諸外国の産業保健制度の多角的分析と多様化する労働環境への適応に資する研究

文献情報

文献番号
202522012A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国の産業保健制度の多角的分析と多様化する労働環境への適応に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
25JA1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
深井 航太(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 三柴 丈典(近畿大学 法学部法律学科)
  • 井村 真己(追手門学院大学 法学部法律学科)
  • 佐々木 達也(名古屋学院大学 法学部)
  • 小澤 真(大阪公立大学 国際基幹教育機構)
  • 立道 昌幸(東海大学 医学部)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所産業保健経営学研究室)
  • 江口 尚(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 堤 明純(北里大学 医学部)
  • 安部 仁美(公立大学法人 山梨県立大学 看護学部)
  • 帆苅 なおみ(東京工科大学 医療保健学部看護学科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和7(2025)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、急速に変化する労働環境において諸外国の産業保健制度がどのように対応しているかを、制度的側面および実務的側面から多角的に明らかにし、日本の産業保健政策の課題解決に資する基礎資料を提供することである。 本研究では、法学グループと産業医学グループを構成し、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツを中心に、制度的側面と実務的側面の双方を学際的アプローチによって調査する。文献調査および各国の専門家への実地調査を通じて、多様化・複雑化した健康管理手法に焦点を当て、調査結果を総合的に整理し、実務的課題への具体的な解決策を提示することを目指す。本研究は、日本の産業保健政策が現場での実効性を高める基盤を提供するものである。
研究方法
 本研究では、初年度に文献調査を通じ、法学グループが制度的側面、産業医学グループが実務的側面から、諸外国の産業保健制度を分析する。同時に、研究分担者による学会等のネットワークを深化し、実地調査に向けた各国の産業保健専門家の研究協力体制を構築する。2年目には、文献調査では明らかにできなかった課題を中心に、現地訪問やWEB会議を活用した実地調査を行う。最終的には、これらの調査結果を包括的に統合し、諸外国の産業保健制度のデータの報告を目指す。具体的には、(1)制度的側面からの文献調査、(2)実務的側面からの文献調査、(3)実地調査に向けた現地専門家ネットワークの構築、までを初年に行った。次年度は、(4)実地調査の実施、(5)成果の統合を予定している。
結果と考察
 法学グループは諸外国の産業保健制度を5つの論点軸で横断的に整理した。法的アプローチでは、英国の非強制・自律モデル、米国のOSHA/NIOSH分業による規制・執行モデル、フランスのSPST加入とDUERP作成を義務づける法定義務モデル、国家機関と労災保険(DGUV)が二元的に担うドイツの体制と、各国で大きく異なる。専門職配置では英米は任意だが、フランスは多職種チーム加入を、ドイツは産業医と労働安全専門家の協働と最低関与時間を法定する。OHナースは英・米・フィンランド・韓国で実務の中核を担い、各国の教育・資格制度がこれを支える一方、ドイツでは補助的役割にとどまる。両立支援は各国とも法的権利保障(英Fit Note、米ADA/FMLA等)と実装モデルを整備している。中小企業・脆弱セクターはいずれの国でもアクセスが乏しいが、フィンランド・韓国・タイでは費用償還や国の指定機関による巡回など積極的関与が支援を駆動している。産業医学グループは国際的役職と国際学会を起点にIOMSCを軸とする三層の専門家ネットワーク基盤を構築し、次年度の実地調査の基盤を整備した。
 初年度調査の結果、複数の示唆が得られた。第一に、産業保健の実効性は法的強制の有無そのものより、予防が実際に機能する構造と専門職が機能する条件の確保に左右される。強制か任意かの二者択一ではなく、予防を駆動する仕組みの設計が要点となる。第二に、OHナースの専門性を中核資源として活かす方向性である。英・米・フィンランド・韓国では標準化された教育・資格制度を基盤にOHナースが実務の中核と多職種連携の調整役を担っており、日本でも実践的教育の標準化と質保証が実効性向上の鍵となりうる。第三に、中小企業・フリーランス等の脆弱セクター支援における国の関与の重要性であり、フィンランド・韓国・タイの事例は費用償還や指定機関の巡回といった積極的関与がカバレッジを高めうることを示す。第四に、両立支援は法的権利の保障と現場で運用可能な実装モデルの双方を併走させることが有効である。最後に、本調査は文献調査に基づくため、制度が現場でどの程度実効性をもって運用されているかという実態は次年度の実地調査で初めて検証できる。文献上の制度と運用実態の乖離を明らかにすることが次年度の中心的課題となる。
結論
 令和7年度は、文献調査による諸外国の産業保健制度の横断的整理と、次年度の実地調査に向けた現地専門家ネットワークの構築を達成した。各国の制度は、法的アプローチ、専門職の配置と構成、OHナースの役割、両立支援の制度設計、脆弱セクターへの支援において多様であり、それぞれに日本への示唆を含む。次年度は、本成果を基盤として現地専門家への実地調査を行い、制度と運用実態の乖離を検証するとともに、日本の産業保健政策に資する基礎資料および諸外国の産業保健制度のデータの報告を目指す。

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-10-23
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-

収支報告書

文献番号
202522012Z