妊産婦へのメンタルヘルス支援の体制整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202527014A
報告書区分
総括
研究課題名
妊産婦へのメンタルヘルス支援の体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24DA0201
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 博幸(医療法人学而会木村病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 久美子(東京都立大学大学院 人間健康科学研究科)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 疫学・統計研究部)
  • 菊地 紗耶(東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野)
  • 相良 洋子(公益社団法人日本産婦人科医会)
  • 竹内 崇(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
  • 安田 貴昭(埼玉医科大学総合医療センター メンタルクリニック)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊産婦のメンタルヘルスは,妊娠中の母児の健康,産後の養育,児の発達を左右する重要な支援課題である。しかし,本課題に特化した事業を実施し,精神科と連携している自治体は少なく,連携の難しさが指摘されている。この解決のために実効性のある母子‐精神保健医療ネットワークモデルの提言と,ネットワーク構築のための自治体向け実践ガイドの作成と普及が必要である。その目的のために,本研究班では,初年度(令和 6 年度)に①妊産婦メンタルヘルス連携に関する文献レビュー,及び②全国都道府県,市区町村自治体の母子保健担当部署に対する連携の課題や実施状況などについてのアンケート調査を行った。続いて最終年度(令和7年度)は,妊産婦メンタルヘルスにおける好事例自治体に対してのヒアリング調査と,これらの結果をもとに,全国の自治体の母子保健所管部署等での活用できる『連携実践ガイド』を作成・公開することを,研究の目的とした。
研究方法
1)妊産婦メンタルヘルス連携の好事例自治体に対するヒアリング調査
初年度(令和 6 年度)に実施した,①自治体の母子保健所管部署と精神科医療との円滑な連携を行うためのアセスメントツールや連携方法等に関する文献等のレビュー,及び②全国都道府県,市区町村自治体の母子保健担当部署を対象とした,連携の課題や実施状況,精神科医療機関との連携方法,精神科医の参画状況,自治体独自の事業の有無などについてのアンケート調査結果にもとづき,12の好事例自治体を抽出した。これら自治体の母子保健所管部署と連携先の精神科医療機関を対象に,連携の仕組みや人員規模,特色や課題・利点,支援件数などについて60-120分のヒアリングを実施し,連携の基本構造や好事例の特徴を分析した。
2)自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイドの作成
初年度研究の文献レビュー,自治体アンケート調査,本年度の好事例自治体調査の結果を踏まえて,ネットワーク体制の構築・整備と連携ツールの作成・活用の具体的な方法を示した『自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイド』(以下,本ガイド)を作成した。
結果と考察
1)好事例自治体ヒアリング調査の結果,自治体と圏域精神科医療とのネットワーク構築では,①ネットワークの構築・整備を協議する場,②ネットワークの管理・運用を行う体制,③機関・施設内外からの相談を受け,適切な支援を提案し連携を実施する体制(コーディネーター業務),④事例検討,研修,人材育成を行う場,さらに,自治体の規模によっては,⑤専門職を自治体や医療機関へ派遣する体制が組まれていた。
 これらの連携構造には4つのモデル(A.大学病院専門講座(外来)モデル,B.要保護児童対策地域協議会(要対協)モデル,C.周産期母子医療センターモデル,D.医療者主体のネットワークモデル)があることが示唆された。また,自治体と医療との連携を円滑に進めるための種々の連携ツール(協力精神科医療機関リスト,共通連絡票など)が用いられていることが明らかとなった。
さらに,自治体の規模や医療資源の特性に合った,独自の連携構築(ネウボラセンターによる切れ目ない支援,オンラインの医療情報連携ネットワークや研修システム,地域分散型周産期ネットワーク,子育て支援カウンセラー派遣,周産期メンタルヘルスカンファレンスなど)がなされていることもわかった。
2)連携実践ガイド作成では,妊産婦メンタルヘルスの基礎知識,支援連携の実態,自治体と精神科医療機関等による母子−精神保健医療ネットワークの作り方,連携ツールの作成・活用などについて,視覚的に理解しやすく,メンタルヘルスの非専門家でも活用しやすい手引きとなるように編集し,印刷物として全国1788自治体の母子保健所管部署等に配布した。
結論
本好事例ヒアリング調査の結果から,実効性のある母子‐精神保健医療連携を実践している自治体では,医療とのネットワークをどのように構築しているのか,どのような連携ツールを用いているのかなど,実際的な手法が詳らかとなった。連携ネットワークについては,4つの基本モデルを提案し,令和6年度研究の結果を含めて,それらの知見をもとに,『自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイド』を作成した。本ガイドを活用することにより,地域での母子‐精神保健医療ネットワークづくりが促進され,それぞれの地勢的状況を加味したシステムの地域実装が可能となりうる。とくに,都道府県自治体においては,本ガイドの利用により,『妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築事業』の準備,展開の参照資料となりうる。

