文献情報
文献番号
202523005A
報告書区分
総括
研究課題名
広域食中毒発生時の早期探知のための調査の迅速化及びゲノム解析技術を利用した調査法の確立に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
明田 幸宏(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
- 中村 佳司(九州大学 大学院医学研究院)
- 砂川 富正(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所応用疫学研究センター)
- 廣瀬 昌平(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 平井 晋一郎(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
- 大西 真(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
36,163,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
食中毒は国民に対して甚大で直接的な影響を及ぼす。そのため食中毒の発生予防や発生した際には迅速な原因究明を実施し、その健康被害の拡大抑止が必要不可欠である。特に腸管出血性大腸菌(EHEC)による食中毒は、その届出数や重症度も相まって日本の食中毒対策として最も警戒が必要となっている。これまでEHEC感染症の事例調査のため各種の分子型別法が開発・利用されてきた。MLVA法が迅速性、精微性に優れていることから、国内では主にMLVA法を用いた解析が行われている。前身の研究班では、本法の活用に重点を置き、地衛研における実施の精度向上のため、その精度管理を進めてきた。またMLVA法を利用して全国で分離されたEHEC菌株の分子疫学的解析を実施することで個々の事例の関連性について検討を重ね、さらにその情報を利用した注意すべき事例の探知及びアラート発出を試みてきた。またEHEC血清型によってMLVA法の解像度が異なることから、海外株や食品・動物由来株を含む様々なEHEC菌株の全ゲノム配列の取得を行い、MLVA型別との関連性を評価するとともに、大規模なゲノム情報のデータベース化を進めている。その結果、EHEC食中毒の早期探知のための技術基盤が構築されつつあり、それらを利用した実際的な運用に着手する段階に来ており、これを進める。
研究方法
本研究計画では地衛研におけるMLVA法運用のさらなる効率化迅速化を目指した技術導入および精度向上、MLVA型別データと発生動向を利用したEHEC食中毒アラート発出システムの構築、その評価を実施する。また世界的には食中毒を含む感染症の分子疫学解析が全ゲノム情報を用いたものとなっており、食品や動物由来株を含めたゲノムデータベースの拡充化を進めることでMLVA法との優劣性を明らかにし、将来的な運用に資する基盤を構築する。またゲノムデータを利用した原因究明に利用可能なゲノム解析パイプラインを構築し、その試用を通じて評価および改良を進める。さらにEHEC感染症の起因菌と食材等感染源の関連性解析および本研究で構築された食中毒アラートシステム及び検査解析スキーム評価のため、他の地域からの食品流通などの影響を受けにくい離島でのコホートを確立し、それらの解析・評価を進める。
結果と考察
本研究では、腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症・食中毒に対する分子疫学サーベイランス体制の高度化を目的として、MLVA法、全ゲノム解析(WGS)、食品・動物由来株解析および広域食中毒アラートシステムを統合した検討を行った。感染研細菌第一部では3,793株の分子型別解析を実施し、MLVAデータの標準化と精度管理を進めるとともに、地方衛生研究所を対象とした研修会を通じて検査体制の均てん化と技術向上を図った。WGS解析では、SNP解析パイプラインSNPcasterを改良し、薬剤耐性遺伝子検索機能等を追加した結果、高い解析精度と汎用性が確認された。また、集団感染事例由来株の完全長ゲノム解析により、染色体変異やプラスミド構造の違いを利用した詳細な伝播経路推定が可能であることを示した。
食品・動物由来株の解析では、牛関連食品や牛盲腸、農場由来検体からヒト感染症との関連が懸念されるEHECを分離し、一部のウシ由来株が地域集団感染事例株と極めて近縁であることを明らかにした。これにより、家畜が地域における感染源となる可能性が示唆された。さらに、広域食中毒アラートシステムでは複数の広域散発事例を早期に検知し、実際の食中毒事案との整合も確認されたことから、早期探知手法としての有用性が示された。一方で、感染源の迅速な特定にはゲノム情報、患者情報および食品流通情報を統合した解析体制の構築が重要であることが明らかとなった。以上より、本研究はEHECを中心とした食中毒サーベイランスの高度化と原因究明能力の向上に大きく貢献し、今後の食中毒対策および感染症危機管理の基盤強化につながる成果を得た。
食品・動物由来株の解析では、牛関連食品や牛盲腸、農場由来検体からヒト感染症との関連が懸念されるEHECを分離し、一部のウシ由来株が地域集団感染事例株と極めて近縁であることを明らかにした。これにより、家畜が地域における感染源となる可能性が示唆された。さらに、広域食中毒アラートシステムでは複数の広域散発事例を早期に検知し、実際の食中毒事案との整合も確認されたことから、早期探知手法としての有用性が示された。一方で、感染源の迅速な特定にはゲノム情報、患者情報および食品流通情報を統合した解析体制の構築が重要であることが明らかとなった。以上より、本研究はEHECを中心とした食中毒サーベイランスの高度化と原因究明能力の向上に大きく貢献し、今後の食中毒対策および感染症危機管理の基盤強化につながる成果を得た。
結論
本研究により、MLVA法および全ゲノム解析(WGS)を活用したEHEC分子疫学サーベイランス体制が強化され、地方衛生研究所、感染研、厚生労働省および自治体間の連携の重要性が改めて示された。SNPcasterやNanoporeシーケンシングの活用により、高精度なゲノム解析と迅速な伝播経路推定が可能となり、地域の解析能力向上にも寄与した。さらに、食品・動物由来株の解析から、ヒト感染症との関連が懸念されるEHEC/STECの存在が確認され、感染源解明に向けた基盤が整備された。広域食中毒アラートシステムは散発事例の早期探知に有用であり、今後は病原体解析、食品衛生、臨床および感染症対策を統合したOne Health型サーベイランス体制の構築が重要であることが示された。
公開日・更新日
公開日
2026-08-14
更新日
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