インターフェロンの抗肝線維化分子機構の解明とその応用

文献情報

文献番号
201030003A
報告書区分
総括
研究課題名
インターフェロンの抗肝線維化分子機構の解明とその応用
課題番号
H20-肝炎・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河田 則文(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 一雄(名古屋市立大学 大学院医学研究科 機能解剖学)
  • 小川 智弘(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 田守 昭博(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 榎本 大(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 鈴木 知比古(東レ株式会社 医薬研究所)
  • 村上 善基(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノムセンター疾患ゲノム疫学解析分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,455,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦には約350万人のウイルス性肝炎感染者がおり、大きな厚生労働問題となっている。ウイルス性肝炎の治療法は進歩し、C型肝炎では治療を受けた約半数の患者でウイルス排除可能である。しかし、治療導入できない高齢者への対応など問題もある。従って、ウイルス排除治療以外に線維化を遅延させうる治療法の開発が望まれる。インターフェロン(interferon, IFN)は抗ウイルス作用以外に抗肝線維化効果を持つことが知られているため、その薬理作用の詳細な解析により新しい抗肝線維化剤が見出される可能性がある。
研究方法
本研究では星細胞(HSC)/筋線維芽細胞(hMFB)のmicroRNA発現に及ぼすIFNの効果を検討した。既にHSC活性化とともに変動するmicroRNAを同定した。それらを強制発現させて、HSC/hMFBの増殖、コラーゲンやサイトカイン産生に及ぼす影響を検討した。一方、C型肝炎では肝線維化進行群(stage3-4)はHCVの遺伝子型に関わらずIFN治療によるウイルス駆除率が不良であるが、ウイルス側因子のみでは説明できない。そこで宿主側因子を明らかにする目的で、肝組織中におけるmicroRNA発現の相違を、線維化軽度群(stage1-2)と比較検討した。
結果と考察
microRNA検出arrayにより、マウス星細胞の活性化とともに発現変動するmicroRNAを網羅的に解析した。星細胞活性化と伴に上昇する8 microRNA(miR-23b, 34c, 125b, 210, 214, 218, 221, 222)と低下する9 microRNA(miR-p2, 143, 195など)を同定した。IFNに応答して変動するmiR-29bを同定し、I型コラーゲン発現に対してSp-1を介して作用することを見出した。また、IFN誘導miR-195にはHSC/hMFBの増殖抑制効果があり、Cyclin Eを介することを見出した。
 一方、Genotype 1bのC型慢性肝炎20例の治療前の肝生検組織からmicroRNAの発現を網羅的に解析した。線維化軽度群(stage 1-2)と肝線維化進行群(stage 3-4)の間で比較検討を行った結果、miR-222について有意な差が認められた。
結論
HSC/hMFBの機能調節にmicroRNA発現とそれに影響を及ぼすIFNの効果が確認された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201030003B
報告書区分
総合
研究課題名
インターフェロンの抗肝線維化分子機構の解明とその応用
課題番号
H20-肝炎・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
河田 則文(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 一雄(名古屋市立大学 大学院医学研究科 機能解剖学)
  • 小川 智弘(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 田守 昭博(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 榎本 大(大阪市立大学 大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 鈴木 知比古(東レ株式会社 医薬研究所)
  • 村上 善基(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノムセンター疾患ゲノム疫学解析分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦には約350万人のウイルス性肝炎感染者がおり、大きな厚生労働問題となっている。ウイルス性肝炎の治療法は進歩し、C型肝炎では治療を受けた約半数の患者でウイルス排除可能である。しかし、治療導入できない高齢者への対応など問題もある。従って、ウイルス排除治療以外に線維化を遅延させうる治療法の開発が望まれる。インターフェロン(interferon, IFN)は抗ウイルス作用以外に抗肝線維化効果を持つことが知られているため、その薬理作用の詳細な解析により新しい抗肝線維化剤が見出される可能性がある。
研究方法
本研究では星細胞(HSC)/筋線維芽細胞(hMFB)のmicroRNA発現に及ぼすIFNの効果を検討した。既にHSC活性化とともに変動するmicroRNAを同定した。それらを強制発現させて、HSC/hMFBの増殖、コラーゲンやサイトカイン産生に及ぼす影響を検討した。一方、C型肝炎では肝線維化進行群(stage3-4)はHCVの遺伝子型に関わらずIFN治療によるウイルス駆除率が不良であるが、ウイルス側因子のみでは説明できない。そこで宿主側因子を明らかにする目的で、肝組織中におけるmicroRNA発現の相違を、線維化軽度群(stage1-2)と比較検討した。
結果と考察
microRNA検出arrayにより、マウス星細胞の活性化とともに発現変動するmicroRNAを網羅的に解析した。星細胞活性化と伴に上昇する8 microRNA(miR-23b, 34c, 125b, 210, 214, 218, 221, 222)と低下する9 microRNA(miR-p2, 143, 195など)を同定した。IFNに応答して変動するmiR-29bを同定し、I型コラーゲン発現に対してSp-1を介して作用することを見出した。また、IFN誘導miR-195にはHSC/hMFBの増殖抑制効果があり、Cyclin Eを介することを見出した。
 一方、Genotype 1bのC型慢性肝炎20例の治療前の肝生検組織からmicroRNAの発現を網羅的に解析した。線維化軽度群(stage 1-2)と肝線維化進行群(stage 3-4)の間で比較検討を行った結果、miR-222について有意な差が認められた。
結論
HSC/hMFBの機能調節にmicroRNA発現とそれに影響を及ぼすIFNの効果が確認された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201030003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) インターフェロンはmiR-195を介するp21の発現増加とcyclin E1の発現減少によりヒト星細胞株の細胞増殖を抑制した。
