文献情報
文献番号
201027064A
報告書区分
総括
研究課題名
筋疾患に対するマイオスタチン阻害療法の臨床応用基盤の確立
課題番号
H20-こころ・一般-018
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
砂田 芳秀(川崎医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 土田 邦博(藤田保健衛生大学総合医科学研究所)
- 野地 澄晴(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部)
- 濃野 勉(川崎医科大学 医学部)
- 武田 伸一(国立精神・神経医療研究センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
筋ジストロフィーは進行性の筋萎縮と筋力低下をきたす予後不良の遺伝性疾患で、いまだに有効な治療法は確立されていない。本研究は骨格筋量を負に制御するマイオスタチンを創薬標的分子ととらえ、マイオスタチン阻害による筋ジストロフィー治療薬の開発と臨床応用に向けた基盤を確立することを目的とする。本年度の研究では筋ジストロフィーモデル動物(マウス)に昨年度までに開発した治療分子(阻害ペプチド薬、siRNA医薬、低分子受容体阻害薬)を投与して、その治療効果と安全性を評価し、臨床応用の可能性を検討する。
研究方法
① N-末端に細胞膜透過配列を付加した29アミノ酸残基から構成されるプロドメイン由来阻害ペプチド、②タイプI セリン・スレオニンキナーゼ膜受容体(ALK5)に対する低分子阻害剤、③マイオスタチンsiRNAとアテロコラーゲン複合体をLGMD1Cモデルマウスに投与し、経時的に体重、筋力を測定した。また一定期間後に骨格筋を摘出して単一筋線維断面積の計測、病理組織、張力測定などを行い治療効果を検討した。
結果と考察
(1)10週齢LGMD1CモデルマウスへのRp-29ペプチド腹腔内投与では体重、筋力、骨格筋重量や単一筋線維断面積に有意な治療効果は得られなかった。この原因として、ペプチドが容易に分解を受ける可能性が考えられ、更なる改良が必要である。
(2)TβRI kinase阻害剤が、成人骨格筋の組織幹細胞である筋衛星細胞数を増加させ、広範なTGF-βファミリー分子によるマウス筋芽細胞C2C12分化抑制を強力に阻害することを確認した。従ってこの阻害剤は、筋ジストロフィーのみでなく癌悪疫質などの筋消耗性疾患、正常人の老化による筋萎縮などでも、幹細胞レベル及び筋芽細胞レベルの双方で筋萎縮阻害作用を有すると考えられる。
(3)マイオスタチン-siRNAとアテロコラーゲン複合体投与群において対照群の約3倍の張力増加が見られた。回復した張力は野生型(C3H)マウスの約55%に達することが認められた。
(2)TβRI kinase阻害剤が、成人骨格筋の組織幹細胞である筋衛星細胞数を増加させ、広範なTGF-βファミリー分子によるマウス筋芽細胞C2C12分化抑制を強力に阻害することを確認した。従ってこの阻害剤は、筋ジストロフィーのみでなく癌悪疫質などの筋消耗性疾患、正常人の老化による筋萎縮などでも、幹細胞レベル及び筋芽細胞レベルの双方で筋萎縮阻害作用を有すると考えられる。
(3)マイオスタチン-siRNAとアテロコラーゲン複合体投与群において対照群の約3倍の張力増加が見られた。回復した張力は野生型(C3H)マウスの約55%に達することが認められた。
結論
(1) マイオスタチン阻害ペプチドRp29の全身投与では筋萎縮の改善効果は得られなかった。
(2) TβRI kinase阻害剤には筋衛星細胞の増加作用、筋芽細胞の融合・分化促進作用があり、筋萎縮改善の分子基盤となっていることを明らかにした。
(3) アテロコラーゲンを担体としたマイオスタチンsiRNA導入により、筋ジストロフィーモデルマウスの筋張力の大幅な改善に成功した。
(2) TβRI kinase阻害剤には筋衛星細胞の増加作用、筋芽細胞の融合・分化促進作用があり、筋萎縮改善の分子基盤となっていることを明らかにした。
(3) アテロコラーゲンを担体としたマイオスタチンsiRNA導入により、筋ジストロフィーモデルマウスの筋張力の大幅な改善に成功した。
公開日・更新日
公開日
2011-06-09
更新日
-