原因不明小腸潰瘍症の実態把握、疾患概念、疫学、治療体系の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201024124A
報告書区分
総括
研究課題名
原因不明小腸潰瘍症の実態把握、疾患概念、疫学、治療体系の確立に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-069
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
日比 紀文(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学消化器病態)
  • 松本 主之(九州大学消化器病)
  • 山本 博徳(自治医科大学消化器内科)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器科)
  • 藤山 佳秀(滋賀医科大学消化器病)
  • 岡崎 和一(関西医科大学消化器病)
  • 清水 誠治(西日本旅客鉄道株式会社大阪鉄道病院消化器病)
  • 田中 正則(弘前市立病院消化器病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小腸は悪性腫瘍や炎症性疾患も比較的頻度が少ないことからほとんど顧みられてこなかった臓器であった。単純性潰瘍、非特異性多発性小腸潰瘍症は辛うじて疾患概念が提唱されているものの、臨床疫学、原因・病態、診断法、治療指針などはまったく確立されていない。この2疾患以外にも血管炎に伴う小腸潰瘍や希少な原因不明の小腸潰瘍症が存在することが明らかとなってきた。これらの難治性小腸炎症性疾患に対して、疫学的、臨床像、病態学的な解析を進め、さらに診断・治療法の整備・確立を目的とした。
研究方法
平成21年度に開始した原因不明の小腸潰瘍症に対する疫学調査、実態調査を、二次調査を行うとともに詳細な解析を行った。過去の報告例の検討、実態調査の解析、集積した画像検査の形態学的検討により、単純性潰瘍および非特異性多発性小腸潰瘍症に対する診断基準の確立を行った。単純性潰瘍/腸管ベーチェット病に対するインフリキシマブの有効性を検討した。
結果と考察
重点施設実態調査の結果を詳細に解析し、その臨床像や病変の特徴、治療に対する有効性などの実態が明らかとした。単純性潰瘍/腸管ベーチェット病に関しては、不全型ベーチェットを満たすものが約半数と最も多かった。潰瘍の形態では定型的潰瘍を有するものが約2/3を占めた。回盲部の病変は定型病変を有するものに有意に多かった。手術に寄与する因子として、回腸病変の存在、単純性潰瘍、ステロイド/インフリキシマブの使用があげられた。これらの臨床的特徴、病変の特徴を考慮し、腸管ベーチェット/単純性潰瘍の疾患概念と診断基準(案)を作成した。腸管ベーチェット/単純性潰瘍に対するインフリキシマブの有効性を検討したところ、狭義の単純性潰瘍では有効性が低かった。
結論
重点施設実態調査に基づく今回のデータ集積・解析ならびに公表は、本邦の原因不明小腸潰瘍性疾患の実態を把握し、その動向を一般社会に周知する観点から極めて重要で有益である。今回の解析結果を英文誌に公表することにより、これら稀少疾患の存在、疾患概念を世界に向けて発信する意義がある。さらに、診断基準(案)を確立したことは、今後の疫学的統計や病態解明のための研究に非常に有意義である。治療法に関しても、インフリキシマブが単純性潰瘍に対して有効であることが示され、保険適応症の取得に向けた道筋をつけることができたと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024124Z