特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024001A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤司 浩一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 石川 隆之(京都大学 大学院医学研究科)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 金倉 譲(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 黒川 峰夫(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 澤田 賢一(秋田大学 医学部)
  • 高折 晃史(京都大学 大学院医学研究科)
  • 中尾 眞二(金沢大学 大学院医学系研究科)
  • 中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 宮崎 泰司(長崎大学 医学部)
  • 村手 隆(名古屋大学 医学部)
  • 杉田 稔(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
54,707,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血(骨髄異形成症候群MDS)、骨髄線維症を対象疾患とした全国規模の調査研究を、疫学・病因・病態・診断・予後などの幅広い領域にわたって実施した。
研究方法
研究代表者1名、研究分担者11名、研究協力者20名の計32名より構成され、それぞれの疾患領域で研究を立案実施した。
結果と考察
1.再生不良性貧血:(1)臨床調査個人票をもとに治療状況を臨床疫学的に解析した。(2)共通免疫抑制療法プロトコールによる臨床試験の解析を行い、PNH血球およびモエシン抗体の意義について検討した。(3)慢性赤芽球癆では全国アンケート調査をもとに基礎疾患別の病態を解析した。また、ABO major不適合ドナーからの同種造血幹細胞移植後に発症した赤芽球癆について解析した。(4)先天性骨髄不全症の全国調査を行い、発生状況などを明らかにした。
2.溶血性貧血: 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)では、クームス陰性AIHAと陽性AIHAの病態が異なる可能性を示した。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)では、国際PNH専門家会議との連携、日本PNH専門家会議の構築の推進、新規治療薬(eculizumab)のオプソニン化への影響に関する研究を行った。
3.不応性貧血: (1)前方視的症例登録、セントラルレビュー、追跡調査研究を継続した。(2)国際MDS予後因子(IPSS)の国際的改訂事業に貢献した。(3)成人MDSの造血幹細胞移植適応に関する移植関係医師へのアンケート調査の解析を行った。(4)MDS関連転写因子AML1とNF-kBの関係を調べた。
4.骨髄線維症: 全国調査の結果、末梢血または骨髄の芽球が10%以上、血小板5万/μL未満、17番染色体異常の出現のいずれかが経過観察中にみられると、それ以降の生存期間中央値は0.8年であった。
5.その他:鉄過剰症については、体内の鉄動態を検討し、鉄キレート剤の効果を検証する臨床研究を進めた。「診療の参照ガイド」の全面改定を行った。また、市民公開講座を開催した。
結論
特発性造血障害に関する調査研究を広範囲に計画・実施し、大きな成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024001B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H20-難治・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 敬也(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤司 浩一(九州大学大学院医学研究院)
  • 岡本 真一郎(慶應義塾大学医学部)
  • 金倉 譲(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 黒川 峰夫(東京大学大学院医学系研究科)
  • 澤田 賢一(秋田大学医学部)
  • 高折 晃史(京都大学大学院医学研究科)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所)
  • 宮崎 泰司(長崎大学医学部)
  • 村手 隆(名古屋大学医学部)
  • 杉田 稔(東邦大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血(骨髄異形成症候群MDS)、骨髄線維症を対象疾患とした全国規模の調査研究を、疫学・病因・病態・診断・予後などの幅広い領域にわたって実施した。
研究方法
研究代表者1名、研究分担者11名、研究協力者20名の計32名より構成され、それぞれの疾患領域で研究を立案実施した。
結果と考察
1.再生不良性貧血:(1)臨床調査個人票をもとに治療状況を臨床疫学的に解析すると共に、記載内容を検討し、調査票の改訂案を作成した。(2)共通免疫抑制療法プロトコールによる臨床試験の解析を行い、免疫病態マーカーの意義について検討した。(3)慢性赤芽球癆では全国アンケート調査をもとに基礎疾患別の病態と治療実態を解析し、標準的治療法を提唱した。(4)先天性骨髄不全症の全国調査を行い、実態を明らかにした。
