寄生虫疾患の病態解明及びその予防・治療をめざした研究

文献情報

文献番号
201104004A
報告書区分
総括
研究課題名
寄生虫疾患の病態解明及びその予防・治療をめざした研究
課題番号
H23-国医・指定-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
平山 謙二(長崎大学熱帯医学研究所 宿主病態解析部門免疫遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 北 潔(東京大学大学院医学系研究科(国際保健学生物医化学教室))
  • 狩野 繁之(国立国際医療研究センター研究所 (熱帯医学・マラリア研究部))
  • 坪井 敬文(愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター(プロテオーム・医薬部門))
  • 野崎 智義(国立感染症研究所(寄生動物部))
  • 木村 英作(愛知医科大学医学部(寄生虫学教室))
  • 辻 尚利(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構・動物衛生研究所(人獣感染症研究チーム・分子寄生虫学))
  • 太田 伸生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科(国際環境寄生虫病学分野))
  • 金澤 保(産業医科大学医学部(免疫学・寄生虫学教室))
  • 我妻 ゆき子(筑波大学大学院人間総合科学研究科(生命システム医学専攻疫学分野))
  • 鳥居 本美(愛媛大学大学院医学研究科(感染生体防御学講座寄生病原体学分野))
  • 中西 憲司(兵庫医科大学(免疫学・医動物学教室))
  • 松岡 裕之(自治医科大学(感染・免疫学講座医動物学部門))
  • 久枝 一(群馬大学大学院医学系研究科(国際寄生虫病学))
  • 由井 克之(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科(感染免疫学講座免疫機能制御学分野))
  • 金子 修(長崎大学熱帯医学研究所(病原体解析部門原虫学分野))
  • 金 惠淑(岡山大学学院医歯薬学総合研究科(医薬品情報学講座))
  • 片倉 賢(北海道大学大学院獣医学研究科(動物疾病制御学講座寄生虫学教室))
  • 嶋田 淳子(群馬大学大学院医学系研究科(保健学専攻環境保健情報科学領域))
  • 丸山 治彦(宮崎大学医学部感染症学講座寄生虫学分野)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所(寄生動物部))
  • 奈良 武司(順天堂大学大学院医学研究科(生体防御寄生虫学))
  • 伊藤 亮(寄生虫学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,111,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジアに拡がる寄生虫疾患に関する基礎研究を推進し、その制圧、予防、治療に資する革新的な知見を集積することを目的とする。
本研究の推進により、アジア地域の研究者との共同研究を活性化することが可能となり、日本とアジアの若手研究者が参加することで、新たな医科学領域の後継者を育成することが可能となる。
研究方法
マラリア、住血吸虫症、フィラリア症、住血原虫症、新興再興感染症、媒介昆虫の6つの疾患において、感染伝播メカニズム、寄生虫の宿主適応、およびヒトの防御免疫と病態生理の3つの観点から分子レベルでの研究を行った。

