既存添加物の品質確保に資する分析法開発のための研究

文献情報

文献番号
202528005A
報告書区分
総括
研究課題名
既存添加物の品質確保に資する分析法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1012
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 辻 厳一郎(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 西崎 雄三(東洋大学 食環境科学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,399,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和6年(2024年)2月に第10版食品添加物公定書(以下,第10版公定書)が告示され,成分規格が未設定の既存添加物は全357品目中99品目となった(枝番品目は一部でも設定済のとき,その品目の成分規格は設定済とした場合).更に,令和7年(2025年)に既存添加物の第5次消除が実施され,全327品目中67品目の成分規格が未設定となっている.
本研究は,これらの成分規格が未設定の品目について, 1. 基原・製法・本質,2. 有効成分又は指標成分,3. 分析法,等の調査及び検討を行い,成分規格設定のための基礎情報の収集を目的とする.
研究方法
(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:安全性評価状況の調査を行う.
(2) 既存添加物の成分組成に関する研究:詳細な成分解析を行い,成分規格の設定に必要な指標成分又は有効成分を明らかとする.
(3) 分析法及び試験法の開発に関する研究:新たな分析法の確立及び試験法への適用を検討する.LC/MS, GC/MS, NMR,ICP,HSCCC,EA,XRF,EDX等の最新の分析技術を活用すると共に,相対モル感度(RMS)を用いた国際単位系(SI)への計量トレーサビリティを確保した定量法(RMS法),分子生物学的手法の開発を検討する.
結果と考察
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
「既存添加物 安全性評価検討中品目リスト(消費者庁食品衛生基準審議会添加物部会資料 令和7年2月18日)」に収載されている50品目から,「令和6年度既存添加物の安全性評価に関する調査研究」で安全性に問題なしと判断された8品目を除外した計42品目を安全性評価状況の調査対象とした.この内28品目は,EFSA, JECFA, FDA及びFSANZAに関連情報がないことが確認できた.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
カロブ色素,スピルリナ色素,香辛料抽出物について検討した.カロブ色素については,β-グルコシダーゼによりschaftoside配糖体を加水分解し,schaftosideに収束させた後にrutinを基準物質としてRMS法により定量可能であることが確認できた.スピルリナ色素については,フィコシアノビリンを発色団とするフィコシアニンが色素成分であることが酵素処理法により確認された.香辛料抽出物(コリアンダーオイル,セロリーシードオイル)については,1H-qNMRにより,主成分を直接定量可能であることが確認できた.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
ムラサキヤマイモ色素中のアントシアニン,カシアガム中のアントラキノンの定量法,アントシアニンのqNMRによる純度評価法,PDA検出器の校正法の検討及び校正用化合物の開発,EDXを利用したPb及びAsの定量法への適用,酵素の基原同定法等について検討した.ムラサキヤマイモ色素については,色素成分シアニジンアシルグルコシドの結合様式を明らかとするため,HSCCCによる単離精製条件を検討した.カシアガム中のアントラキノンについては,前処理法を検討しJECFA規格の基準値に適用且つクロロホルムを使用したい方法が確立できた.アントシアニンの純度評価に1H-qNMR以外の方法として,イオンクロマトグラフィーを用いた塩化物量に基づく換算法を別法として検討したが,過剰のCl⁻が影響により1H-qNMRと同等の精度で純度評価できないことがわかった.PDA検出器については,装置間差の補正方法について検討すると共に校正用化合物の合成を行った.EDXについては,Pb及びAsのスクリーニング法として十分有用であることがわかった.酵素については,二次元電気泳動とMALDI-TOF MSによるPMF法の組合せ,マトリクスの変更や消化酵素の併用により,Coverageが上昇することが確認できた.
結論
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
成分規格設定の優先順位を決定するため,安全性評価状況に関する情報を得ることができた.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
成分規格が未設定の品目の他,古い分析法が成分規格の試験法が設定されている品目若しくは試験法の根拠が不確かな品目等,規格試験法の改修が必要である品目を対象としている.これらの品目について検討し情報を得ることができた.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
第11版又は第12版公定書の改正に向けて,分析法及び試験法の開発,検証,実用化を検討した結果,一般試験法又は数品目の成分規格への導入に資する知見を得ることができた.このうち,特に,EDXについては,得られた結果を元に第11版食品添加物公定書作成検討会に一般試験法への導入を提案し了承された.また,RMS法による定量法に関しては,定量用標品の入手・供給が不可能である品目への導入を推進するための知見が得られた.