(2) miR-29bは1型コラーゲンα鎖(Col1a1)、およびSp1の3’UTRに結合した。miR-29bはTGF-βを介さずにCol1a1発現とSp-1を発現低下させた。
(3) 肝臓の線維化を反映するマーカーとしてmiR-222を同定した。
臨床的観点からの成果
(1) 肝線維化軽度群と進行群を比較したところ後者で7種の発現(miR-422aなど)が有意に低下し、17種の発現(miR-214, 222, 199b-3pなど)が有意に亢進した。
(2) ウイルス学的完治(+)と(-)の間で肝内microRNA発現を解析した結果、(-)症例において11種の発現(miR-660やmiR-324-5pなど)が有意に低下し、2種の発現が有意に亢進した。
ガイドライン等の開発
(1) 肝臓の筋線維芽細胞の機能はmiR-29やmiR-195で制御された。IFNの抗線維化的な新たな薬理効果の一つとして機能することが判明し、HSCや筋線維芽細胞のmicroRNAを増加させる手法の開発が必要である。
(2) 新しい肝線維化マーカーになり得るmiR-199,200と222を見出した。その有用性をさらに健闘して、臨床研究することが必要である。
その他行政的観点からの成果
(1) 患者が高齢化する現状や、具体的な治療法・予防法がない肝硬変に対応するためにも肝線維化機構を詳細に検討し、その制御を行なえる薬剤の開発は急務である。
(2) MicroRNAという分子生物学の新領域を利用しつつ、肝線維症の制御法を確立することは、創薬や検査薬開発とその商品化へと続く可能性や、患者の予後を規定する肝硬変、門脈圧亢進症への対策を講じることに直結するため、国民の保健・医療・福祉の向上等に繋がる。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
38件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawada N.
Evolution of hepatic fibrosis research.
Hepatol Res. , 41 , 199-208  (2011)
原著論文2
Sekiya Y, Ogawa T, Iizuka M, etal.
Down-regulation of cyclin E1 expression by microRNA-195 accounts for interferon-β-induced inhibition of hepatic stellate cell proliferation.
J Cell Physiol.  (2010)
原著論文3
Enomoto M, Mori M, Ogawa T, etal.
Usefulness of transient elastography for assessment of liver fibrosis in chronic hepatitis B: Regression of liver stiffness during entecavir therapy.
Hepatol Res. , 40 , 853-861  (2010)
原著論文4
Morikawa H, Fukuda K, Kobayashi S, etal.
Real-time tissue elastography as a tool for the noninvasive assessment of liver stiffness in patients with chronic hepatitis C.
J Gastroenterol. , 46 , 350-358  (2011)
原著論文5
Ogawa T, Fujii H, Yoshizato K, etal.
A human-type nonalcoholic steatohepatitis model with advanced fibrosis in rabbits.
Am J Pathol. , 177 , 153-165  (2010)
原著論文6
Ogawa T, Iizuka M, Sekiya Y, etal.
Suppression of type I collagen production by microRNA-29b in cultured human stellate cells.
Biochem Biophys Res Commun. , 391 , 316-321  (2010)
原著論文7
Sakamoto N, Nakagawa M, Tanaka Y, etal..
Association of IL28B polymorphism with response to pegylated-interferon alpha plus ribavirin combination therapy in patients with chronic genotype 2 hepatitis C.
J Med Virol. , 83 , 871-878  (2011)
原著論文8
Onomoto K, Morimoto S, Kawaguchi T, etal.
Dysregulation of IFN system can lead to poor response to pegylated interferon and ribavirin therapy in chronic hepatitis C.
PLoS One.  (2011)
原著論文9
Murakami Y, Toyoda H, Tanaka M, etal.
Overexpression of miR-199 and 200 families is associated with the progression of liver fibrosis.
PLoS One.  (2011)
原著論文10
Murakami Y, Tanaka M, Toyoda H, etal.
Hepatic microRNA expression is associated with the response to interferon treatment of chronic hepatitis C.
BMC Medical Genomics. , 3 , 48-  (2010)
原著論文11
Shigoka M, Tsuchida A, Matsudo T, etal.
Deregulation of miR-92a expression is implicated in hepatocellular carcinoma development.
Pathol Int , 60 , 351-357  (2010)
原著論文12
Yamamoto Y, Kosaka N, Tanaka M, etal.
MicroRNA-500 as a potential diagnostic marker for hepatocellular carcinoma.
Biomarkers. , 14 , 529-538  (2009)
原著論文13
Murakami Y, Aly HH, Tajima A, etal.
Regulation of the hepatitis C virus genome replication by miR-199a(*)
J Hepatology , 50 , 453-460  (2009)

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201030003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,455,000円
(2)補助金確定額
13,455,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-