健康危機事象発生の検出を目的とした症候サーベイランスにおける統計解析法とその利用に関する研究

文献情報

文献番号
201036034A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機事象発生の検出を目的とした症候サーベイランスにおける統計解析法とその利用に関する研究
課題番号
H21-健危・若手-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(昭和女子大学 生活機構研究科)
  • 山岡 和枝(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ある健康危機事象の発生が突発的・集中的に発生したと疑われる場合に、それが偶然なのか、または意味のあるものなのかを、客観的に判定することが必要となる。その方法として集積性の検定という統計手法が利用できる。その方法として申請者らが開発したflexible scan法とそのソフトウェアFleXScanも注目され、この方法を用いた疫学研究などが世界的に増えてきている。本研究では、FleXScan法の更なる改良に関する理論的研究とともにアプリケーションによる解析ツールの提供、サーベイランスならびに関連分野における実際の適用と、その普及に向けた検討を行うことを目的とする。
研究方法
アプリケーションソフトのバージョンアップを行い、その上で国内外の利用者から寄せられる要望等に応じ、随時改良を行った。また健康危機事象のアウトブレイクをより適切に検出できるように、空間・時間解析における新たな統計モデルの検討を行い、従来の統計モデルとの比較を行った。さらに一時点ではなく時間変化を考慮したspace-time解析のバージョンの試行版を作成し、今後に向けて検討を行った。
結果と考察
国内外の利用者からの要望にも応えながら、アプリケーションFleXScan V3.1と日本語版マニュアル、英語版のマニュアルを作成し公開した。その後も、随時利用者からの要望に応えながら公開を行っている。さらに一時点ではなく時間変化を考慮したspace-time解析のバージョンの試行版を作成し、今後の開発に向けた準備を行った。
また健康危機事象の立ち上がりをより適切に評価し検出するための新たな統計モデルを検討、提案した。実際、北九州市における小学校の学童欠席数のサーベイランスを想定したシミュレーション評価によって、本提案法が、従来の統計モデルよりも早期に、また適切な検出を行うことが確認でき、サーベイランスのための統計モデルとしてより適切であると考えられた。
結論
本研究では、サーベイランスに向けたより適切な解析ができるような統計量の改良の検討について、理論的側面および実際的側面から様々な検討を行い、より適切な手法・ツールを提案した。またアプリケーションソフトFleXScanについても国内外で認知されるようになってきた。今後もユーザーの声を反映し有用なツールとして容易に利用できるよう改良を続け、今後は国内での実用化についても検討を行っていきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-07-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201036034B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機事象発生の検出を目的とした症候サーベイランスにおける統計解析法とその利用に関する研究
課題番号
H21-健危・若手-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(昭和女子大学 生活機構研究科)
  • 山岡 和枝(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機事象の発生をいち早く検出するためのサーベイランスシステムにおいて、ある症候が突発的・集中的に発生する方法として集積性の検定という統計手法が利用されている。この集積性検出の統計解析について、最近さまざまな統計手法の提案がされているが、本研究では、我々が提案するFleXScan法の更なる改良に関する理論的研究とともにアプリケーションによる解析ツールの提供、サーベイランスならびに関連分野における実際の適用と、その普及に向けた検討を行うことを目的とする。
研究方法
まず、ニューヨーク市保健局の担当者らと共同で、ニューヨーク市のインフルエンザ様症状での受診者数サーベイランスのデータを解析し、実際にニューヨーク市のシステムに組み込まれ解析が行われているSaTScan法との比較を行った。
次に、アプリケーションソフトFleXScanについて国内外の利用者から寄せられる要望等に応じ、随時改良を行った。また国内での利用促進に向け、解析に必要な位置情報データ、隣接情報データの作成、公開を行った。
さらにサーベイランスにためのより適切に評価し検出するための新たな統計モデルを提案した。
結果と考察
ニューヨーク市のデータの解析を行ったところFleXScan、SaTScanの両手法によって若干異なる地域を検出したが、FleXScanの方がより多くの確定患者を含んでいた。実際、このアウトブレイクの観測された地域はSaTScanでは同定できない非円状の地域であると予想され、FleXScanの方がより適切な結果であると考えられた。
次にアプリケーションFleXScan V3.0を作成し公開した。その後国内外の利用者からの問い合わせや報告をもとに修正を重ね、随時公開を行い、現在Ver3.1の公開を日本語・英語マニュアルを付けて行っている。また本アプリケーションの解析に必要なデータを作成・公開した。
さらにサーベイランスにおいて健康危機事象の立ち上がり(アウトブレイク)をより適切に評価し検出するための新たな統計モデルを検討、提案した。シミュレーション評価によって、本提案法が、従来の統計モデルよりも早期に、また適切な検出を行うことが確認できた。
結論
 本研究では、実際的観点からも提案する方法の有効性が確認できた。またアプリケーションソフトについても国内外での認知が高まってきた。本研究の成果として、ニューヨーク市保健局でも本手法の利用が始まり、今後、自動解析に向けた共同研究を行っていく予定である。今後、国内外のユーザーからの声を反映し開発をすすめ、日本発の有用なサーベイランスツールとして普及を目指していきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-07-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で検討している方法(FleXScan)が疫学の専門書,GIS専門書にも取り上げられ,本方法を利用した疫学研究なども世界的に増えてきている。
臨床的観点からの成果
疾病集積性などの検討に本方法を用いた実際的な疫学研究などが行われている。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
本研究で検討しているFleXScanがニューヨーク市保健局GISセンターで採択されサーベイランスに利用されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036034Z