文献情報
文献番号
202522004A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における女性の健康保持増進のための効果的な産業保健活動の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23JA1005
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
- 小田上 公法(産業医科大学 産業生態科学研究所 産業保健経営学)
- 金城 泰幸(産業医科大学 医学部産科婦人科学)
- 大河原 眞(産業医科大学 医学部 公衆衛生学教室)
- 原田 有理沙(産業医科大学 産業生態科学研究所 災害産業保健センター)
- 古屋 佑子(東海大学医学部 基盤診療学系衛生学公衆衛生学)
- 大久保 直紀( 産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,324,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では女性労働者が労働人口の約46%を占めるに至り、月経困難症・過多月経・月経前症候群(PMS/PMDD)・更年期障害といった女性特有の健康課題と仕事との両立支援が喫緊の社会課題となっている。女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円と試算される。本研究は3年計画(令和5〜7年度)で、就労期女性の健康課題に対する産業保健活動の在り方を科学的に明らかにし、事業場における実践的対応策を体系化するとともに、その成果を行政施策・現場実装にまで結びつけることを目的とした。
研究方法
5つの主研究を相互に連動させて実施した。文献レビュー(PubMed検索1,128件から49件を選抜したスコーピングレビュー)、事業場の人事・産業保健担当者を対象とした半構造化ヒアリング、英国規格BS 30416を参考とした質問紙による14府県203事業所の事業場調査(令和6年12月〜令和7年3月)を行った。あわせて女性労働者を対象とした大規模疫学調査(最大n=24,441)、健康経営優良法人を中心とした大企業労働者調査(n=24,237、女性4,284名のPOS分析)を実施し、産婦人科医による医学的整理を経て教育ツール・実装ツールを開発した。研究代表者は厚生労働省の健診検討会に参集者として関与した。
結果と考察
科学的成果として、女性労働者19,451名の47.1%に過多月経(SAMANTA3点以上)を認め、症状重症度とプレゼンティーズムの間に明確な量反応関係を確認した。有職女性24,441名を対象とした健診時追加質問の妥当性検証では、過多月経で特異度0.93、月経随伴症状で感度0.84等の良好な精度を得た。POS分析では相談窓口設置等の施策の認知が知覚された組織的支援と有意な正の関係を示し、これらの知見は複数の英文原著論文として国際誌に発表した。行政的成果として、研究代表者が「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の女性特有の健康課題が議論された4回に参集者として関与し、研究班の科学的知見を必要な情報として提供・助言した。これにより検討会中間とりまとめ(令和6年11月)及び労働政策審議会建議(令和7年1月)の内容形成に直接貢献した。さらに政策実装研究の枠組みに従い「女性特有の健康課題に関する問診に係る健診機関実施マニュアル〜健診機関向け〜」(全25頁)及び「同〜事業者向け〜」(全21頁)の原案を作成し、両マニュアルは令和8年1月19日付で厚生労働省より公表された。あわせて5領域41項目のアクションチェックリスト、Eラーニング動画10本、女性健康アドボケイト養成プログラムを整備し、産業医研修を3会場で実施して181名から高い評価を得た。健診を起点とする「健診機関‐労働者‐専門医‐事業者」の四者連携モデルは、業務起因性が必ずしも明確でない女性特有の健康課題を労働安全衛生のスキームで取り扱う国際的にも先進的な政策実装モデルである。
結論
本研究は、エビデンス創出から実装ツール開発、行政施策への反映、普及啓発までを一つの研究班で完結させ、当初想定を超える成果を達成した。特に健診検討会への科学的情報の提供と、事業者向け・健診機関向け両マニュアルの作成は、国の政策決定に大きく貢献した。今後は令和8年4月施行の改訂事業主行動計画策定指針及び「えるぼしプラス」認定制度の運用支援とともに、開発したツール群の全国展開と効果検証を進め、女性労働者の健康保持増進と就業継続支援に資する産業保健活動の社会実装を加速する。
公開日・更新日
公開日
2026-10-23
更新日
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