己細胞シートによる軟骨再生医療の臨床研究」並びに「同種細胞シート移植のための技術開発に関する研究」は何れも、当初の予想以上の成果が得られた。特筆すべきは、「細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」に関して平成23年3月3日にヒト幹細胞臨床研究として厚生労働省へ申請し、同年10月3日に厚生労働大臣の意見書の発出をもって承認された。現在までに2例の患者に臨床応用し、経過は良好である。本研究事業成果を次につなげ、関節軟骨の再生医療の普及に可及的速やかに役立つような方策を検討し、関係者と共に実施していく所存である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201106006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
変形性関節症において常に混在する軟骨部分損傷(軟骨内に留まる損傷)と全層欠損(軟骨下骨まで達する損傷)の両タイプの軟骨損傷に対して、我々は軟骨細胞シートによる修復・再生効果を動物実験で確認してきた。本研究事業では、臨床研究にまで移行するというトランスレーショナルリサーチとしての大きな課題があり、軟骨細胞シートの安全性を証明するために各種研究を実施し、有効性と安全性が担保されることを確認した。また、同種細胞シート移植のための技術開発に関する研究では、論文、特許等で業績を報告した。
臨床的観点からの成果
自己細胞を用いた「細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」は、平成23年10月3日に厚生労働大臣の意見書の発出をもって承認された。8症例に臨床応用し、平成26年12月に臨床研究を終了した。移植術後は、全例が順調に回復し、重篤な有害事象は生じていない。軟骨細胞シート移植による、安全で有効な関節軟骨再生効果が得られている。
同種細胞を用いた「同種細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究」は、平成26年8月6日に厚生労働大臣の意見書の発出をもって承認された。
ガイドライン等の開発
①厚生労働省委託事業 次世代医療機器評価指標作成事業 再生医療分野 審査WG委員(平成25年)「同種iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に関する評価指標」作成
②厚生労働省委託事業 次世代医療機器評価指標作成事業 再生医療分野 審査WG座長(平成26年)「鼻軟骨再生に関する評価指標」作成
③厚生労働省委託事業 次世代医療機器評価指標作成事業 再生医療分野 審査WG座長(平成27年)「軟骨細胞又は体性幹細胞加工製品を用い関節軟骨再生に関する評価指標」、「同種iPS(様)細胞加工製品を用いた関節軟骨再生に関する評価指標」作成
その他行政的観点からの成果
【自己細胞を用いた臨床研究】
①厚生労働大臣通知「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」厚生労働省発医政1003第3号(平成23年10月3日)
②第2種再生医療等提供計画 受理(平成28年3月11日)
【同種細胞を用いた臨床研究】
①厚生労働大臣通知「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」厚生労働省発医政0806第9号(平成26年8月6日)
②第1種再生医療等提供計画 受理(平成28年4月28日)
その他のインパクト
①日経バイオテクOn Line 2014年6月30日「国内初の他家軟骨再生医療、東海大が実施を計画、乳児指軟骨細胞から作製」 ②読売新聞 朝刊 2014年7月23日〔医療ルネサンス〕進む再生医療〈3〉膝軟骨補う細胞シート ③読売新聞 夕刊 2014年8月16日 高齢者の膝痛、他人の軟骨細胞移植で治療計画 ④テレビ朝日 2013年7月4日 報道ステーション「2,500万人患者に光明 高齢者に多い膝の痛み 軟骨の再生医療最前線」 ⑤TBS 2014年9月21日 健康カプセル!ゲンキの時間「ひざ痛」

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
28件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
158件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
2件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
8件
その他成果(普及・啓発活動)
18件

