血液凝固異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024002A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学 輸血部)
  • 藤村 欣吾(広島大学 薬学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学 医学部)
  • 倉田 義之(四天王寺国際仏教大学 人間福祉学科)
  • 藤村 吉博(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 和田 英夫(三重大学 医学部)
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究所センター 分子病態部)
  • 小嶋 哲人(名古屋大学 医学部)
  • 坂田 洋一(自治医科大学 分子病態研究部)
  • 宮田 敏行(国立循環器病研究センター 分子病態部)
  • 川﨑 富夫(大阪大学 医学部)
  • 横山 健次(慶應義塾大学 医学部)
  • 小林 隆夫(県西部浜松医療センター 産婦人科)
  • 榛沢 和彦(新潟大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
59,413,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本調査研究班は特定疾患治療研究対象事業である3つの疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微小血管障害症(TMA)、特発性血栓症に加え、深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE)について、それぞれ4つのサブグループに分かれ課題に取り組むとともにグループ間の相互議論を活発に行うことによって(1)分子病態解析に基づいた診断基準・治療指針の確立と普及、そしてその効果の検証、(2)疫学的解析による我が国での発症頻度、予後などの正確な把握を目的としている.
研究方法
<ITP>疫学研究(ITP 臨床個人調査票)、診断基準の標準化研究(血小板抗体産生B細胞定量、網状血小板比率)、ITPの治療ガイドラインについて検討を行った。<TMA> TMA解析センターとしてADAMTS13の解析依頼、TMA患者登録を行った。肝移植患者のVWFpp測定を行った。<特発性血栓症> 静脈血栓塞栓症(VTE)に対するワルファリン療法、先天性血栓性傾向(AT、PC、PS欠損症)日本人患者の実態把握のためのアンケート調査を行った。<DVT/PE> 活性化プロテインC感受性比(APC-sr)とVTEリスクの検討を行った。全国の医療施設を対象に院外発症VTEの危険因子、ネフローゼ症候群症例におけるDVT調査を行った。地震後のVTEに関する研究を実施した.
結果と考察
<ITP>実態調査の結果、新規症例、更新症例とも中高年の男女が最も多かった。ピロリ菌除菌療法の定着が伺えた。治療ガイドライン改訂が開始された。また妊娠合併ITP診療の参照ガイドの作成を開始した。<TMA>集積例のなかでインフルエンザに合併した2例の症例解析から積極的な血漿交換の有用性が示唆された。肝移植後のTMAにVWFやADAMTS13の関与が示唆された。<特発性血栓症>VTEに対するワルファリン療法におけるVTE再発や出血例の情報が得られた。先天性血栓性傾向(AT、PC、PS欠損症)日本人患者の実態調査の結果が得られた。凝固第V因子の低下が日本人においてもVTEリスクであることが示唆された。<DVT/PE>APC-sr測定値とVTEの関連を認めた。ネフローゼ症候群症例におけるDVT発生頻度は約20%であった。地震(新潟県中越、中越沖、岩手・宮城内陸)被災地でのDVT頻度は対照地より高かった。東日本大地震においても避難所でDVT頻度が高く認められた.
結論
ITP、TMA、特発性血栓症、DVT/PEの研究グループにおいて、診療ガイドラインの作成、調査票による実態調査や基礎研究を行い、それらの結果に基づき診断・治療法の改善を行った。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201024002B
報告書区分
総合
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
村田 満(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 冨山 佳昭(大阪大学 輸血部)
  • 藤村 欣吾(広島国際大学 薬学部)
  • 桑名 正隆(慶應義塾大学 医学部)
  • 倉田 義之(四天王寺大学 人間福祉学科)
  • 藤村 吉博(奈良県立医科大学 輸血部)
  • 和田 英夫(三重大学 医学部)
  • 小亀 浩市(国立循環器病研究所センター 分子病態部)
  • 小嶋 哲人(名古屋大学 医学部)
  • 坂田 洋一(自治医科大学 分子病態研究部)
  • 宮田 敏行(国立循環器病研究所センター 分子病態部)
  • 川崎 富夫(大阪大学 医学部)
  • 横山 健次(慶應義塾大学 医学部)
  • 小林 隆夫(県西部浜松医療センター 産婦人科)