2.溶血性貧血: 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)では、赤血球結合IgGの年齢別基準値の再評価を行った。また、クームス陰性AIHAと陽性AIHAの病態を解析した。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)では、国際PNH専門家会議との連携、日本PNH専門家会議の構築の推進、新規治療薬(eculizumab)の臨床試験の調査を行った。
3.不応性貧血: (1)前方視的症例登録、セントラルレビュー、追跡調査研究を行った。(2)骨髄検査の細胞比率算定方法についてアンケート調査を行い、基準案を提唱した。(3)病型について日独比較を行った。(4)国際MDS予後因子(IPSS)の国際的改訂事業に貢献した。(5)成人MDSの造血幹細胞移植適応に関する移植関係医師へのアンケート調査の解析を行った。(6)MDS関連転写因子AML1とNF-kBの関係を調べた。
4.骨髄線維症: 1999年から2010年の11年間に登録された511例の臨床情報を解析した。5年生存率が38%であることや、幾つかの予後不良因子を明らかにした。
5.その他:鉄過剰症については、体内の鉄動態を検討し、鉄キレート剤の効果を検証する臨床研究を進めた。「診療の参照ガイド」の全面改定を行った。また、市民公開講座を開催した。
結論
特発性造血障害に関する調査研究を広範囲に計画・実施し、大きな成果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では、わが国を代表する専門医の力を結集して3年間にわたり再生不良性貧血、溶血性貧血、不溶性貧血、骨髄線維症を対象疾患とした全国規模の調査研究および病態研究を行った。研究は各疾患の疫学、診断法、治療法の提示など臨床的研究から病態の分子生物学的解析をはじめとした基礎的研究に至るまで幅広く行われ、その成果は国際学術誌に投稿・掲載され、高い評価を得ている。
臨床的観点からの成果
再生不良性貧血、溶血性貧血、不応性貧血、骨髄線維症を対象に、疫学、診断法、治療法の調査を行い、わが国におけるこれらの疾患の現状を明らかにし、新たな診断法、治療法について提言を行った。また、輸血後鉄過剰症についてもわが国初となる実態調査を行い、その実態を明らかにすると同時に鉄キレート療法についての提言を行った。これらの結果は「診療の参照ガイド」の全面改定作業に生かされ、全国の血液内科専門医にフィードバックされた。
ガイドライン等の開発
最終年度である平成22年度末に、再生不良性貧血、赤芽球癆、不応性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、自己免疫性溶血性貧血、骨髄線維症、先天性骨髄不全症候群を対象に「診療の参照ガイド」の全面改訂を行い、その内容を冊子として発行して本研究班の成果が血液内科専門医に広く活用されるように配慮した。今回の改定では新たに先天性骨髄不全症候群の項を設け、稀少疾患であることからこれまで十分な参考資料の無かった小児科領域にも配慮した。
その他行政的観点からの成果
特定疾患治療研究事業における臨床調査個人票を解析し、その行政的効果、医学・疫学的意義をさらに高めるため、記載内容の見直しを行い、申請方法の改善などを含めた臨床個人調査票の改訂案を作成した。この改訂案は従来の個人票の問題点を十分に検討することで作成されており、今後特定疾患治療研究事業を継続していく上で極めて重要な意義を持つと考えられる。
その他のインパクト
当班が研究対象とする特発性造血障害疾患について、これまでの研究成果を含めて広く一般の国民に知っていただくため、平成22年度に「難治性貧血の診断と治療に関する最近の進歩」と題した市民公開講座を東京で開催し、多くの方々に御参加いただいた。また、造血障害疾患についての国際シンポジウムを開催し、海外から研究の第一人者を招聘して治療法などに関する最新の知見について講演していただくと共に、活発な討議を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
106件
その他論文(和文)
52件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
95件
学会発表(国際学会等)
38件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fujishima N, Sawada K, Ozawa K, et al.
Long-term responses and outcomes following immunosuppressive therapy in large granular lymphocyte leukemia-associated pure red cell aplasia: a Nationwide Cohort Study in Japan for the PRCA Collaborative Study Group.
Haematologica. , 93 (10) , 1555-1559  (2008)
原著論文2
Maatsuda A, Jinnai I, Tomonaga M, et al.
Proposals for a grading system for diagnostic accuracy of myelodysplastic syndromes.
Clinical Leukemia. , 2 (2) , 102-106  (2008)
原著論文3
Tasaka T, Tohyama K, Ozawa K, et al.
Myelodysplastic syndrome with chromosome 5 abnormalities: a nationwide survey in Japan.
Leukemia. , 22 (10) , 1874-1881  (2008)
原著論文4
Goyama S, Yamamoto G, Kurokawa M, et al.
Evi-1 is a critical regulator for hematopoietic stem cells and transformed leukemic cells.