結果と考察
(1)マラリア
GPI-anchored micronemal antigenをマラリア赤血球期ワクチン候補として同定したので更なる開発を進める。またPf332と呼ばれる分子やロプトリー分子を抗マラリア薬開発の標的する。N-89についてはマイクロエマルジョンを形成する製剤処方をさらに発展させる。
(2) 住血吸虫症
住血吸虫感染後肝線維症の感受性に特徴的な免疫応答を修飾できる肝線維症予防薬開発を進める。マウスモデルでのサイトカイン情報を実際のフィールド研究で立証する。
(3) フィラリア症
尿サンプルを用いた簡便で乳幼児に適用可能なフィラリア症の診断法の開発と野外応用研究を推進し、LAMP法による媒介蚊調査を、post-MDA期のフィラリア伝搬調査法として世界標準化していく。
(4) 住血原虫症
トリパノソーマ原虫のミトコンドリア呼吸鎖酵素群を抗寄生虫薬の重要な標的とする。標的分子候補の立体構造の解明によりインシリコあるいは化合物ライブラリーからの医薬品開発を本格化する。
(5) 新興・再興感染症
赤痢アメーバIron sulfur flavoproteinを抗原虫剤開発のシーズとする。ベネズエラ糞線虫ゲノムの概要配列を公表し抗寄生虫薬の標的探索に活用する。テニア症・嚢虫症診断のためのLAMP法の開発、血清検査の普及、テニア症駆虫薬として漢方(かぼちゃの種とアロカナッツ抽出液)の再評価、嚢虫症診断用迅速イムノクロマトグラフィ-キットの基本形を開発をすすめる。
結論
アジアに蔓延する広範囲な寄生虫疾患制御に向けた診断治療予防法開発のための活発な研究が行われ、本プログラムが各研究グループの間の情報交換や新しいプロジェクトの提案、若手研究者の育成に重要な役割を果たした。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201104004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
マラリア赤血球期ワクチン候補を同定し、無細胞システムによるタンパク合成系がワクチン開発に有効な方法であることを示した。抗マラリア薬の後継候補として日本発のN-89を製剤として確立した。住血吸虫感染後肝線維症マウスモデルでのサイトカイン動態を解析する方法を開発した。抗トリパノソーマ原虫薬の標的分子候補の立体構造の解明によりインシリコあるいは化合物ライブラリーからの医薬品開発モデルを実証した。ベネズエラ糞線虫ゲノムの概要配列を公表し抗寄生虫薬の標的探索に活用可能なものにした。
臨床的観点からの成果
尿サンプルを用いた簡便で乳幼児に適用可能なフィラリア症の診断法の開発と野外応用研究を推進し世界標準化に対応した。テニア症・嚢虫症診断のためのLAMP法の開発、血清検査の普及、テニア症駆虫薬として漢方(かぼちゃの種とアロカナッツ抽出液)の再評価、嚢虫症診断用迅速イムノクロマトグラフィ-キットの基本形を開発した。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
66件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
77件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Arumugam TU, Takeo S, Yamasaki T, et al.
Discovery of GAMA, a Plasmodium falciparum merozoite micronemal protein, as a novel blood-stage vaccine candidate antigen
Infect Immun , 79 , 4523-4532  (2011)
原著論文2
Husain, A., Jeelani, G., Sato, D., et al.
Global Analysis of gene expression in response to L-cysteine deprivation in the anaerobic protozoan parasite Entamoeba histolytica.
BMC Genomics , 12 , 275-293  (2011)
原著論文3
T. Seki, Kumagai T, Kwansa-Bentum B, et al.
IL-4 and IL-13 suppress exssesive neutrophil infiltration and hepatocyte damage during acute murine schistosomiasis japonica.
Infection and Immunity , 80 (1) , 159-168  (2011)
原著論文4
Osada Y, Kanazawa T.
Schistosome: its benefit and harm in patients suffering from concomitant diseases.
J Biomed Biotechnol (E-Publish)  (2011)
原著論文5
Nakahira M, Nakanishi K
Requirement of GATA-binding protein 3 for II13 gene expression in IL-18-stimulated Th1 cells.
Int Immunol , 23 , 761-772  (2011)
原著論文6
Kirinoki M, Chigusa Y, Ohmae H, et al.
Efficacy of sodium metaperiodate (SMP)-ELISA for the serodiagnosis of schistosomiasis mekongi.
Southeast Asian J Trop Med Pub Hlth , 42 , 25-33  (2011)
原著論文7
Rui E, Fernandez -Becerra C, Takeo S, Sanz S,et al.
Plasmodium vivax: comparison of immunogenicity among proteins expressed in the cell-free systems of Escherichia coli and wheat germ by suspension array assays.
Malar J , 10 , 192-199  (2011)
原著論文8
Nonaka N, Nakamura S, Inoue T, et al.
Coprological survey of alimentary tract parasites in dogs from Zambia and evaluation of a coproantigen assay for canine echinococcosis.
Ann Trop Med Parasito , 105 , 521-530  (2011)
原著論文9
Armua-Fernandez MT, Nonaka N, Sakurai T, et al.
Development of PCR/dot blot assay for specific detection and differentiation of taeniid cestode eggs in canids
Parasitol Int , 60 , 84-89  (2011)
原著論文10
Yoshida A, Nagayasu E, Horii Y, et al.
A novel C-type lectin identified by EST analysis in tissue migratory larvae of Ascaris suum.
Parasitol Res (E-Pubish)  (2011)
原著論文11
Moritoshi Iwagami, Megumi Fukumoto, Seung-Young Hwang, et al.
Population structure and transmission dynamics of Plasmodium vivax in the Republic of Korea based on microsatellite DNA analysis.
PLoS Neglected Tropical Diseases (In Press)  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2016-05-25

収支報告書

文献番号
201104004Z