エイズ予防のための戦略研究

文献情報

文献番号
201029033A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ予防のための戦略研究
課題番号
H18-エイズ・戦略-801
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人エイズ予防財団(財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 哲(財団法人エイズ予防財団)
  • 市川 誠一(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部 感染疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
170,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、MSMのHIV検査受検者数を2倍に増加させる、MSMのAIDS発症者数を25%減少させることを成果目標として、首都圏および阪神圏に居住するMSMを対象に、HIV検査促進のための啓発、HIV検査体制の整備、相談体制の整備を行い、HIV検査件数、AIDS発症者数に関して介入の効果を明らかにすることである。
研究方法
首都圏とは東京都、神奈川県、千葉県、阪神圏とは大阪府、兵庫県、京都府を範囲とし、ゲイNGOが中心となり介入を行った。平成22年度の戦略研究協力施設は保健所など112施設、医療機関21施設の計133施設であった。研究協力施設におけるHIV検査件数調査と受検者に対するアンケート調査は2010年12月末に終了した。
結果と考察
首都圏では、HIV啓発キャンペーン「できる!」を6月から2ヵ月毎に計4期実施した。キャンペーン資材は、ゲイバー、ハッテン場、ゲイ向けクラブイベント、ゲイサークルで約31,000セット配付した。また、戦略研究で立ち上げたWebサイト「HIVマップ」で啓発資材と同期したキャンペーンを実施し、毎月約10,000件のアクセス数を得た。首都圏のゲイバーで行ったアンケート調査(有効回答数1,749件)では、HIV検査の生涯受検経験は59.1%、過去1年間のHIV検査受検経験は27.7%であった。
阪神圏では、ゲイバーにおいて、クリニック検査キャンペーン広報資材12,350部、啓発資材15,330セット配布した。HIV/AIDSの予防啓発を目的としたゲイ向けのイベント「PLuS+FINAL」を10月に実施した。来場者は延べ14,142人、来場者実数6,320人(うちMSM約4,000人)であった。「PLuS+FINAL」会場で実施したHIV検査会「MaQ」の受検者は169名、陽性率3.6%であった。1,000円でHIV、梅毒、クラミジア、HBV、HCVが受検できるMSM向け検査キャンペーンを7クリニックで実施し、263名の受検があった(陽性率5.7%)。大阪のゲイバーで行ったアンケート調査(有効回答数1,391件)によると、HIVの生涯受検経験は49.8%、過去1年間の受検経験は29.0%であった。
結論
今年度は、ほぼ計画通りに介入を実施することができた。MSMへの啓発が、どのような効果をもたらしたのか、今後詳細な分析を進める。

