文献情報
文献番号
201027066A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脳炎・脳症のグルタミン酸受容体自己免疫病態の解明・早期診断・治療法確立に関する臨床研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-こころ・一般-021
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 庄司 紘史(国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部、臨床神経内科学)
- 湯浅 龍彦(医療法人社団木下会鎌ヶ谷総合病院千葉神経難病医療センター・難病脳内科)
- 熊本 俊秀(大分大学医学部総合内科学第3講座、臨床神経内科学)
- 岡本 幸市(群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学、神経内科学,神経病理学)
- 森島 恒雄(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科、小児科学)
- 田中 惠子(金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学))
- 犬塚 貴(岐阜大学医学系研究科神経統御学講座 神経内科・老年学分野)
- 中島 健二(鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経内科学分野・神経内科)
- 米田 誠(福井大学第二内科(神経内科)、臨床神経内科学)
- 森 寿(富山大学大学院医学薬学研究部、分子神経科学、(富山大学))
- 吉川 哲史(藤田保健衛生大学・小児科、小児科学)
- 渡邊 修(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 神経内科・老年病学)
- 市山 高志(山口大学大学院医学系研究科小児科学分野、感染免疫・神経免疫)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
辺縁系症状で発病する急性脳炎・脳症には複数の病態が存在し、個々の病態の解明、鑑別診断の確立、病態ごとの固有の治療法の開発が望まれている。
研究方法
多施設共同研究のための症例登録基準に合わせて前方視的に幅広く急性辺縁系脳炎・脳症の症例を集積し、自己抗体等の測定は施設で分担して行った。
結果と考察
【NMDA型GluR抗体測定法の感度】非傍腫瘍性NHALEにおける髄液中抗GluRε2抗体(イムノブロット法IgG)の陽性率は33.7%、髄液中抗GluRε2抗体(イムノブロット法IgM)の陽性率は27.5%、抗GluRε2-NT2抗体の陽性率は77.5%、抗GluRε2-CT抗体の陽性率は83.3%、抗GluRζ1-NT抗体の陽性率は56.9%、抗GluRζ1-CT抗体の陽性率は71.4%、抗GluRδ2-NT抗体の陽性率は70.8%、抗GluRδ2-CT抗体の陽性率は71.4%で、Dalmau法のcell-based assayの陽性率は75.0%であった。
【抗NMDA型GluR抗体の臨床的意義】非傍腫瘍性NHALEにおいて、抗GluRε2(NR2B)抗体、抗GluRζ1(NR1)抗体、抗GluRε2抗体を測定したところ、病勢と比例して変動していると思われるのはNMDA型GluRである抗GluRε2抗体及び抗GluRζ1抗体のみであった。中枢神経系で主に吸着するのは抗GluRe2抗体で、その吸着は抗体濃度に比例して回復期まで持続することが推定され、抗GluRζ1抗体は初期に吸着が起こるが、20日以降は吸着が少なくなることが推測された。
【抗NMDA型GluR抗体の基礎的意義】抗GluRε2抗体陽性NHALE患者髄液による培養ラット胎児神経細胞の10DIVでのアポトーシスへの影響の検討では、髄液全体ではアポトーシスの増加が、髄液IgG分画ではアポトーシスの抑制がみられた。抗NMDA受容体抗体陽性髄液が海馬ニューロンの長期増強誘導(LTP)を抑制することを明らかにした。
【抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎】本邦抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎では、およそ6割がVGKC複合体の構成分子であるLeucine-rich glioma-inactivated 1 (LGI1)に対する抗体を有していた。
【抗NMDA型GluR抗体の臨床的意義】非傍腫瘍性NHALEにおいて、抗GluRε2(NR2B)抗体、抗GluRζ1(NR1)抗体、抗GluRε2抗体を測定したところ、病勢と比例して変動していると思われるのはNMDA型GluRである抗GluRε2抗体及び抗GluRζ1抗体のみであった。中枢神経系で主に吸着するのは抗GluRe2抗体で、その吸着は抗体濃度に比例して回復期まで持続することが推定され、抗GluRζ1抗体は初期に吸着が起こるが、20日以降は吸着が少なくなることが推測された。
【抗NMDA型GluR抗体の基礎的意義】抗GluRε2抗体陽性NHALE患者髄液による培養ラット胎児神経細胞の10DIVでのアポトーシスへの影響の検討では、髄液全体ではアポトーシスの増加が、髄液IgG分画ではアポトーシスの抑制がみられた。抗NMDA受容体抗体陽性髄液が海馬ニューロンの長期増強誘導(LTP)を抑制することを明らかにした。
【抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎】本邦抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎では、およそ6割がVGKC複合体の構成分子であるLeucine-rich glioma-inactivated 1 (LGI1)に対する抗体を有していた。
結論
NHALE患者髄液IgGはNMDA型GluRを内在化し、興奮毒性を抑制し、アポトーシスを防ぎ、脳を守る作用があるが、髄液中のIgG以外の成分はアポトーシスを促進し、興奮毒性などをもたらしている可能性が明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2011-05-27
更新日
-