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

文献情報

文献番号
202528005B
報告書区分
総合
研究課題名
既存添加物の品質確保に資する分析法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1012
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
杉本 直樹(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 井之上 浩一(立命館大学 薬学部)
  • 永津 明人(金城学院大学 薬学部)
  • 辻 厳一郎(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
  • 西崎 雄三(東洋大学 食環境科学部)
  • 大槻 崇(日本大学 生物資源科学部)
  • 天倉 吉章(松山大学 薬学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和6年(2024年)2月に第10版食品添加物公定書(以下,第10版公定書)が告示され,成分規格が未設定の既存添加物は全357品目中99品目となった(枝番品目は一部でも設定済のとき,その品目の成分規格は設定済とした場合).更に,令和7年(2025年)に既存添加物の第5次消除が実施され,全327品目中67品目の成分規格が未設定となっている.これらの多くは,1.流通が確認できない,2.製品が曖昧,3.成分組成が不明なものが残されている.1については引き続き調査が,2, 3については,現在の科学技術では分析不可能である場合も多く,分析法の開発も必要とされている.更に,既存添加物には,国外と異なる成分規格が設定されていたりするものもあり,国際的に通用する試験法への更新が必要とされている.
本研究は,既存添加物のうち,これらの品目について, 1. 基原・製法・本質,2. 有効成分又は指標成分,3. 分析法,等の調査及び検討を行い,成分規格設定のための基礎情報の収集を目的とする.
研究方法
(1) 既存添加物の成分規格に関する研究:1. 成分規格(自主規格(公定書収載案を含む)及び自社規格等),2. 流通・使用実態,3. 安全性評価状況,の情報を調査する.
(2) 既存添加物の成分組成に関する研究:詳細な成分解析を行い,成分規格の設定に必要な指標成分又は有効成分を明らかとする.
(3) 分析法及び試験法の開発に関する研究:新たな分析法の確立及び試験法への適用を検討する.LC/MS, GC/MS, NMR,ICP,HSCCC,EA,XRF,EDX等の最新の分析技術を活用すると共に,相対モル感度(RMS)を用いた国際単位系(SI)への計量トレーサビリティを確保した定量法(RMS法),分子生物学的手法の開発を検討する.
結果と考察
1) 既存添加物の成分規格に関する研究:1. 成分規格(自主規格(公定書収載案を含む)及び自社規格等),2. 流通・使用実態,3. 安全性評価状況,の情報を調査し,次改正の食品添加物公定書への成分規格収載のための基礎情報をまとめた.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究:既存添加物の成分規格の試験法設定のため,「カロブ色素」,「カシアガム」,「香辛料抽出物(シナモン,バジル,クローブ,コショウ,コリアンダー,セロリ」,「アナトー色素」,「スピルリナ色素」,「ムラサキヤマイモ色素」,「メナキノン(抽出物)」,「酵素(ガラクトシダーゼ,セルラーゼ,ヘミセルラーゼ,プロテアーゼ等)」等を対象品目とし,成分組成又は有効成分の同定を行い,必要に応じて分析法を検討した.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究:2)に示した品目の内,「アナトー色素」,「スピルリナ色素」,「ムラサキヤマイモ色素」,「メナキノン(抽出物)」,「酵素(ガラクトシダーゼ,セルラーゼ,ヘミセルラーゼ,プロテアーゼ等)」に対して,各品目に適した分析法及び試験法を検討し,適した既存分析法がない場合は,分析法を開発し,それを適用した.本研究で用いた手法は, qNMR,各種NMR測定,HPLC,分取HPLC,相対モル感度(RMS)を用いた定量法,LC/MS,GC/MS,TLC,HSCCC,元素分析,EDX,XRF,MALDI-ToF-MS,ペプチドマスフィンガープリント法(PMF)等である.
結論
1) 既存添加物の成分規格に関する研究
既存添加物の成分規格設定の優先順位の設定に資する現時点での情報をまとめることができた.本調査結果は,第11版公定書(又は第12版公定書)の改正の基礎資料として活用される予定である.
2) 既存添加物の成分組成に関する研究
成分規格が未設定の品目の他,古い分析法が成分規格の試験法が設定されている品目若しくは試験法の根拠が不確かな品目等,規格試験法の改修が必要である品目について,成分分析を行い,規格基準設定に資する基礎情報を得ることができた.
3) 分析法及び試験法の開発に関する研究
分析法及び試験法を開発・実用化することを目的とし,「結果と考察 3)」に示した品目を対象に検討した.アントシアニンの純度評価に1H-qNMRが有効であり,アントシアニンを主色素成分とする既存添加物の規格設定に応用可能であることが確認できた.EDXについては,第11版公定書の一般試験法への導入を提案し検討会において了承された.酵素品目の基原生物の同定法については,分子生物学的手法の導入とデータベースの信頼性向上が必要であることがわかった.定量用標品の入手・供給が不可能である品目についてRMS法の導入を推進するため,RMS法に用いるユニバーサルな校正用基準物質の全合成を検討し,基準物質のデザインに関する知見を得た.更に,RMS法で得られる定量値の装置間差の有無を調査し,補正法を考案することができた.