公開日・更新日

公開日
2011-06-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201029033B
報告書区分
総合
研究課題名
エイズ予防のための戦略研究
課題番号
H18-エイズ・戦略-801
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
財団法人エイズ予防財団(財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 哲(財団法人エイズ予防財団)
  • 市川 誠一(名古屋市立大学 看護学部 感染疫学)
  • 木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 社会疫学分野)
  • 岡 慎一(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV検査促進の啓発を実施し、HIVの検査件数、AIDS発症者数を効果指標として、啓発の有効性を検証する。成果目標はHIV検査受検者を2倍に増加させること、AIDS発症者数を25%減少させることである。
研究方法
(課題1)首都圏および阪神圏に居住するMSMを対象とし、HIV検査促進の啓発、HIV検査体制の整備、相談体制の整備を実施した。(課題2)一般住民及び性感染症医療機関受診者を対象に、2008年度まで大阪府でパイロット研究として、HIV/STD検査受検動機を高めるための介入、検査サービス・アクセスを向上させるための介入を実施した。
研究協力施設154施設において、HIVの検査件数調査と受検者に対するアンケート調査を実施し、介入の効果を評価した。
結果と考察
(課題1)被験者に占める男性の割合について、時期の影響をロジスティック回帰を用いて評価した結果、阪神圏は直線的なトレンドを認めず(P=0.4086)、二次(P<0.001)と三次(P<0.001)の曲率を持つ傾向があった。首都圏は一次(P<0.001)、二次(P=0.0025)、三次(P<0.001)のすべてが有意であり、男性受検者の割合が上昇していた。また、首都圏の研究協力保健所におけるMSM受検者の割合は、2007年6.6%、2010年12.4%、阪神圏の研究協力医療機関では、2007年5.7%、2010年22.9%に上昇していた。MSM受検者の割合については、アンケートの結果を用いているが、2007年と2010年でアンケートの実施地域や施設数が異なるため、その影響を取り除いた分析をすすめる必要がある。(課題2)保健所等におけるHIV検査件数について、厚生労働省の行政統計データを用いて、大阪府と東京都、神奈川県、愛知県、福岡県で比較した。第1四半期を100とした相対値で比較すると、2008年のキャンペーンが開始された第3四半期に大きな増加を示したのは大阪府(相対値153)のみであった。成果目標を達成するための検査と相談の受け皿やキャンペーンで使用するメッセージについては、十分検討する必要があった。
結論
(課題1)保健所における男性の受検割合は増加していた。また、首都圏保健所、阪神圏医療機関におけるMSMの受検割合は上昇していた。(課題2)2008年度で研究が中止となり主要評価が不能となった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201029033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
首都圏、阪神圏のMSM(男性と性行為をする男性)を対象に当事者NGO参加型体制でHIV検査促進の啓発介入を実施し有効性を評価した。協力保健所や医療機関の受検者アンケートはMSM受検者の動向を初めて把握し、NGOの介入資材の認知はMSM受検者のみで高く、資材の訴求性が示された。首都圏のエイズ発症予防「できる!」キャンペーンは過去1年の受検経験割合を上昇させ、2010年エイズ報告数は推定値の16.1%に減少した。阪神圏では定点医療機関がMSMの検査の受皿となり陽性率は5%と高く有効性が示された。
臨床的観点からの成果
新規HIV感染者の7割、AIDS患者の5割を占めるMSMを対象にした啓発プログラムの実施は、自身の感染を知らずに過ごしている感染者にHIV検査受検を促し、その結果としてAIDS発症を予防し、またHIV感染の広がりを抑制することにつながる。戦略研究後、首都圏、阪神圏のHIV/エイズ報告数は2010年以降横ばいとなった。戦略研究では社会と臨床の研究者が共同で研究を実施した。特に阪神圏の性感染症専門クリニックでのMSM向け検査キャンペーンは初めての取組みで、戦略研究後は大阪府の事業となった。
ガイドライン等の開発
戦略研究の成果・概要版を公開シンポジウム、成果発表会、エイズ対策研修会等で配布した。NGO/NPOが自治体と連携して実施した保健所等のHIV検査担当者に向けたMSMやHIV陽性者への対応に関する研修会は戦略研究終了後も継続し、首都圏では8自治体での実施となった。戦略研究のHIV検査受検者を対象とした5分間アンケートの改訂版「HIV抗体検査を受ける人を対象としたアンケート」は8都府県83保健所で実施され、検査事業の資料とするため「結果ダイジェスト版」を関係自治体・保健所等に配布した。
その他行政的観点からの成果
MSMにおけるHIV感染リスクは一般集団に比べ高く、予防啓発、HIV検査促進、医療や相談等の陽性者支援について訴求性のある対策が望まれる。一般国民を対象とした大規模キャンペーンはMSMへの訴求性は低くその有効性は明らかではない。一方本研究では、当事者NGO等の啓発プログラムによる広報キャンペーンを実施し、低コストで比較的短期間でMSMの受検行動を促すことに成功した。
厚生労働省エイズ予防指針作業班第3回会議/2011年2月、同省重点都道府県等エイズ対策担当課長連絡協議会/第6回、第7回資料掲載
その他のインパクト
戦略期間中に国民向けシンポジウム1件、AIDS文化フォーラムin横浜での公開展示等2007年から4回、東京プライドが同性愛者等を対象に実施した大規模イベントでの啓発資材配布とシンポジウム2007年から3回、2010年NHK教育テレビ「ETV特集」1回。研究終了後は公開シンポジウム、研究成果発表会、国立保健医療科学院特定研修エイズ対策研修11件、自治体・保健所・財団等のエイズ対策研修会等28件、公開講演会,講習会10件、NHK教育「ハートをつなごう、HIV/エイズの30年」2011、2013年。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
2件
エイズ発症予防キャンペーン等の論文を作成中
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
52件
戦略研究に関する発表30件
学会発表(国際学会等)
11件
戦略研究に関する発表8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
6件
同性愛者等のHIVに関する相談・支援事業コミュニティセンター事業、WebサイトHIVマップ、サポートプロジェクト関西、HIV検査受検者アンケート、エイズ担当者MSM対応研修、大阪クリニック検査
その他成果(普及・啓発活動)
204件
戦略研究報告書から関係活動を抜粋、首都圏123件(活動記録から)、阪神圏79件、公開シンポジウム1件、成果発表会1件、ホームページ1件(APIネット)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
塩野徳史,金子典代,市川誠一、他
MSM(Men who have sex with men) におけるHIV抗体検査受検行動と受検意図の促進要因に関する研究
公衆衛生学雑誌 , 60 (10) , 639-650  (2013)
原著論文2
Jane Koerner, Satoshi Shiono, Seiichi Ichikawa, et al
Factors associated with unprotected anal intercourse and age among men who have sex with men who are gay bar customers in Osaka, Japan
Sexual Health , 9 (4) , 328-333  (2012)
原著論文3
金子典代,塩野徳史,コーナ・ジェーン、他
日本人成人男性における生涯でのHIV検査受検経験と関連要因
日本エイズ学会誌 , 14 (2) , 99-105  (2012)
原著論文4
金子典代, 大森佐知子,辻宏幸、他
ゲイ・バイセクシュアル男性におけるHIV 感染予防行動のステージと関連要因:大阪市内での商業施設利用者への質問紙調査から
日本公衆衛生学雑誌 , 58 (7) , 501-514  (2011)
原著論文5
Seiichi Ichikawa, Noriyo Kaneko, Jane Koerner, et al
Survey investigating homosexual behaviour among adult males used to estimate the prevalence of HIV and AIDS among men who have sex with men in Japan
Sexual Health , 8 (1) , 123-124  (2011)
原著論文6
塩野徳史,金子典代,市川誠一
日本成人男性におけるHIVおよびAIDS感染拡大の状況-MSM (Men who have sex with men)とMSM以外の男性との比較-
厚生の指標 , 58 (13) , 12-18  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2014-06-11

収支報告書

文献番号
201029033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
170,000,000円
(2)補助金確定額
170,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 0円
間接経費 0円
合計 0円

備考

備考
事業費不足分については、自己負担で支出

公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
-