  • 榛澤 和彦(新潟大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本調査研究班は特定疾患治療研究対象事業である3つの疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微小血管障害症(TMA)、特発性血栓症に加え、深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE)について、それぞれ4つのサブグループに分かれ課題に取り組むとともにグループ間の相互議論を活発に行うことによって (1)分子病態解析に基づいた診断基準・治療指針の確立と普及、そしてその効果の検証、(2)疫学的解析による我が国での発症頻度、予後などの正確な把握を目的とした。
研究方法
<ITP>ITP 臨床個人調査票を用いた疫学調査、検査としての血小板抗体産生B細胞定量、網状血小板比率の有用性の検討、治療ガイドラインについて検討を行った。<TMA>TMA解析センターとしてADAMTS13の解析、TMA患者登録を行った。病態解析に対する基礎・臨床研究を行った。<特発性血栓症> 静脈血栓塞栓症(VTE)に対するワルファリン療法、先天性血栓性傾向(AT、PC、PS欠損症)日本人患者の実態調査を行うためのアンケート調査を行った。<DVT/PE>活性化プロテインC感受性比(APC-sr)とVTEリスクの検討を行った。全国の医療施設を対象に院外発症VTEの危険因子、ネフローゼ症候群症例におけるDVT調査を行った。地震後のVTEに関する研究を実施した。
結果と考察
<ITP>実態調査の結果、新規・更新症例とも中高年の男女が最も多かった。治療はピロリ菌除菌療法の定着が伺えた。ITP診療ガイドラインと診断基準作成を行った。<TMA>集積は1028例となり、多数例のデータベースとなった。USS遺伝子解析、ADAMTS13活性測定法の開発、ADAMTS13の立体構造解析を行った。<特発性血栓症>VTEに対するワルファリン療法におけるVTE再発や出血例の情報が得られた。先天性血栓性傾向日本人患者の実態調査の結果が得られた。<DVT/PE> APC-sr測定値とVTEの関連を認めた。うっ血性心不全患者例でDVT発生を認めた。ネフローゼ症候群症例におけるDVT発生頻度は約20%であった。地震(新潟県中越、中越沖、岩手・宮城内陸)被災地でのDVT頻度は対照地より高かった。東日本大地震においても避難所でDVT頻度が高く認められた.
結論
4つのサブグループにおいて、分子病態の詳細な解析と臨床的有用性の高いデータベース化システムの構築、調査票による疾患の全国実態調査の解析を行い、それら結果に基づいた診断基準の作成や治療ガイドラインの作成等、診断・治療法の確立を目指す研究を遂行した。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微小血管障害症(TMA)、特発性血栓症、深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE)について、それぞれ専門知識を有する分担研究者が4つのサブグループを構成し、分子病態の詳細な解析を行うことが出来た。それら結果に基づき、新たな診断技術や治療標的の設定を行うことが出来た。その結果、本研究は分子病態解析に基づいた診断基準・治療指針の確立と普及、そしてその効果の検証につながる研究となった。
臨床的観点からの成果
上記の専門的・学術的観点の成果である分子病態解析の知見に加え、疾患に対する臨床個人調査票の解析、解析センターにおける患者データベースの構築、薬物療法の全国実態調査、血栓症の発症リスクに関する先天的あるいは後天的要因の全国調査による疫学的解析の知見に基づいた診断基準の作成、診療ガイドラインの作成等、臨床的有用性の高い取り組みが行われた。震災時の避難生活におけるDVTの詳細な実態調査は、震災時のDVTに対するマネージメント向上につながっている。
ガイドライン等の開発
ITP診療ガイドライン、ITP診断基準作成を行った。ペパリン在宅自己注射療法の指針 (改正案)を作成した。
その他行政的観点からの成果
特定疾患治療研究対象事業である3つの疾患、ITP、TMA、特発性血栓症に加え、DVT/PEについて、疾患に対する臨床個人調査票の解析、患者データベースの構築、薬物療法の全国実態調査、血栓症の発症リスクに関する全国調査を行い、我が国におけるそれぞれの疾患に関する詳細な情報を得ることが出来た。実態調査は、ITPに関して、2008年、2009年、2010年、TTPに関して、2008年、特発性血栓症に関して3件の調査が2009年に行われた。
その他のインパクト
震災時 (新潟県中越、中越沖、岩手・宮城内陸) の避難生活におけるDVTの詳細な実態調査、東日本大震災の避難所におけるDVT予防に対する取り組みはマスコミに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
125件
その他論文(和文)
113件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
283件
学会発表(国際学会等)
45件
その他成果(特許の出願)
1件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
特願2010-289686/出願日、平成22年12月27日/発明の名称、凝固因子として作用する異常トロンビンのためのトロンビン不活化動態測定方法及び試験方法、並びにポリヌクレオチド(小嶋哲人)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Asahi A, Nishimoto T, Okazaki Y, et al.
