文献情報
文献番号
202522015A
報告書区分
総括
研究課題名
法学的視点からみたAIの活用に伴う現場管理上の課題と現状の労働安全衛生法の法令上の課題の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25JA1004
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
一般社団法人 日本産業保健法学会(一般社団法人日本産業保健法学会)
研究分担者(所属機関)
- 三柴 丈典(一般社団法人 日本産業保健法学会)
- 井村 真己(追手門学院大学 法学部法律学科)
- 細川 良(青山学院大学 法学部法学科)
- 佐々木 達也(名古屋学院大学 法学部)
- 平岡 伸隆(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 建設安全研究グループ)
- 藤原 清司(国立研究開発法人産業技術総合研究所 インテリジェントシステム研究部門)
- 中澤 祥子(東海大学 医学部基盤診療学系衛生学公衆衛生学)
- 島崎 敢(近畿大学 生物理工学部 人間環境デザイン工学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和9(2027)年度
研究費
8,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、AIの活用が産業保健を含む労働安全衛生(OHS)にもたらすメリットとデメリットの双方を明らかにした上で、前者を活用し、後者を抑制するための技術的、人的要件を特定し、それを充たしても残るリスクを指摘し、現行法(解釈)の限界と改正の方向性を展望することを目的とする。特に、従来の事業者中心の規制をどう修正すべきかに注目する。そのため、職場におけるAIの活用にかかる国内外の事情、海外の法規制へ向けた動向につき文献調査及び実態調査を行う。また、EU-OSHAのレポート(2022)も指摘するように、今後の安衛対策は、心理社会的な課題への対応等で労務管理対策と重複するため、必要に応じて、AIを用いた労務管理(AIWM)への対策に調査対象を拡大する。本研究統括者(三柴)は、本補助金制度による研究実績(H26-労働-一般-001、19-JA1-001)を有し、従来の安衛法政策の来し方を、その趣旨や運用を含め、約1,600頁にわたる体系書にまとめ、現状に未対応な部分について法改正提案を行った経験を持つ。
研究方法
令和7年度は文献調査及び実態調査を実施した。研究班員の基礎知識の統一化のため、先ず、三柴が「安衛法の来し方」を90分程の動画にし、全班員に共有した。その上で、新技術が産業と安全衛生に及ぼすメリットとデメリット、前者を最大化し後者を最小化するための要件について調査した。技術的側面については、産業技術及び安全工学の専門家が文献調査及び実践省察の文章化を行い、法政策側面については、国別(英米独仏)に法学者が文献調査した。また、研究班会議を6回開催し、進捗共有及び調査方針の検討を行った。
実態調査では、国内の企業関係者向けに、インタビューによる質的調査及びWEB調査会社を活用した量的調査を実施した。また、諸外国の政策担当者らと国際会議を行い、そのレポートを英文誌(JOWHSR)で公表した。その案内はEU-OSHAのホームページに掲載された。実態調査の結果は、その概要を前述のカンファで報告すると共に、統計の専門家による詳細な分析に付した。さらに令和8年5月現在、初年度の調査研究成果を踏まえて「職場のAI利用に関する安全衛生ガイドライン(仮称)」の素案を完成しており、今後本研究班員及び行政官が参加する検討委員会で審議を予定している。
実態調査では、国内の企業関係者向けに、インタビューによる質的調査及びWEB調査会社を活用した量的調査を実施した。また、諸外国の政策担当者らと国際会議を行い、そのレポートを英文誌(JOWHSR)で公表した。その案内はEU-OSHAのホームページに掲載された。実態調査の結果は、その概要を前述のカンファで報告すると共に、統計の専門家による詳細な分析に付した。さらに令和8年5月現在、初年度の調査研究成果を踏まえて「職場のAI利用に関する安全衛生ガイドライン(仮称)」の素案を完成しており、今後本研究班員及び行政官が参加する検討委員会で審議を予定している。
結果と考察
AIは、危険作業の代替、災害データ解析、危険接近検知、設備異常予測、作業負荷や健康状態の把握等を通じ、労働災害の予防及び安全衛生水準の向上に寄与し得ることが確認された。特に、予知保全、自律走行機器の安全制御、危険接近警告、ウェアラブル機器による疲労・熱ストレス監視等で有効性が認められた。一方、ブラックボックス性、自動化バイアス、モデルドリフト、アラート疲労、生成AIの誤情報、技能劣化、サイバー攻撃等、従来の安衛法制等では十分に想定されていない新たなリスクも明らかとなった。 特にAIが機械制御に用いられる場合、誤作動が重大事故につながる恐れがあるため、高度な安全設計と運用管理が必要である。また、安全工学及び英国HSE等の既存知見の分析により、フェイルセーフ、冗長保護、人による最終確認、運用条件の限定、ログ保存によるトレーサビリティ確保、変更管理、継続的性能監視等を組み合わせた多層的安全対策の重要性が示された。さらに、ISO 12100、IEC61508、ISO/IEC TR 5469、ISO/IEC 42001等の国際規格は、AI活用のリスク管理や責任配分の基盤となり得ることが確認された。また、AI時代の安衛規制ではアルゴリズム管理による過密労働、監視強化、心理的負荷及び差別的取扱い等への対応が課題となり、AIリテラシー教育及び異議申立て制度整備等の必要性が示された。
結論
AIは、適切な設計及び運用管理の下では職場の安全衛生水準向上に寄与する一方、新たなリスク及び責任問題を伴うことが明らかとなった。特に、AIが機械制御や労務管理に関与する場合には、誤作動や不適切なアルゴリズム運用が重大災害や健康障害につながる可能性があり、多層的安全対策及び継続的監視体制の整備が不可欠である。また、AI導入後も事業者責任を基本としつつ、開発者、データ提供者等を含むサプライチェーン全体で責任を整理する制度設計が必要である。さらに、AIによる知的集約型労働がプラットフォーム就業や非雇用就業者を拡大する可能性を踏まえ、従来の雇用関係を前提としない新たな安全衛生法政策及び保護制度の整備が求められる。次年度、先ずは、初年度の研究成果を踏まえた「職場のAI利用に関する安全衛生ガイドライン(仮称)」の公表を図る。併せて、従来の事業者中心の責任体系をどのように修正すべきかを焦点に現行法の見直しを検討する。その際、心理社会的な課題としてAIWMへの対策も視野に入れる。
公開日・更新日
公開日
2026-10-23
更新日
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