特許

特許の名称
培養細胞シート、製造方法及びその利用方法
詳細情報
分類:
発明者名: 佐藤正人 外1名
出願年月日: 20110725
国内外の別: 国内
特許の名称
凍結細胞シートの製造方法
詳細情報
分類:
発明者名: 長嶋比呂志、佐藤正人 外4名
出願年月日: 20111129
国内外の別: 国内
特許の名称
培養細胞シート、製造方法及びその利用方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5562303号
発明者名: 佐藤正人 外1名
取得年月日: 20140620
国内外の別: 国内
特許の名称
凍結細胞シートの製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5915977号
発明者名: 長嶋比呂志、佐藤正人 外4名
取得年月日: 20160415
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mitani G, Sato M, Lee JI, et al.
The properties of bioengineered chondrocyte sheets for cartilage regeneration.
BMC Biotechnology , 9 (17)  (2009)
doi: 10.1186/1472-6750-9-17
原著論文2
Sato M
Chapter10:Cell sheet technologies for cartilage repair.
Regenerative medicine and biomaterials for the repair of connective tissues , 251-265  (2010)
原著論文3
Sato M, Ishihara M, Mitani G, et al.
Chapter 7: Development of a diagnostic system for osteoarthrit is using a photoacoustic measurement method and time-resolved auto-fluorescence.
Bioengineering:Principles, Methodologies and Applications , 179-190  (2010)
原著論文4
Sato M, Ishihara M, Kikuchi M, et al.
A diagnostic system for articular cartilage using non-destructive pulsed laser irradiation.
Lasers in Surgery and Medicine , 43 (5) , 421-432  (2011)
原著論文5
Ebihara G, Sato M, Yamato M, et al.
Cartilage repair in transplanted scaffold-free chondrocyte sheets using a minipig model.
Biomaterials , 33 (15) , 3846-3851  (2012)
原著論文6
Ito S, Sato M, Yamato M, et al.
Repair of articular cartilage defect with layered chondrocyte sheets and cultured synovial cells.
Biomaterials , 33 (21) , 5278-5286  (2012)
原著論文7
Ukai T, Sato M, Akutsu H, et al.
MicroRNA-199a-3p, microRNA-193b, and microRNA-320c are correlated to aging and regulate human cartilage metabolism.
Journal of Orthopaedic Research , 30 (12) , 1915-1922  (2012)
原著論文8
Hamahashi K, Sato M, Yamato M, et al.
Studies of the humoral factors produced by layered chondrocyte sheets.
Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine , 9 (1) , 24-30  (2012)
原著論文9
Maehara M, Sato M, Watanabe M, et al.
Development of a novel vitrification method for chondrocyte sheets.
BMC Biotechnology , 13 (58)  (2013)
doi: 10.1186/1472-6750-13-58.
原著論文10
Takaku Y, Murai K, Ukai T, et al.
In vivo cell tracking by bioluminescence imaging after transplantation of bioengineered cell sheets to the knee joint.
Biomaterials , 35 (7) , 2199-2206  (2014)
原著論文11
Mitani G, Sato M, Yamato M, et al.
Potential utility of cell sheets derived from the anterior cruciateligament and synovium fabricated in temperature-responsiveculture dishes.
Journal of Biomedical Materials Research Part A , 102 (9) , 2927-2933  (2014)
原著論文12
Sato M, Yamato M, Hamahashi K, et al.
Articular cartilage regeneration using cell sheet technology.
The Anatomical Record , 297 (1) , 36-43  (2014)
原著論文13
Yokoyama M, Sato M, Mitani G, et al.
Assessment of the Safety of Chondrocyte Sheet Implantation for Cartilage Regeneration.
Tissue Engineering part C Methods , 22 (1) , 59-68  (2015)
原著論文14
Toyoda E, Sato M, Takahashi T, et al.
Application of chondrocyte sheet for cartilage regeneration.
Stem Cell Research & Therapeutics , 1 (1)  (2016)
原著論文15
Kokubo M, Sato M, Yamato M, et al.
Characterization of chondrocyte sheets prepared using a co-culture method with temperature-responsive culture inserts.
Journal of Tissue Engineering and Regenerative Medicine , 10 (6) , 486-495  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201106006Z