ゲノム解析による原発性アルドステロン症の原因診断学の再構築

文献情報

文献番号
201024064A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム解析による原発性アルドステロン症の原因診断学の再構築
課題番号
H22-難治・一般-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 均(京都大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 笹野 公伸(東北大学 医学系研究科)
  • 河野 雄平(国立循環器病研究センター)
  • 神出 計(大阪大学 医学系研究科)
  • 江本 憲昭(神戸薬科大学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原発性アルドステロン症の有力な原因遺伝子として最近発見されたHSD3B1に関して、本研究ではHSD3B1遺伝子の全エクソンをシークエンスし多型探索を実施する。また、原発性アルドステロン症におけるHSD3B1の役割を解明するため、非常に構造が似ているHSD3B2との違いを識別することのできるサブタイプ特異的モノクローナル抗体を採取し、特異抗体を用いた病理診断システムの構築を目指す。
研究方法
原発性アルドステロン症の患者16名に加え、本態性高血圧患者であり、かつ、血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比(ARR)>50である20名の合計36名(男性14名、女性22名)を解析対象とし、ヒトHSD3B1遺伝子の全エクソンのシークエンスを実施した。ゲノムシークエンスに必要なプライマーの配列等は独自に設計した。HSD3B1高親和性抗体作成に関しては、GANPマウスを利用した高親和性抗体作製法を用いてHSD3B1に特異的なモノクローナル抗体の作成を行った。
結果と考察
HSD3B1第4エクソンに位置する3つの変異を同定した。2つはTTT(Phe286)→CTT(Leu)、AAC(Asn367)→ACC(Thr)のミスセンス変異、残りの1つはTTG(Leu338)→CTG(Leu)のサイレント変異であり、マイナーアレル頻度はそれぞれ0.014、0.042、0.306であった。NCBIデータベースと照合した結果、それぞれrs6205、rs1047303、rs6203に該当することが判明した。モノクローナル抗体に関しては、抗原としてヒトHSD3B1-GST融合蛋白質を調製し、GANPマウスに免疫を行い、モノクローン抗体4B15を得た。本抗体を用いて詳細なウェスタンブロット解析を行った結果、本抗体は今回我々が作出したモノクローナル抗体はHSD3B2ではなくHSD3B1を特異的に認識することが分かった。
結論
今回のゲノム解析で同定したHSD3B1遺伝子の3つの変異は、新規遺伝子変異ではなく、HSD3B1の活性を亢進すると思われる変異も見いだせなかった。現在はまだ検体数が少ないので、今後増やして検討する。特異抗体に関しては、HSD3B1に特異的なモノクローナル抗体の作出に成功し、これによる原発性アルドステロン症の新たな病理診断の可能性が広がった。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024064Z