文献情報
文献番号
201105005A
報告書区分
総括
研究課題名
激甚災害時における死体検案体制の整備および運用に関する研究
課題番号
H23-特別・指定-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
青木 康博(名古屋市立大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 平岩 幸一(福島県立医科大学)
- 舟山 眞人(東北大学大学院医学系研究科)
- 出羽 厚二(岩手医科大学)
- 曽根 智史(国立保健医療科学院)
- 岩瀬博太郎(千葉大学大学院医学研究院)
- 小室 歳信(日本大学歯学部)
- 久保 真一(福岡大学医学部)
- 呂 彩子(東京女子医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
東日本大震災対応における含む死体検案体制および遂行状況について検証を行い,大規模災害時の個人識別をはじめとする遺体管理体制の整備,および死体検案業務の充実に資する基礎的知見の蓄積を目指した。
研究方法
被災3県(岩手・宮城・福島)の各県警察本部・医師会・歯科医師会の資料,および検案に参加した地元医師に対するアンケート調査により,各県ごとの検案等の実施状況および問題点につき分析した。一方日本法医学会による死体検案支援派遣事業につき,支援対策本部の通信記録などの資料の解析および聞き取り調査などによって検証した。また学会派遣医師・歯科医師に対しては,支援事業および検案業務遂行上の問題点,ならびに法医学・法歯学の専門的事項に関するアンケート調査および聞き取り調査を実施した。歯科的個人識別については,この他に各県歯科医師会および各県警察本部に対しての聞き取り調査を行い,被災県での実地調査の結果もあわせ,身元確認作業の実態および課題につき検討を行った。これらを綜合し,わが国の既存の大規模災害時の死体検案等に関する災害対応計画の問題点の抽出を試みた。
結果と考察
発災直後,特に被害が大きい地域で,情報の欠如が人材・資材の効果的な配置等の障害になった。通信手段の確保に関する検討とともに,死体検案等に関与・対応する機関(各県医師会・歯科医師会・法医学機関・警察等)相互の連係・情報共有に関する準備体制の見直しが必要と考えられた。日本法医学会による支援は一定の成果を挙げたといいうるが,その災害対応機関としての危機管理体制の整備は不十分であった。歯科的個人識別についても数々の問題が提示されたが,最重要課題は対照資料の確保であり,生前歯科所見のデータベース化等についての検討が急がれる。この点やDNA資料採取などは法整備も必要とする課題であり,より長期的には,災害時の死体検案体制を死因究明法令整備と関連づけて検討すべきと考えられた。また業務実施上の問題として指摘された点は,今後改善を進めるとともに,それを踏まえた教材開発および研修の実施が期待される。
結論
東日本大震災の被害は死体検案を始めとする遺体管理の面でも,これまでの想定を凌駕するものであり,多くの課題を残した。本研究で得られた成果,および今後のさらなる検討にもとづいて,新たな包括的災害時遺体管理体制および対応計画の策定作業が速やかに着手されることが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2015-05-27
更新日
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