公開日・更新日

公開日
2026-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
202527014B
報告書区分
総合
研究課題名
妊産婦へのメンタルヘルス支援の体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24DA0201
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 博幸(医療法人学而会木村病院)
研究分担者(所属機関)
  • 安達 久美子(東京都立大学大学院 人間健康科学研究科)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 疫学・統計研究部)
  • 菊地 紗耶(東北大学大学院医学系研究科 精神神経学分野)
  • 相良 洋子(公益社団法人日本産婦人科医会)
  • 竹内 崇(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
  • 安田 貴昭(埼玉医科大学総合医療センター メンタルクリニック)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
妊産婦のメンタルヘルスは,妊娠中の母児の健康,産後の養育,児の発達を左右する重要な支援課題である。しかし,本課題に特化した事業を実施し,精神科と連携している市町村は少なく,自治体から精神科医療側への連携の難しさが指摘されている。この課題解決のため「妊産婦へのメンタルヘルス支援の体制整備に向けた研究」班では,実効性のある母子‐精神保健医療ネットワークモデルの提言と,ネットワーク構築のための自治体向け実践ガイドの作成を行うことを研究全体の目的とする。
研究方法
令和6度(初年度)は,1)連携に関しての種々の関連文献のレビューを行い,推奨しうる方法と好事例の取り組みを精査する。また,2)妊産婦のメンタルヘルスに関する自治体と精神科医療機関との連携の実情を詳細に把握するために,全国自治体母子保健担当部署を対象とに,連携の課題や実施状況,精神科医療機関との連携方法,精神科医の参画状況,自治体独自の事業の有無などについての自記式質問紙調査およびWeb調査を行う。
つづいて,令和7年度(次年度)は,上記の文献レビューと自治体アンケート調査結果から抽出した3)好事例12自治体と連携する精神科医療機関に対してのヒアリング調査を行い,4)これらの結果・考察をまとめて,具体的な連携の構築方法や様々なアセスメントツールを掲載した『自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイド』を作成し,全国自治体に配布する。
結果と考察
1)日本における母子‐精神保健医療連携に関する文献レビュー
妊産婦のメンタルヘルス連携について15のテーマを抽出し,レビューした結果,円滑な母子保健−精神医療連携を実施するためには,連携システムの構築や共通の連携ツールが有益であることが示唆された。また,先行して連携を実践しているいくつかの好事例自治体の取り組みを抽出した。
2)妊産婦のメンタルヘルスに関する自治体‐精神科医療連携についての調査
47都道府県中33件,1741市区町村中396件の回答を得た。回答群と非回答群で,人口規模,出生数,粗出生率の平均値に差はなかった。①連携の課題として,都道府県,市区町村が捉えている項目は,ほぼ共通で「メンタルヘルス対応の負担が大きい」「自治体職員(保健師等)不足」など当該業務の量的・質的な課題や,「精神科受療の承諾が難しい」「圏域内の精神科医療機関の不足」など,行政から精神科医療につなげる際に生じる連携不全状況が抽出された。②連携の実施状況については,都道府県では,「専門分野(妊産婦メンタルヘルス等)に関する研修の実施」が69.7%,「精神科の情報一覧の作成・取得」が42.4%と続いた。また,精神科側の連携への参画は3割前後と不十分な状況も明確となった。さらに,連携構築や共通の連携ツール(「精神科受療勧奨の基準・目安」「圏域内の協力精神科医療機関一覧」など)の取得や作成が重要であることが示唆された。
3)妊産婦メンタルヘルス連携の好事例自治体に対するヒアリング調査
好事例自治体ヒアリング調査の結果,自治体と圏域精神科医療とのネットワーク構築では,①ネットワークの構築・整備を協議する場,②ネットワークの管理・運用を行う体制,③機関・施設内外からの相談を受け,適切な支援を提案し連携を実施する体制(コーディネーター業務),④事例検討,研修,人材育成を行う場,さらに,自治体の規模によっては,⑤専門職を自治体や医療機関へ派遣する体制が組まれていた。
 これらの連携構造には4つのモデル(A.大学病院専門講座(外来)モデル,B.要保護児童対策地域協議会(要対協)モデル,C.周産期母子医療センターモデル,D.医療者主体のネットワークモデル)があることが示唆された。また,自治体と医療との連携を円滑に進めるための種々の連携ツール(協力精神科医療機関リスト,共通連絡票など)が用いられていることが明らかとなった。さらに,自治体の規模や医療資源の特性に合った,独自の連携構築がなされていることもわかった。
4)自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイドの作成
初年度の文献レビュー,自治体アンケート調査,次年度の好事例自治体調査の結果を踏まえ,支援連携の実態,ネットワークの作り方,連携ツールの作成・活用などについて,わかりやすく活用しやすい手引きとなるように編集し,印刷物として全国1788自治体の母子保健所管部署等に配布した。
結論
母子保健を所管する自治体職員の妊産婦メンタルヘルス連携(とくに母子‐精神保健医療連携)における困難課題や連携実施の実態がはじめて明らかとなり,統計的な基礎資料を提供することが可能となった。また,自治体職員のための妊産婦メンタルヘルス連携実践ガイドを活用し,各自治体の実情に合った連携システムの実装が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2026-07-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202527014C

収支報告書

文献番号
202527014Z