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202528005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
既存添加物の品質確保に資する分析法の開発を行った.qNMR法,RMS法等の新しい分析法の開発・実用化を行い,成分規格の作成に応用できた.また,これらの方法は国内外において様々な分野で応用されており,その波及効果は大きい.
臨床的観点からの成果
特になし.
ガイドライン等の開発
本研究で検討したRMS法については,令和6年度にはJAS 0031:2025の発行し国内標準化を達成した.更に,令和6年1月のISO/TC34総会において国際規格の開発が承認され,令和8年4月現在,Draft International Standard (DIS)の段階まで議論が進んでいる.順調に議論が進めば,RMS法は令和8〜9年中に国際標準法として発行される予定となっている.なお,研究代表者は,本件のプロジェクトリーダーを務めている.
その他行政的観点からの成果
第11版食品添加物公定書作成検討会において,次改正の原案作成が行われているが,本研究で得られた情報が活用されている.
その他のインパクト
講演:「食品添加物の化学的安全性の確保」(ifia JAPAN20224(2024.5)),「食品化学における定量分析の役割」(日本食品化学学会第30回総会学術大会(2024.5).解説:「食品添加物指定に関する昨今の動向」(食品機械装置(2023; 12: 10-14)).掲載:「qNMR法がJASからISOへ,標品不足時代の食品分析法」(食品化学新聞1面(2025.8.21),「試験法のアップデート」(食品化学新聞4面(2026.1.22))

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
JAS発行1件,ISOでの国際規格化1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演3件,新聞掲載2件,誌上解説1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshinari T, Sekine A, Kobayashi N, et al
Determination of the biological origin of enzyme preparation by SDS-PAGE and peptide mass fingerprinting
Food Addit. Contam. Part A , 40 , 711-722  (2023)
10.1080/19440049.2023.2211678
原著論文2
Hirose S, Watanabe M, Tada A, et al
Suitability of culture broth and conditions for Escherichia coli growth and gas production as a test of food additives in EC Broth
Food Hyg. Safety Sci. , 64 , 69-77  (2023)
10.3358/shokueishi.64.69
原著論文3
増本直子,杉本直樹,佐藤恭子
食品添加物公定書収載品目における基原生物に使用される学名の考え方とその表記法
食衛誌 , 64 , 77-88  (2023)
10.3358/shokueishi.64.78
原著論文4
Masumoto N, Ohno T, Suzuki T, et al
Application of the relative molar sensitivity method using GC-FID to quantify safranal in saffron (Crocus sativus L.)
J. Nat. Med. , 77 , 829-838  (2023)
0.1007/s11418-023-01724-8
原著論文5
Amakura Y, Uchikura T, Yoshimura M, et al
Chromatographic evaluation and characterization of constituents of sunflower seed extract used as food additives
Chem. Pharm. Bull. , 72 , 93-97  (2024)
10.1248/cpb.c23-00670
原著論文6
Masumoto N, Yamazaki T, Miura T, et al
Development of a Standard-Free Analytical Quantitative Method based on Liquid Chromatography Using Relative Molar Sensitivity for Chlorogenic Acid in Apple Juice
Chem. Pharm. Bull. , 73 (7) , 650-657  (2025)
10.1248/cpb.c25-00129

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
202528005Z