Helicobacter pylori eradication shifts monocytes’Fcγ receptor balance toward inhibitory FcγRIIB in immune thrombocytopenic purpura
J Clin Invest , 118 (8) , 2939-2949  (2008)
原著論文2
Kuwana M, Okazaki Y, Ikeda Y
Splenic macrophages maintain the anti-platelet autoimmune response via uptake of opsonized platelets in patients with immune thrombocytopenic purpura
J Thromb Haemost , 7 (2) , 322-329  (2009)
原著論文3
Kobayashi T, Wada H, Nishioka N, et al.
ADAMTS13 Related Markers and Von Willebrand Factor in Plasma from Patients with Thrombotic Microangipathy (TMA)
Thromb Res , 121 (6) , 849-854  (2008)
原著論文4
Kaneko T, Wada H, Onishi K, et al.
Cut off values of D-dimer and FDP in plasma for the diagnosis of thrombosis
Vascular Disease Prevention , 5 (1) , 81-88  (2008)
原著論文5
Nomura H, Wada H, Mizuno T, et al.
Negative predictive value of D-dimer for diagnosis of venous thromboembolism
Int J Hematol , 87 (3) , 250-255  (2008)
原著論文6
Uemura M, Fujimura Y, Matsumoto M, et al.
Comprehensive analysis of ADAMTS13 in patients with liver cirrhosis.
Thromb Haemost , 99 , 1019-1029  (2008)
原著論文7
Uemura M, Fujimura Y, Matsuyama T, et al.
Potential roles of ADAMTS13 in the progression of alcoholic hepatitis.
Current Drug Abuse Reviews , 1 , 188-196  (2008)
原著論文8
Horii M, Uemura S, Uemura M, et al.
Acute Myocardial Infarction as a Systemic Prothrombotic Condition Evidenced by Increased von Willebrand Factor Protein Over ADAMTS13 Activity in Coronary and Systemic Circulation.
Heart and Vessels , 23 , 301-307  (2008)
原著論文9
Kobayashi T, Wada H, Usui M , et al.
Decreased ADAMTS13 levels in patients with living donor liver transplantation.
Thromb Res , 124 , 541-545  (2009)
原著論文10
Fujimura Y,Matsumoto M, Kokame K, et al.
Pregnancy-induced thrombocytopenia and TTP, and the risk of fetal death, in Upshaw-Schulman syndrome: a series of 15 pregnancies in 9 genotyped patients.
Br J Haematol , 144 , 742-754  (2009)
原著論文11
Ito N, Wada H, Matsumoto M, et al.
National questionnaire survey of TMA.
Int J Hematol , 90 , 328-335  (2009)
原著論文12
Akiyama M, Takeda S, Kokame K, et al.
Crystal structures of the non-catalytic domains of ADAMTS13 reveal multiple discontinuous exosites for von willebrand factor.
Proc Natl Acad Sci USA , 106 (46) , 19274-19279  (2009)
原著論文13
Sakuma M, Nakamura M, Yamada N, et al.
Venous Thromboembolism: Deep Vein Thrombosis with Pulmonary Embolism, Deep Vein Thrombosis Alone, and Pulmonary Embolism Alone
Circ J , 73 , 305-309  (2009)
原著論文14
Ito-Habe N, Wada H, Matsumoto M,et al.
A second national questionnaire survey of TMA.
Int J Hematol , 92 , 68-75  (2010)
原著論文15
Mimuro J, Mizuta K, Kawano Y, et al.
Impact of acute cellular rejection on coagulation and fibrinolysis biomarkers within the immediate post-operative reriod in pediatric liver transplantation.
Pediatr Transplant , 14 (3) , 369-376  (2010)
原著論文16
Suehisa E, Kawasaki T, Toku M, et al.
Low level of factor V is associated with development of deep-vein thrombosis in Japanese patients.
Thromb Res , 125 , 128-133  (2010)
原著論文17
Madoiwa S,Tanaka H, Nagahama Y, et al.
Degradation of cross-linked fibrin by leukocyte elastase as alternative pathway for plasmin-mediated fibrinolysis in sepsis-induced disseminated intravascular coagulation.
Thromb Res , 127 (4) , 349-355  (2011)
原著論文18
Shida S, Nishio K, Sugimoto M, et al.
Functional imaging of shear-dependent activity of ADAMTS13 in regulating mural thrombis growth under whole blood flow conditions.
Blood , 111 , 1295-1298  (2011)
原著論文19
藤村欣吾
IV.後天性疾患の診断と治療 1.特発性血小板減少性紫斑病
日本内科学会雑誌 , 98 , 1619-1626  (2009)
原著論文20
宮田敏之、岡田浩美、川崎富夫 他
日本人の血栓性素因
臨床血液 , 50 (5) , 381-388  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024002Z