Cell Stem Cell. , 3 (2) , 207-220  (2008)
原著論文5
Mochizuki K, Sugimori C, Nakao S, et al.
Expansion of donor-derived hematopoietic stem cells with PIGA mutation associated with late graft failure after allogeneic stem cell transplantation.
Blood. , 112 (5) , 2160-2162  (2008)
原著論文6
Hidaka T, Ozawa K, Shimoda K, et al.
The impact of cytogenetic abnormalities on the prognosis of primary myelofibrosis: a prospective survey of 202 cases in Japan.
Eur J Haematol. , 83 (4) , 328-333  (2009)
原著論文7
Hirokawa M, Sawada K, Ozawa K, et al.
Acquired pure red cell aplasia associated with malignant lymphomas: a nationwide cohort study in Japan for the PRCA Collaborative Study Group.
Am J Hematol. , 84 (3) , 144-148  (2009)
原著論文8
Kamesaki T, Ozawa K, Kajii E, et al.
Cut-off value of red-blood-cell-bound IgG for the diagnosis of Coombs-negative autoimmune hemolytic anemia.
Am J Hematol. , 84 (2) , 98-101  (2009)
原著論文9
Shimabe M, Goyama S, Kurokawa M, et al.
Pbx1 is a downstream target of Evi-1 in hematopoietic stem/progenitors and leukemic cells.
Oncogene. , 28 (49) , 4364-4374  (2009)
原著論文10
Takamatsu H, Espinoza JL, Nakao S, et al.
Anti-moesin antibodies in the serum of patients with aplastic anemia stimulate peripheral blood mononuclear cells to secrete TNF-alpha and IFN-gamma.
J Immunol. , 182 (1) , 703-710  (2009)
原著論文11
Espinoza JL, Takamatsu H, Nakao S, et al.
Anti-moesin antibodies derived from patients with aplastic anemia stimulate monocytic cells to secrete TNF-α through an ERK1/2-dependent pathway
Int Immunol. , 21 (8) , 913-923  (2009)
原著論文12
Sanada M, Suzuki T, Sih LY, et al.
Gain-of-function of mutated C-CBL tumour suppressor in myeloid neoplasms.
Nature. , 460 (7257) , 904-908  (2009)
原著論文13
Furuhata A, Murakami M, Murate T, et al.
GATA-1 and GATA-2 binding to 3' enhancer of WT1 gene is essential for its transcription in acute leukemia and solid tumor cell lines
Leukemia. , 23 (7) , 1270-1277  (2009)
原著論文14
Qi Z, Takamatsu H, Nakao S, et al.
Autoantibodies specific to hnRNP K: a new diagnostic marker for immune pathophysiology in aplastic anemia.
Ann Hematol. , 89 (12) , 1255-1263  (2010)
原著論文15
Matsuoka A, Tochigi A, Tohyama K, et al.
Lenalidomide induces cell death in an MDS-derived cell line with deletion of chromosome 5q by inhibition of cytokinesis.
Leukemia. , 24 (4) , 748-755  (2010)
原著論文16
Matsuda A, Germing U, Tomonaga M, et al.
Differences in the distribution of subtypes according to the WHO classification 2008 between Japanese and German patients with refractory anemia according to the FAB classification in myelodysplastic syndromes.
Leuk Res. , 34 (8) , 974-980  (2010)
原著論文17
Goyama S, Nitta E, Kurokawa M, et al.
EVI-1 interacts with histone methyltransferases SUV39H1 and G9a for transcriptional repression and bone marrow immortalization
Leukemia. , 24 (1) , 81-88  (2010)
原著論文18
Arai S, Yoshimi A, Kurokawa M, et al.
Evi-1 is a transcriptional target of MLL oncoproteins in hematopoietic stem cells.
Blood.(in press)  (2011)
原著論文19
Yoshimi A, Goyama S, Kurokawa M, et al.
Evi1 represses PTEN expression and activates PI3K/AKT/mTOR via interactions with polycomb proteins.
Blood. , 117 (13) , 3617-3628  (2011)
原著論文20
Iwanaga M, Hsu WL, Tomonaga M, et al.
Risk of Myelodysplastic Syndromes in People Exposed to Ionizing Radiation: A Retrospective Cohort Study of Nagasaki Atomic Bomb Survivors
J Clin Oncol. , 29 (4) , 428-434  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024001Z